ストーリーアイコンSTORYストーリー

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 前編(1)

トルエノの頼みを受け、砂漠の遺跡いせきに向かうミオ達一行。

その姿は砂漠の手前に位置する山道にあった。

ナイトアイコン

「そう言えば宿屋で借りた服、ゆずって貰ったんだって?」

ミオアイコン

「うん、どうせ着る人も居ないからって・・・」

ナイトアイコン

「良かったな」

ミオアイコン

流石さすがにあの服じゃ戦えないから部屋着にさせて貰おうかな・・・」

ナイトアイコン

「ところで二つ返事で砂漠に行くこと決めて良かったのか?」

ナイトアイコン

「きなくさい場所みたいだったけど・・・」

ミオアイコン

「本当に元々行こうと思ってたからね」

ミオアイコン

「それより・・・ナイトは本当に一緒に来る気なの?」

そうたずねられたナイトは当然のように答える。

ナイトアイコン

「来る気がないならここまで来てない、そんなこと分かってるだろ?」

ミオアイコン

「確かに」

ミオアイコン

「・・・じゃあ一つだけ約束して・・・」

ミオアイコン

貴方あなたは決して死なないこと・・・」(そうでないと・・・私はあの人へのちかいを果たす事ができない・・・)

ナイトアイコン

貴方あなたはって・・・?」

そう言った時だった、カサカサとれた草むらから謎の影が飛び出してきた。

ナイトアイコン

「!?」

ナイトアイコン

「人間・・・?、山賊さんぞくか!?」

山賊アイコン

「動くな!」

そう声をあららげミオの首に背後からナイフを突き付ける少年、そんな状況にも関わらずミオは冷静にたずねている。

ミオアイコン

「人間が私に用があるの・・・?」

山賊アイコン

「金目の物を全部置いていけ!」

ナイトアイコン

「悪いが金目の物なんて持ってないし、とりあえずここは見逃してくれないかな」

ナイトアイコン

「何もせず引いてくれたら通報も何もしない」

ミオアイコン

「そもそも旅人をおそったって大金が手に入る確率は低い」

山賊アイコン

「金がないって言うならこの女を貰って行くからな!女子供だったら高く買い取るって言われてんだ!」

ミオアイコン

「え・・・売られるの?」

ナイトアイコン

「あの・・・悪いことは言わないからその考えは改めた方がいい」

山賊アイコン

「何偉そうなこと言ってんだ!こっちには人質が!」

そう怒気どきを強めた少年だがミオに手首を軽くひねられ抜け出されたことで山賊は呆気あっけに取られている。

そのわずかな間に地面に激しく叩きつけられるのだった・・・。

山賊アイコン

「!?」

ミオアイコン

「人質は自分より弱い相手じゃないと無理、これにりたら山賊さんぞくなんてやめて普通に働いた方がいい」

そう言われた少年だが投げ飛ばされた衝撃しょうげきのためか動けずにいる。

ナイトアイコン

「だからやめた方がいいって言ったのに・・・」

ミオアイコン

「・・・」

ミオアイコン

「・・・少しぐらい・・・心配してくれても・・・」

そう小声でつぶやくミオ。

ナイトアイコン

「え・・・!?」

ミオアイコン

「・・・なんでもない」

ナイトアイコン

「ミオなら山賊さんぞくに負ける訳ないかなって・・・」

ミオアイコン

「それは当然・・・」

ナイトアイコン

「だ、だろ?」

そんな会話をしている時だった・・・。

山賊アイコン

「オレは・・・海賊かいぞくだ!」

ミオ&ナイトアイコン

「・・・!???」

ミオアイコン

「ここ・・・山だけど・・・?」

ナイトアイコン

海賊かいぞく・・・?」

チェリーアイコン

「どゆこと?」

困惑こんわくしながら話を聞くことにしたミオ達・・・。

20分後・・・。

ナイトアイコン

「・・・つまり元々海賊かいぞくだったってことか」

チェリーアイコン

「海竜が暴れてて船が出せなくなって」

チェリーアイコン

「海での生活を泣く泣くあきらめたって・・・」

ミオアイコン

「と言うか・・・ぞくなのは変わらないのね・・・」

ミオアイコン

「生き方変えられないのかしら・・・」

ナイトアイコン

「でも海竜が暴れてるって何でなんだろうな」

ミオアイコン

「確か別の地域でも水にまつわる生き物が急に暴れ出したって聞いた気はするけど」(まさか大洪水の・・・?いや、そんな訳・・・)

ナイトアイコン

「もしかして世界的な話なのか?」

ミオアイコン

八岐大蛇やまたおろちも山神であり川の神だから水要素はあるけど・・・」(あれは・・・別件か・・・)

ミオアイコン

「ヒュドラも元々凶暴だったし、たまたま・・・?」

ナイトアイコン

「報告に行く時にでもトルエノにでも聞いてみたら?」

ナイトアイコン

「でっかい国だから情報ぐらい集めてるかも知れないだろ」

ミオアイコン

「そう言えば・・・、さっきの山賊さんぞく?いや海賊かいぞくはどうしたの?」

ナイトアイコン

しばり上げてヴァンにレイテルまでデリバリーして貰ってる」

ナイトアイコン

「見逃してくれなかったからキッチリ突き出しとかないとな!」

ミオアイコン

「ヴァンもいそがしいわね・・・」

ミオアイコン

「フェダリアも見てくれてたんでしょ?」

ナイトアイコン

「ヴァンが見れない時はヴィドゥルが手伝ってくれるってさ」

ミオアイコン

「ヴィドゥルすごいうれしそうにはしゃいでそう・・・」

ミオアイコン

「でもなんか・・・大鷲おおわし合成獣キメラに囲まれた絵面がちょっとこわい気が・・・」

ミオアイコン

「・・・海賊かいぞく・・・大丈夫かな・・・即死刑そくしけいにならないといいけど」

ナイトアイコン

「野放しにはできないし因果応報いんがおうほうってことで・・・」

ミオアイコン

「そうね、ここで気にしても仕方ないし今は目の前の依頼に集中しないと」

そうやって再び砂漠を目指し山道の先へ歩み始めるのだった・・・。

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 前編(2)

道を進むにつれて草木は減りゴツゴツとした岩と砂が少しずつ増えていく・・・山を下り切った頃には日も完全に登りきっていた。

足元には一面砂がき詰められ吹き付ける風すらも熱く、照りつける太陽と共に体力をうばっていく。

ミオアイコン

「・・・予想以上に、熱い・・・」

ナイトアイコン

「日陰でも熱いな・・・砂も焼けてるから地面からの熱気もすごい」

チェリーアイコン

「・・・死ぬ・・・燃えそう、げそう」

ミオアイコン

「どうしても水が足りなくなったらサボテンから水分を補給しよう・・・」

陽炎かげろうにより目に映る景色はゆらゆらとれている・・・そんなゆらめく風景の中にうっすらと荷車のような物を見つけ近寄ろうとした時だった足元から伝わる振動しんどう地響じひびきに思わず足を止める。

ナイトアイコン

「!??・・・なんだ?地震・・・?」

ミオアイコン

「いや・・・地震にしてはピンポイント過ぎるこれは別の・・・」

困惑こんわくしている一行の元へ荷車らしきものから離れた影が近づいてくる。

ミオアイコン

「?」

ナイトアイコン

「あれは・・・人じゃないか?」

け寄ってくる人影に目をらしているとその影の背後にさらに大きな何かの影が砂を巻き上げ現れる。

ミオ&ナイトアイコン

「なんか増えた・・・!?」

ミオアイコン

「って言うかこの間も似たようなシルエットを見たような・・・」

ナイトアイコン

「まぁ・・・取りえず頭は一つみたいで良かったな・・・」

ナイトアイコン

「化け物に出会うのは良くないけど・・・」

一行の目の前に姿を現したのはムカデのように多くの足を持ち、顔はどことなく竜のを思わせる巨大な生き物だった・・・。

こちらに向かってくる人影の後ろを砂を泳ぐように直進してくる謎の生き物。

ミオアイコン

百足竜むかでりゅう的な・・・あの足はいつ使うのかしら・・・」

ナイトアイコン

「・・・ってあの人こっちに来てるけどこれ完全に巻きえコースだよな」

商人アイコン

「た、助けてくれー!!」

ミオアイコン

「あの竜を止めるしかなさそうね・・・」

ミオアイコン

「ナイトはあの人がこっちに来たらどっかの影にでも隠れてて・・・」

ナイトアイコン

「え?どうする気なんだよ?・・・・ってもういないし・・・」

チェリーアイコン

「そう言う人だから・・・」

ナイトアイコン

「ってチェリー・・・また置き去りか?」

チェリーアイコン

「置き去りって言うな!」

そんな2人を置き去りにしていったミオの姿はり来る百足竜むかでりゅうを見下ろす岩陰にあった・・・。 百足竜むかでりゅうが通るタイミングで飛び降り一撃を喰らわせたミオだがやはり仕留しとめることは難しかった・・・。

ミオアイコン

「この竜・・・目が・・・?」

その間に逃げて来ていた男性を保護したナイトは小さな岩陰に身を隠す。

一撃を加えたミオが着地すると同時にすかさずその方向に大口から放たれる風が砂をまとって飛んでくる。

ナイトアイコン

「なんかあの竜・・・ものすごく空気吸い込んでないか・・・?」

大きく口を開け多くの空気を取り込んだ百足竜むかでりゅうはそれまで使っていなかった無数の足を広げ砂に突き立てる。

そんな時だった少し離れた大きめの岩山から謎の爆発音がひびくと同時にナイト達の前に現れたミオ。

ナイトアイコン

「ミオ!?・・・いつの間に」

ミオアイコン

「し、静かに・・・」

ナイトアイコン

「・・・!?」

そんなやり取りをした次の瞬間しゅんかんに解きはなたれたブレスによりはげしい風が吹き荒れ多くの砂が宙を舞った・・・。

思わず一同は息をのみ、その場で様子を静かにうかがっている。

しばらくキョロキョロと辺りを警戒けいかいしていた百足竜むかでりゅうは静かに砂の海へもぐり姿を消した・・・。

ミオアイコン

「・・・行った?みたいね」

岩に背をつけ様子を確認するミオ。

ナイトアイコン

「なんだ・・・さっきのブレス、大砲か何かか・・・?」

ナイトアイコン

「もっと大きな岩に隠れとかないと当たったら即死そくしだったな・・・」

ミオアイコン

「いや・・・岩ぐらいじゃ無理かも知れない」

そう言いミオが見つめる先にはブレスにより大穴の空いた岩山だった・・・。

ナイトアイコン

「・・・!?」(トンネルみたいになってるし・・・)

ナイトアイコン

「・・・変に隠れない方が良かったのか・・・?」

ミオアイコン

「安心して?隠れるところがもう無いし」

ナイトアイコン

「それ、どの辺が安心要素!?」

砂には百足竜むかでりゅうの突き立てた足が無数のみぞを残している。

ミオアイコン

「反動でかなり後ろに下がってる」

地面を観察しているミオ達に声をかける商人らしき男性。

商人アイコン

「先程は助けて頂きありがとうございました」

ミオアイコン

「・・・ところで」

ミオアイコン

貴方あなた何故なぜここに・・・砂漠に商売相手なんてそうそういなさそうだけど」

そう男性にたずねるミオ。

商人アイコン

「仕入れもねてと言いますか・・・砂漠でしか手に入らない物がありまして」

ミオアイコン

「・・・?・・・砂漠で買い付け?それとも採取さいしゅかしら?」

商人アイコン

採取さいしゅです、珍しい鉱石や植物がありますので」

ミオアイコン

「そうなのね、採取さいしゅは終わったところなの?」

商人アイコン

「いえ、まだですが・・・」

ミオアイコン

「・・・だとしたら可笑おかしい・・・、積荷が多過ぎるの」

商人アイコン

「・・・え」

ミオアイコン

「ここに戻る前に少しのぞいて来ちゃった・・・って言うかさっきの奴の攻撃で若干中身も出てるし・・・」

ナイトアイコン

「これは・・・酒か・・・?アルコール臭い気もするし」

ミオアイコン

さわらない方がいい、たるの方は酒だと思うけどそれとは別に小瓶とかも割れてるから」

ミオアイコン

流石さすがに取引の予定無しに砂漠にこんな量を運搬うんぱんする事はないでしょう?」

ミオアイコン

「誰におろしているの?」

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 中編(1)

そう詰め寄るミオだったが商人は足元に何かを投げ捨てると、パチパチパチッと言う何かの爆発音がひびき渡った・・・。

それと同時に一目散いちもくさんに逃げ出す商人。

ナイトアイコン

爆竹ばくちく・・・!?」(何んで爆竹ばくちくなんか・・・?)

ミオアイコン

「・・・まずい」

ナイトアイコン

「ん!?、まさか今ので怪我けがでもしたのか?」

ミオアイコン

「いや、怪我けがはしてない」

逃げ出した商人を追いかけようとしたがそんな一行の足元に地響じひびきがする。

ミオアイコン

「やっぱり・・・」

ナイトアイコン

「・・・まさかこれって・・・さっきの」

ミオアイコン

「時間がないから先に説明する」

ミオアイコン

「さっきの竜は目が無いの、だから敵の動きとかは音で探っているみたい」

ミオアイコン

「特に目がない分、聴覚はすごく発達しているとは思っていたんだけど」

ナイトアイコン

爆竹ばくちくの音を感知してここに向かって来てるのか・・・」

ミオアイコン

「一度警戒けいかいされた以上、下手に足音を立てるだけでも追跡ついせきされかねないし」

ナイトアイコン

「それで相手の大技を誘導ゆうどうするために爆発音を使ったのか・・・」

ミオアイコン

「そう、自分の足音より大きな音を立てたかったからね」

ナイトアイコン

「でも爆発なんて、積荷に爆弾ばくだんでもあったのか?」

ミオアイコン

「いえ、あれは起爆札きばくふだって言うもの」

ミオアイコン

「旅に出る前に貰ったんだけど、さっき使ったからあと1枚しか残ってない」

チェリーアイコン

「え・・・ピンチじゃん」

ミオアイコン

「どうにか有効活用するしかないわね」

ナイトアイコン

「この積荷、使っちゃダメかな?」

ミオアイコン

「正直悩ましいけど・・・盛大せいだいに置き土産された所だし」

ミオアイコン

「何より本人が放棄ほうきして行ったような物だから使えるものは使わせて貰いましょう」

ナイトアイコン

「お、そう来なくっちゃ!」

チェリーアイコン

「完全に悪巧わるだくみしてるノリじゃん・・・」

ミオアイコン

「そう言うからには何かやりたい事があるんでしょ?」

ナイトアイコン

「あぁ、この手付かずの酒とその最後の起爆札きばくふだってやつが使いたいんだけど」

ミオアイコン

「・・・?まぁ、何となく分かったけど酒にもふだにも限りがあるから失敗はできない」

そう言ってる間にも地響じひびきが大きくそして近づいてくる。

ミオアイコン

「そろそろおいでになりそうだけど待機場所はどこがいいの?」

ナイトアイコン

「どうせ酒は重くてそんなには持てないからその付近で」

ミオアイコン

「・・・ナイトの作戦を信じる・・・でも何かあっても必ずフォローするから」

ナイトアイコン

「信じてくれるのにフォローの準備もするんだ・・・」

ミオアイコン

「当然・・・物事に100%はない」

ナイトアイコン

「げ、現実的・・・」

ミオアイコン

「それに成功したとしてもその後に不足の事態が起こることだってある」

チェリーアイコン

「そんなこと言ってる間にもう来ちゃうよ!!」

ミオアイコン

「どうするの?」

ナイトアイコン

「1つは俺がアイツが一部吹き飛ばしたあのがけの上に運ぶよ」

ミオアイコン

「その間の時間を私がかせげば良いのよね?」

ミオアイコン

「あとふだは先に渡すけど、うっかり起爆きばくしないようにね」

ナイトアイコン

「それは俺もやりたくないな・・・」

そう言い手頃なサイズ(5Kg)のたるかつぐナイト・・・。

ミオアイコン

「このすずをを使う日が来るとは・・・貰った時はすずなんて使い所が無いと思ってたけど」

ミオが手にしているのは共振きょうしんすずというもので近くに同じ共振きょうしんすずがあると共鳴きょうめいしてり、さらには数に応じて少しずつ大きな音になっていくという物である。

チェリーアイコン

「そのすず、スイレンがくれたやつ?」

ミオアイコン

「そう、特殊とくしゅな封印のされたこの箱でしか音を抑えることができないすず

ミオアイコン

ちなみに戻し方は聞いてない」

チェリーアイコン

「こわっ」

地響じひびきがさらに大きくなり、足元にはげしいれを感じすぐさますずの付いたクナイを荷車に残された酒樽さかだるに投げる・・・クナイがさった瞬間しゅんかんに少し大きいすずの音がひびいた。

その酒樽さかだるの真下から押し上げるように飛び出した百足竜むかでりゅうはそのまま酒樽さかだる粉砕ふんさいし大量の酒を浴びている。

したたり落ちた水分は灼熱しゃくねつ砂漠さばくであることも手伝ってかすぐに蒸発じょうはつし湯気のようなものを出している。

くだけ落ちたたる木片もくへんが落ちると同時にすずの音が再びひびきそれに共鳴きょうめいするようにミオが持つすずも音をらす・・・その音に釣られ竜の顔がミオへ向く。

ミオはたる破片はへんからクナイを回収しすぐに竜の近くの地面へ円を描くように投げていく。

周囲でひびく複数のすずの音に向けるべき頭の方向を悩んでいるように見える百足竜むかでりゅう・・・。

その頃、ナイトの姿はがけの頂上にあった・・・。

百足竜むかでりゅうは周囲のクナイをぎ払い再び砂にもぐっていく・・・。

頂上にいるナイトの姿を視認したミオはその辺りに転がっているクナイを回収しがけの方にけ出す。

ミオアイコン

「・・・」(追って来てくれれば良いけど・・・)

そう言い走るミオの足音と共にすずの音がひびく・・・。

しばらく走っていると後方から地響じひびきがせまって来ているようだ。

ミオアイコン

「・・・」(かった!)

がけを軽く登りながらクナイの一部を付近に置いていく。

ミオアイコン

「・・・」(でも・・・あの大技だけはやめてよね・・・)

頭をのぞかせた百足竜むかでりゅうの口から砂ブレスが放たれる・・・。

ブレスは近くに被弾ひだんし少しがけけずった。

高い位置に差しかる頃、今度は自らがけに無数の足を使い登って来る。

ミオアイコン

「何あれちょっとこわい」(ちゃんと足として使えるのね)

そう言いながら崖上がけうえに到達したミオ。

ナイトアイコン

流石さすがの立ち回りだな」

ナイトアイコン

「でも悪い・・・おとりなんて危険な役をやらせてしまって・・・」

ミオアイコン

「別に、何よりたるを持ったままがけを登る方が私にはキツイから」

ミオアイコン

「それにすぐに砂にもぐられたんじゃ効果が薄くなるし、これがベストだと思う」

ミオアイコン

「あと・・・もうそろそろお出ましになりそうよ・・・」

がけの上に顔をのぞかせた百足竜むかでりゅう、その頭の上をすずを持ったミオが飛びえ、追うようにブレスをいた直後だった、その開いた大口に酒樽さかだるを叩き込んだナイト。

ナイトアイコン

「たらふくし上がれ!」

そのたるをバリバリとくだ百足竜むかでりゅうだったがその流れ落ちる酒は起爆札きばくふだの発動の際に起きた火花により引火し燃え上がる。暴れ周り砂漠さばくへ落下した百足竜むかでりゅう反撃はんげきをしようとブレスを放とうとするが吸い込んだ酸素により一層体内が焼ける・・・。

それからしばらあばれたあと、砂にもぐ地響じひびきはしなくなった・・・。

ミオアイコン

「・・・逃げた?・・・それとも」

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 中編(2)

ナイトアイコン

「どっちにしろ、しばらくは安全だろ」

ミオアイコン

「そうね・・・今のうちに遺跡いせきに向かいましょうか」

ミオアイコン

「道中で水も確保できれば良いけど・・・」

その数時間後・・・運よくオアシスを見つけ水を確保できたが夜になり辺りが暗くなると昼間の灼熱しゃくねつ砂漠さばくは一変しはげしく冷え込み始める。

ナイトアイコン

「夜の砂漠さばくは冷えるとは聞いてたけどまさかここまでとは・・・」

ミオアイコン

「寒暖差がはげしすぎて過酷かこくな環境って言葉がピッタリね・・・」

ミオアイコン

「生活できる気がしないから早めに調査して戻らないとね」

チェリーアイコン

「そう言えばさ、ナイトはヴァンと結構離れて行動してるけど武器とか普通に出せるの?」

そう不思議そうにたずねたチェリー。

ナイトアイコン

「え?一応出せるし風の力も使えるけど」

ナイトアイコン

「なんか精霊せいれいの力の影響範囲えいきょうはんいは個人差があるから私の場合はそれぐらいの距離ならば問題ないとか言ってたな・・・」

チェリーアイコン

「・・・」(なんか・・・ヴァンの「お前の守護範囲しゅごはんいと一緒にするな」って言葉が聞こえる気がする・・・)

チェリーアイコン

「ムキィィーーーーー」

ナイトアイコン

「え!?急に怒ってる?」

ミオアイコン

「大丈夫、気にしないで」

ミオアイコン

「少し被害妄想ひがいもうそうが入ってるだけだから・・・」

ナイトアイコン

「それは大丈夫なのか・・・?」

ミオアイコン

「そろそろ見えてきた・・・」

遺跡いせきの入り口には松明たいまつともしてあり、そこだけ明るく照らし出されている・・・。

少し離れた位置から入り口の様子をうかがう一行。

ナイトアイコン

松明たいまつがあるって事は、やっぱり人の出入りがあるって事だよな」

ミオアイコン

「だけど・・・特に人の気配は感じない」

ナイトアイコン

「待ち伏せとか・・・?」

ミオアイコン

「隠れているにしても何かが違うような」

ミオアイコン

「でも、中の構造も分からないし注意して入るしかない」

辺りを警戒けいかいしながらゆっくりと遺跡内部いせきないぶへ足をみ入れた一行だがどれだけ歩み進めても人の気配すらない・・・。

ナイトアイコン

「何もいない・・・?」

ナイトアイコン

「と言うかわならしい物も特にないな・・・」

ミオアイコン

「何だかすでに全て解除されている感じ、先客がいたのかな・・・?」

チェリーアイコン

「見てみて!この先すごく開けてるよ」

ナイトアイコン

「・・・・・・何だここ・・・」

ミオアイコン

「・・・すごい瘴気しょうき怨念おんねんすら取り込んでる・・・これは何が出てもおかしく無い・・・」

長い道を抜け、足をみ入れたのは円形の部屋であり中心部には数本の細い橋で結ばれた同じく円形の足場が繋がっていた、その細い橋から下をのぞいてもどこまで続いているか分からない奈落ならくが広がっている。

ミオアイコン

祭壇さいだん的なものかしら・・・でも健全な祭事とは思えないけどね」

チェリーアイコン

「ところどころ赤黒い汚れがついてるよ・・・」

ナイトアイコン

「祭事に牢獄ろうごくなんていらない・・・誰が使ってたか知らないけどろくな奴らじゃないのも間違いないな」

ミオアイコン

「決闘場でもねてるのかと思う造りね、中央は逃げ場も無い感じだし」

祭壇さいだんらしき中央の足場に辿たどり着いたミオは奥に置いてある石板にけ寄る・・・。

ナイトアイコン

「どうかしたのか?・・・石板・・・?」

ナイトアイコン

「でも何書いてるか分からないな・・・」

ミオアイコン

「悪しき神の体、六つに分かち・・・地に封ず・・・」

ナイトアイコン

「もしかして読めるのか・・・!?」

ミオアイコン

「一応ね・・・」

ミオアイコン

「どうやらこの場所には左腕が封じられてたみたい」

ナイトアイコン

「ひ、左腕!?ずっと・・・腕を?」

ミオアイコン

「正確には切り分けた時に左腕が変化した斧の事みたい」

ミオアイコン

「斧・・・ね、何のために持ち出したのかな・・・」

ミオアイコン

「オスクリダっていう訳の分からない人達もいなかったし一度報告に戻ろうか・・・」

そう言い帰ろうとした時だった・・・はげしいれが遺跡いせき全体をおそう。

ミオアイコン

「!!?」

ナイトアイコン

「今度こそ地震か・・・!?」

ミオアイコン

「いや、どうやら違うみたい・・・」

天上の一部が崩壊ほうかいし巨大な竜の骨がカタカタと音を立てながら広間に突っ込んできた。

チェリーアイコン

「骨が動いてる!!!!?」

チェリーアイコン

「さっきの百足竜むかでりゅうさんが燃えすぎて骨になっちゃったのかな!?」

ミオアイコン

「それはない、骨の時点でさっきの百足竜むかでりゅうより大きいし」

ナイトアイコン

「どっちにしろ筋肉無しでどうやって結合して動いてるんだ!?」

ミオアイコン

「着眼点そこなのね、まぁ気になるけど」

ミオアイコン

「早く逃げないと骨の友達になりかねない」

け出し中央の足場から離れ広間の出口を目指す一行だったが骨竜の一撃でその出口がふさがれてしまう。

ナイトアイコン

「骨なのになんかめちゃくちゃ考えてるし」

すかさず投げたナイトの槍は骨竜の背骨付近に当たり体勢をくずした骨竜、しかし真っ暗な大穴に体の一部がすべり落ちそうになった骨竜はよじ登ろうと大暴れしている。

その衝撃しょうげきからかさらに天上の一部が崩壊ほうかいし大量の砂が流れ込んできた。

ナイトアイコン

「流砂まで!?いくら何でも暴れすぎだろ!?」

ミオアイコン

「・・・違う!?」

ミオアイコン

「あの竜、最初からこっちを道連れに下に・・・!?」

その後の崩落ほうらくに巻き込まれ一行は骨竜と共に真っ暗な地下へと落下していまうのだった・・・。

砂の山の上で目覚めたナイトはすぐさま付近を見渡すも見える範囲にミオの姿は無い。

ナイトアイコン

何処どこに?」

上層から降り積もった砂がクッションになり無事だったが、どれくらいの高さから落下したのかそれすらも分からない・・・。

しかし、そんな時だった、カタカタと聞き覚えのある音が聞こえてくる。

ナイトアイコン

「この音は・・・!?」

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 後編(1)

音のする方へ歩みを進めると奥の方でうごめいている骨がうっすらと見える。

ミオアイコン

「・・・ダメね、全く手応えがない・・・」

ナイトアイコン

「ミオ!、無事だったのか!」

ミオアイコン

「あ・・・ナイト」

ミオアイコン

「もちろん無事」

チェリーアイコン

「私が頑張って起こさなかったら噛みくだかれたかも知れないくせに〜」

ナイトアイコン

「えっ・・・!?」

ミオアイコン

「余計なことは言わなくていい・・・」

ミオアイコン

「と、ともかくこの骨の生き物は何をしても意外と元気なのよ・・・」

ナイトアイコン

「元気な骨ってなんかすごいな・・・」

ミオアイコン

「見ての通り下半身は崩落ほうらく影響えいきょうで動けなくなってるけど、残りの頭の骨が厄介やっかいで攻撃的なの」

ミオアイコン

「多少の損傷そんしょうだと骨同士が集まって元の状態に戻ってしまう・・・」

ナイトアイコン

「でも動けないんなら無理に倒さなくても良いんじゃないか?」

ミオアイコン

「それはそうなんだけど、あいつの首の攻撃範囲にこわれたかべがあるでしょ」

ミオアイコン

「少し光がれてるから何があるのか確かめたくて」

ナイトアイコン

「なるほど、確かに上にい上がるのはかなりきびしそうだし別ルートは必要そうだよな」

ナイトアイコン

「・・・つまり口が使えなければ良いんだよな・・・?」

そう言うとナイトの手元に巨大な大剣が姿を表す。

ナイトアイコン

「アイツの口の強さに負けないぐらいの強度を持った剣なら・・・」

ミオアイコン

「!!?・・・大剣?」(いつの間にそんなものまで使えるように・・・?)

ナイトは飛び上がり大きな剣を骨の竜の頭に思いっきり突き立てる。その後離れる際に軽くひねりを加えななめにした事により引っ掛かり口が上手く開かなくなった骨竜。

口を開けようと暴れる骨竜の頭が激突げきとつかべくずれ落ちた。

ミオアイコン

「結構・・・、荒技あらわざに出たわね・・・」

チェリーアイコン

「誰の影響えいきょうなんだろうね・・・」

ミオアイコン

「さぁ・・・、こっちをみないで?チェリー・・・」

ミオアイコン

「ともかくナイトのお陰で道もできたし骨竜の動きを見ながら進んでみましょう」

すきを見て瓦礫がれきを乗り越えかべの向こうへ進んだミオ達・・・。

ミオアイコン

「・・・ここ、上の遺跡いせきの年代から考えるとかなり綺麗きれいじゃない・・・?」

ナイトアイコン

「明らかに人の手が入ってるな・・・しかもつい最近まで使われてた感じだ」

チェリーアイコン

「何かの研究所かな・・・?変な試験管いっぱいあるよ」

ミオアイコン

「チェリー、さわらないでね」

チェリーアイコン

「・・・!?わ、わかってるよ」

ミオアイコン

「砂に囲まれた砂漠さばくで後から地下を作るのはかなり手間がかかりそうだけど・・・」

ナイトアイコン

「いや、この空間自体は昔からあったみたいだ・・・本来の石壁いしかべの上から別の塗料とりょうで補強してある・・・」

ナイトアイコン

「だけど一体何の研究・・・」

見慣れないものが大量に置かれた通路を抜け、辿たどり着いた部屋では大量の紙が散乱さんらんしている・・・。

ミオアイコン

「研究資料とかかな・・・手分けして少し調べてみよう」

ミオアイコン

「何か分かるかも・・・」

散乱さんらんした紙に目を通していく・・・。

チェリーアイコン

「よく分からない文字がいっぱいだよ・・・」

ミオアイコン

「確かに専門用語みたいなのも多い・・・でも遺伝子の形質や生物の習性とかの記述も結構ある」

ミオアイコン

「あと合成獣キメラの生成方法・・・ここで研究してたのは間違いなさそうね」

ナイトアイコン

「・・・これは・・・?」

ナイトは手にしたノートを熱心ねっしんに読んでいる・・・。

ミオアイコン

「・・・?」

ミオアイコン

「どうしたの・・・?・・・随分熱心ずいぶんねっしんだけど・・・」

第12話 魔神まじん寝床ねどこ 後編(2)

ナイトアイコン

「いや、ここの資料はほとんどが動物にまつわるものばかりだっただろ?」

ナイトアイコン

「でもこれは・・・人に関する事みたいなんだ・・・」

ナイトアイコン

「実験の観察記録って書いてあるんだけどさ・・・」

ナイトアイコン

「幽閉した上に棘のついた鉄枷てつかせをはめて血の採取と傷の治りの確認をしてたって・・・これもはや拷問ごうもんだよな」

ミオアイコン

「・・・」

ナイトアイコン

「それにさ・・・かすれてるんだけど被験者名のらんにミ⚪︎⚪︎・G・フロー⚪︎的な名前が書いてある気がして・・・」

ナイトアイコン

「ミオのファミリーネームってフローラだったよな・・・?しかも特殊とくしゅな血を持ってる・・・」

ミオアイコン

「そこはフローラじゃなくてフロートとかかも知れないじゃない?」

ミオアイコン

「それに、フローラだとしても結構メジャーな名前だろうしね」

ナイトアイコン

「この傷の治るのが早いって言う特殊とくしゅな血は・・・?」

ミオアイコン

「その時にたまたま似たような血を持った生き残りがいたのかもね・・・」

ミオアイコン

「何にしても読み手があまり気にむ事じゃない、ここで精神弱らせると瘴気しょうき影響えいきょうでおかしくなるわよ・・・?」

ナイトアイコン

「・・・」(前にトルエノも気になる事言ってたしな・・・)

ナイトがそのノートを仕舞しまい込んだ時だった・・・さらに奥の方からパリンっとガラスが割れたような音が聞こえてきた・・・!

ミオアイコン

「こんな場所でモノが割れるなんて良くない想像しかできない・・・けど・・・」

ミオアイコン

「一応確認した方が良さそうね・・・」

静かに奥へ通じる扉を開けるミオ・・・。

その通路には合成獣キメラの入ったケージや割れたガラスが散乱している。

ナイトアイコン

「・・・あれは?」

通路の奥から近づいてくる影。

そこにあったのはつばさを持つ蛇の頭をくわえ引きりながら歩く大きな狐だった・・・。

レア_Wアイコン

「ん?其方そなたたちは・・・!?」

レア_Wアイコン

「・・・見たところこの施設の人間ではなさそうじゃのぉ?」

ミオ&ナイトアイコン

「めちゃくちゃ普通に話しかけられた・・・!」

レア_Wアイコン

「何じゃその顔は・・・この世界ではしゃべけものなどごまんとおるじゃろ?」

ナイトアイコン

「ミオ、あれは精霊せいれいなのか・・・?それとも別の何か?」

ミオアイコン

「それが精霊せいれいと似たような気配の中に少し違う気配もしてて・・・」

ナイトアイコン

「もしかして合成獣キメラの研究結果なのか・・・?尻尾9本あるし、宝珠ほうじゅまで首に着けてるし」

レア_Wアイコン

「誰が寄せ集めのけものじゃ!?こんな立派な九尾の狐を目の前にして!」

レア_Wアイコン

わらわをこのようなまがい物と一緒にするでないわ!」

そう言い地面に投げ捨てた蛇の合成獣キメラをバシバシ前足でたたいている・・・。

レア_Wアイコン

「ところで・・・お主はつのはもたぬのじゃな・・・?」

そうミオに顔を近づけたずねる。

ミオアイコン

つの・・・?そんなもの生えたことないけど?」

レア_Wアイコン

「ほうほう・・・これはなかなか興味深い人の子じゃのぉ」

ナイトとミオのにおいを交互にぎながら歩き回る九尾の狐・・・。

ナイトアイコン

「なんか気に入られてるのか?」

レア_Wアイコン

「そうじゃ!、わらわは今からこの施設から出て行こうと思っておったところじゃ」

レア_Wアイコン

「出れずにおるなら一緒に外に出るのを手伝ってやろうではないか」

ナイトアイコン

「いや・・・でも知らない狐について行ったらダメって昔言われたことあるからな・・・」

レア_Wアイコン

「何じゃそれ・・・あまりに限定的すぎる状況ではないか?」

レア_Wアイコン

「ええい、知らないのがダメなら名乗ってやろうではないか」

レア_Wアイコン

わらわはたっ・・・いやこの地域ではレアと呼ばれておる」

レア_Wアイコン

「象徴名はアナザー」

ミオアイコン

「アナザーってもう一つのって言う意味でしょ?」

ミオアイコン

「何がもう一つなの?」

レア_Wアイコン

「それは知らん」

ミオアイコン

「え?」

レア_Wアイコン

「ここに来た時にその名前が与えられただけじゃ」

ナイトアイコン

「どういうシステムなんだろう・・・」

レア_Wアイコン

「で、どうするのじゃ?来るのか?来ないのか?」

レア_Wアイコン

「言っておくが出口はないぞ?」

ミオアイコン

「それはどう言うこと?」

レア_Wアイコン

「ここにおった変な黒フードをわらわの術で燃やしておったらあちらが火事になってのぉ」

レア_Wアイコン

長居ながいすれば酸欠さんけつで人の子は長くは持たぬと思うぞ?」

ナイトアイコン

「嘘じゃないだろうな・・・」

チェリーアイコン

「待ってナイト・・・向こう側から本当に黒い煙が!!」

ナイトアイコン

「嘘だろ!?本当に燃えてるのか?」

レア_Wアイコン

「だから言ったではないかぁ・・・!?」

ミオアイコン

「地下だから元々の酸素量が多くは無いし火の周りも抑えられそうだけど」

ミオアイコン

「同時に私達の吸える酸素も目減りしそうね・・・」

ミオアイコン

「扉を開ければ酸素を取り込んだ爆風で死にかねない・・・」

ミオアイコン

「これはついて行くしかなさそうね」

ナイトアイコン

「でもどうやってここから出るんだ?」

レア_Wアイコン

「要は扉を使わずに外を出れば良いのじゃろう?」

ミオ&ナイトアイコン

「・・・???」