STORY
第11話 薄れゆくモノ 前編(1)
その日の夕方・・・。
とある宿の一室にミオ達の姿があった。
「宿は助かる・・・ちょっとベットは少ないけど」
「こっそり取れる宿はそんなに多くねーんだよ」
「それは分かってる・・・(トルエノを襲ったのはきっと・・・)
「・・・」(流石にフェダリアを連れてくる訳には・・・)
唐突に響いたノック音、その後にゆっくりと扉が開く。
そこに入って来たのはナイトだった。
「フェダリアの様子を見て来たけど大丈夫そうだ」
「まだ眠ってるけど・・・」
「確かヴァンも一緒にいるのよね?場所教えて貰えない・・・?」
「・・・」
「?・・・その目は一体・・・」
「・・・いや、ある意味前科持ちだし・・・失踪の」
「えーっと・・・」
「それに、迎えに来るときは2人で来いってヴァンにも言われてるからな」
そんな話をしている2人に割って入るトルエノ。
「一応言っとくけど・・・ちゃんと話すまで自由時間は無しだかんな?」
「分かってる」
「私も聞きたいことが山ほどある・・・地下の殺意の塊みたいな場所とか」
「俺も詳しく聞いたこと無かったんだが・・・」
「どうやら昔の戦争時代の名残らしくてさ、包囲された時あえて警備の緩い所を作って地下に誘い込んで使ってたらしい・・・」
「なんかうっかり入っちまった使用人が怪我したことが原因で部屋ごと埋めたんだと・・・」
「近年ウチの国じゃ激しい戦争も攻め入られることもなかったからな」
「ただ・・・流石に仕掛けが自動で動く訳はねーんだが・・・」
「・・・」(やっぱり・・・ヴィドゥルが居たから・・・?)
「それにしても・・・トルエノもよく生きてたね」
「部下を逃して1人のあの状況で」
「いや・・・そのセリフはそのままアンタに返したいぐらいだけどな?」
「まぁ、俺は命令違反してこっそり残ってた団員にあの後、城から引きづり出されただけだが」
「あぁ・・・確かに魔族の前に飛び出してまで貴方を庇っていた人がいたわね」
「本当に大したものよ・・・」
「・・・」(色々話が分からない・・・)
「ともかく本題に入るぞ・・・ルーチェフリアで2年前に何があったのか・・・」
「・・・分かってはいるのだけど・・・」
「相変わらず渋ってんのな・・・」
「そんなに恥ずかしがるなよ、同じ部屋で過ごした仲じゃねーの」
「・・・何なのその間違いではないけど絶妙に誤解を招きそうな表現・・・」
「あんまり変なこと言ってたら冥土に送るわよ・・・」
「まぁ・・・トルエノも既に出会ってもいるし隠しても仕方ない・・・か」
「そう来てくれねーと困る」
ミオは窓際に歩み寄り、少しの間外を眺めた後に口を開いた。
「あの日もきっと・・・いつもと変わらない1日になる」
「皆そう思って過ごしていたんだと思う・・・」
「でもそうはならなかった・・・」
「数時間の間に一部の人間は魔族化してしまって国は多くの魔族が徘徊する地獄絵図と化した・・・」
「・・・その原因はもっと昔・・・国が滅ぶ数年前に何らかの事情であるモノの封印が緩んだこと」
「あるモノ・・・?」
「多くの人が悪霊や悪魔と呼んでいるモノの中の1つ」
「エリニュエスの1人である・・・メガイラ」
「まて・・・それって神じゃねーのか・・・?」
「確かに元々は復讐の女神の中の1柱・・・正真正銘、神だった者」
「転化はどんな存在にも起こりえることだから・・・神が悪魔となる事も決してない訳じゃない」
「だがそれはつまり・・・少なくとも神と同格の連中が人間の国を侵略しに来てるって事になっちまう・・・」
「逆にそういう存在では無いと仮定した時、小国と言えど一晩で国が滅ぶ状況の説明もつかないでしょ・・・?」
第11話 薄れゆくモノ 前編(2)
「・・・確かにそれはそうだな、元々ルーチェフリア領土は資源も豊富で欲しがる国も多かったが、どの国も一晩 で落とす事は不可能だ・・・」
「がしかしだ、そんな状況であった事を考えると尚の事アンタの存在は不思議だ」
「強いのは分かるが、どうやって生還したんだ?」
「もちろん戦った・・・けど」
「共に戦った・・・兄が最後に私を逃してくれたから」
「・・・」
「・・・・・・そうか・・・じゃあ国王は・・・?」
「気づいた時には見る影もなかった」
「・・・」(?・・・そもそもミオは国王の知り合いだったのか・・・?)
「・・・やっぱそうだったか・・・惜しい人を・・・亡くしたな・・・」
「それに何とか生き延びたものの国の領土を出てすぐに意識を失ってしまったからその後の事が分からない・・・」
「聞いた感じだとアンタ以外の生存者の見込みはほぼ皆無か・・・」
「あと私が分かるのは思った以上に国から離れた場所で保護されたって言う事実だけ・・・」
「2年前で・・・気が付いたら別の場所だった・・・か」(なんか・・・俺と似てるような)
「原因が人外だとすると一度目をつけられたら逃れようは無いのか・・・何にしてもキツイ話だな・・・」
「・・・人間が魔族化した場合は基本的に人間に戻る事は無いの・・・」
「だから被害が出る前に早く見つけて倒すしか今のところは無い」
「ただ・・・他の魔族の活性化の原因となる強い魔族の封印場所が分かれば先に手を打てるかも知れない」
「魔族の封印ってそんなにホイホイあるものなのか・・・?」
「下手したら1つの国に1、2箇所ぐらいはあると思っていい」
「寧ろ封印の地があるからそこに国が出来てると言った方が正しいの」
「いや何でそんなヤベー場所に国を建国することになってんだよ」
「封印確実なものにするために必要だったから」
「と言うと・・・?」
「元々封印したのは人が神と呼ぶ存在だけど」
「神は信仰を糧とするもの・・・だからこそ最も信頼し自らを信仰してくれる人の一族を王族とした」
「信仰心が強ければ強いほど封印は強固なものになるはずだった・・・」
「はずだった・・・って事は・・・思ったように成らなかったのか?」
「そう・・・時と共に人々の信仰心も薄れていった・・・結果が今のこの世界の状況って事」
「その言い方だと色んな国で魔族が復活するかも知れないのか・・・?」
「・・・・・・ところでこの国の信仰心は?」
「・・・薄い・・・な・・・多分」(俺も全然・・・神とか気にしたこと無かったし・・・)
「流石にちょっと責任感じてきたわ・・・」
「完璧な仕組みなんてあり得ない、遅かれ早かれ起こった事だと思う」
「何より私もある意味では神を信じてないから・・・」
ミオは少し虚な目でそう語った。
そんな話を終えた頃にはすっかり日が暮れていた・・・。
「私が知っている事はこれで全部話したと思う」
徐に窓を開けたミオは縁に足を掛ける。
「ちょ、急にどうしたんだ?」
「少し出てくる」
「あと、部屋は好きに使って?私は外で寝るから」
そう言い残すとミオはそのまま窓から飛び降りた・・・。
「脱走・・・手慣れてそーだな」
「外で寝るからって・・・」
「今時の女の子って意外とワイルドなのな・・・」
「いや、そんな訳ない・・・どう見たって特殊ケース」
「・・・だよ・・・な」
「まぁ・・・それはそうと、アンタは何者なんだ?」
ミオが飛び降りた窓から身を乗り出したナイトに尋ねるトルエノ。
「何者って?」
「あのタイプの人間が普通の人間を近くに置きたがると思えなくてさ」
「存外アンタも特殊な人間なんじゃね?」
「俺は普通の人間だよ」
「ホントかよ?」
「そんなことで嘘はつかない・・・」
どこか険悪な2人を残し窓の外へ駆け出す小さな影があった・・・。
チェリーは真っ直ぐミオの走り去った方向へ追いかける。
道の先で唐突に足を止めるチェリー・・・その先から話し声らしきものが聞こえてくる。
「こんな所で会えるとは思っていなかった・・・」
第11話 薄れゆくモノ 中編(1)
「私も・・・とても顔向けなど出来ない事は百も承知しています・・・」
「???」
「ですがどうしても・・・これだけは・・・」
「何かあったの?・・・」
「各地で起こっている魔族の活性化にオスクリダと言う教団が深く関わっているのは間違いないのですが」
「そのオスクリダの拠点の1つがこの国にあるようなのです・・・」
「そう言えばその名前、別の場所で・・・」
「詳しい場所はわかる?」
「南方の砂漠地帯にあるらしいのですが」
「分かった・・・少し調べてみる・・・」
「・・・私はいつも・・・頼ってばかり・・・本当なら私が」
「昔からこういうのは私の仕事だから・・・」
そんな話し声の元へやって来たチェリー。
「チェリー!?どうかしたの・・・?」
驚いたように振り返るミオ、しかしその近くに話していた相手の姿は無かった。
「ミオ・・・今誰かと話してたよね?」
「いえ」
「絶対別の人の声がしてた・・・」
そう言い剥れているチェリー。
「・・・」
「何で・・・何でいつも1人で何も言わずにどっか行っちゃうの?」
「何で?何も相談してくれないの・・・?」
「・・・必要な時には話すよ」
「それが今なの!」
そんなチェリーを抱え上げミオは肩に乗せた・・・。
「はいはい」
「流すな〜!!そう言うのも悪い所だからね!?」
そう言いながらミオの頭の上へ登りバタバタしているチェリー。
「・・・うん、悪い悪い」
「聞く耳持ってよ〜!!!」
「・・・」(フェダリアの居場所・・・きっとヴァンの気配を辿れば・・・)
数時間後・・・
「本当に帰って来ない・・・」
「一応・・・この辺りは探したんだけどな・・・・」
「そういやさっき、失踪だかなんだか言ってたな・・・」
「まぁ、何かあろうとそうそう死にそうもねータイプだと思うが・・・」
「何があった?」
「事情は色々ありそうだけど・・・ある日唐突に姿を消しちゃって」
「あるヤツからミオがこの付近にいたって話を聞いたから探しに来て今に至ってる」
「自分から姿を消したヤツを探すってのもなかなかだねぇ・・・」
「嫌われてるとかだったらどうすんの・・・?」
「・・・!!?」(・・・そこまで考えてなかった・・・)
「まぁ、見た感じ嫌ってはいなさそーだが・・・」
「それに今の立場を考えりゃ、常に失踪中の存在ではあるしな・・・」
「それどう言う意味なんだ・・・?」
「・・・?」(・・・ひょっとして何も聞かされてないのか・・・?)
「あ、いや比喩的なヤツさ」
「ある意味、今も見事に失踪中だしな」
「・・・なんか違かった気がするんだけど・・・」
「それはそうと・・・第二王子なのになんで一緒に宿に泊まってるんだよ・・・」
「帰った方が快適なんじゃないのか・・・?」
「いや・・・ここに来る前に盛大に兄貴と揉めたんだよ・・・」
「気まずくて帰れない的な理由だったのか・・・」
「オレにも色々あんだよ・・・」
第11話 薄れゆくモノ 中編(2)
その日の深夜・・・
ポツポツと音を立てはじめた雨音で目を覚ますナイト・・・。
思わず部屋を見渡すがやはりそこにミオの姿は無かった・・・窓を開けると同時に湿った土の匂いが飛び込んでくる・・・・。
「雨か・・・」(フェダリアの様子も見に行かないと・・・フェダリアが第二王子を襲った可能性もあるから近付けたくないって話だったけど・・・)
「やっぱり・・・フェダリアだけでも室内に・・・」
そんな時だった、突然ヴァンの声が頭の中で響く。
「・・・」(ナイト、今すぐ来れるか?)
「???」(なんでヴァンの声が聞こえるんだ・・・?)
「・・・」(一定の領域内にいれば使えるテレパシーだが・・・)
「・・・」(初耳なんだけど・・・)
「・・・」(聞かれてないからな・・・これは色々制約も多いのだ・・・)
「・・・」(そんなことより早く来い・・・)
「・・・」(元々行く気はあったけど・・・最終的に命令だし・・・)
暫くして・・・レイテル近隣の森へやって来たナイト。
しとしとと降り続く雨の中を歩くナイトの目に写ったのは羽を休めるように蹲ったヴァンの姿だった・・・。
「何があったんだ?来れば分かるとしか言わないし・・・」
そう言われたヴァンは静かに立ち上がる・・・その足元にはフェダリアを抱えるように眠っているミオの姿だった・・・。
「外で寝るとは言ってたけど・・・ここだったのか・・・!?」
「フェダリアを王子と同じ部屋には泊められないけど1人で外に置いとくのも可哀想だからと動かなくてな・・・」
「嵐の象徴を持つ私に雨風を防げと言うのも難儀な話だろう?」
「それに・・・」
「それに?」
「おそらくだがミオはかなり弱っている・・・出会った頃よりもな・・・」
「それって・・・どう言うことだ?・・・怪我とかの治りは早いんじゃ?」
「・・・確かに怪我は既に回復しているようだが・・・そういうものとは別の生命力が落ちているように見える」
「・・・?」(そんなようには見えなかったけど・・・)
その言葉に疑問を感じつつ眠るミオに歩み寄るナイト・・・。
すると少し体を起こしたミオが眠たそうな目で見つめ尋ねる・・・。
「・・・何故、ここに?宿で休んでるんじゃ・・・」
「いや・・・雨で寝つけなくってさ・・・」
「そんな事より・・・」
「外で寝るって・・・普段から雨の中寝てるのか?」
そう言いナイトが差し出した傘の上を雨粒が滴り落ちる。
「・・・いや、普通は多少雨を避けられる場所を選ぶ・・・」
「それなら宿に戻ろうフェダリアと一緒に・・・折角ただで泊まらせて貰ってるんだしさ」
「1人増えるって伝えれば大丈夫だろ?」
「でも・・・」
「フェダリアが暴れないか心配してるんなら見とけばいい・・・」
「俺はさっきまで宿で休んでたから平気だし」
「?・・・さっき、寝つけなかったって・・・」
「え・・・いやともかく平気だからさっさと帰ろう・・・このままだと全員風邪引くし」
そう言うとフェダリアを抱え上げたナイトは傘をミオに差し出す。
「流石にフェダリア抱えたまま傘をさすのはキツいからさ」
「宿まで一緒に来てくれるよな?」
「・・・仕方がないな・・・」
そうナイトに促されたミオは少し微笑みながらそう答えた。
暫くして・・・宿に帰ってきたミオ達。
「だいぶ降られたな・・・」
「フェダリアの服は大丈夫そうだけど・・・」
そう言いながらタオルで水滴を拭き取っているナイト。
「ミオは・・・びしょ濡れだな・・・」
「私の服は元々濡れてたから・・・」
「でも流石に肌に張り付いてる感じが気持ち悪い・・・」
「いつも以上にタイトな感じに見える気が・・・」
「・・・と、ともかく着替え貸して貰えないか聞いてくる」
そう言いナイトは足早に部屋を出ていった・・・。
「それは私が行けば・・・」
「・・・もういないんだけど・・・」
「仲良いねぇ」
ソファでくつろぎながら突然声をかけてきたトルエノに驚くミオ。
「トルエノ・・・さっきまでベットで休んでなかった・・・?」
「人の気配がしたら普通気になるだろ?」
「それはそうね・・・起こしてしまったことは謝る」
「別にそこはいいが・・・」
「客人が増えてるみてえだな・・・」
「それは・・・私の知り合いの子なの・・・」
「家族は・・・?」
「はぐれたみたいで・・・」
「・・・なるほどなぁ・・・だが・・・」
「その女の子にはオレ、見覚えがあるんだよな・・・」
「・・・どこで?」
「・・・断言できねぇが」
「オレが斬られた時に見た気がする」
「・・・!・・・そうなの・・・」(やはりここにいる訳には・・・)
「なら・・・やっぱりここにはいられないわよね・・・」
「いや、そうは言ってねぇ」
「・・・え???」
「アンタ絡みなら訳ありじゃない方がすごいくらいだろうしな・・・」
「話せる訳があるなら話してみな?」
「・・・実は・・・」
ミオは一通りの事情を説明した・・・。
「なるほどな・・・特殊な血と・・・人間を傀儡に使う魔族か・・・」
「確かに・・・それだったら納得いくわ」
「アンタの強さとか」(3年前の塔の事件の理由もな・・・)
「今話した通りよ、私も本来ここに長居するべきではないのだけど・・・」
「へぇ・・・なんでだ?」
「・・・え?」
「俺はアンタがくる前から殺人予告きてた人間だぞ?」
「それにさ、昼間にも来てただろ既に変な化け物が・・・」
「今更離れたって変わらねぇだろ?」
「そこの子に関しては大人しく寝てるんだったら大丈夫だろうし?」
「それに・・・」
「・・・?」
「女子2人を雨の日の夜中に追い出すほどオレは鬼じゃねぇよ」
「女子?・・・ちなみに男子だったら・・・?」
「・・・さて、どうだろうなぁ?」
「国を背負う人間としては・・・平等に扱ってあげてほしいモノだけど・・・」
そんな話の最中、部屋に帰ってきたナイト・・・。
「服・・・借りられたけど・・・・・・ってなんの話してたんだ?」
「ありがとう・・・」
「大した話じゃないから気にしないで」
「そうなのか・・・?」
「私は着替えてくるから2人は先に寝てて・・・時間かかりそうだし」
ミオはそう言いナイトから服を受け取ると部屋を後にする・・・。
「まぁ・・・濡れた服も悪かねーけどな・・・」
「なんか不純・・・」
「そうかぁ?純粋な感想なんだが?」
「純粋の方向性を疑ってるんだよ・・・」
「お前がガキなだけかもよ」
「やっぱ・・・絶対気が合わない気がする・・・」
「まぁ、それは同感かな」
第11話 薄れゆくモノ 後編(1)
「どこぞの王子様はさっさとベットでお休みになられればいいんじゃ」
「いや、オレはソファで寝るわ」
「たまにはソファで寝るっていう経験してみたいんでね」
「流石にこの国の王族をソファで寝かせられる訳ないだろ・・・ベットで寝るか城で休むかしてくれ・・・」
「俺はフェダリアの様子を見てなきゃいけないからソファでもいいし」
「じゃあ、2人で1組で使うか」
「そっちの小さいレディは頼んだぜ」
「いや、それなら女子同士でかためろよ」
「そうなるとオレらが一緒?・・・」
「・・・オレはお前と添い寝はしたくねぇな・・・」
「べ、別に俺たちが一緒に寝なくていいだろ・・・」
「なんか・・・?分からないけど仲・・・良いのね・・・」
そう言い部屋を覗き込んでいるミオ・・・。
「お前のせいでメチャクチャ誤解されてるじゃねぇか・・・」
「俺のせいなの?」
「て言うか・・・思ったより似合ってるじゃんその服」
「そうかな・・・着慣れて無いから私にはよくわからない・・・」
「俺も似合ってると思うけど・・・」
「・・・ありがと、雨の中・・・迎えに来てくれたことも・・・」
「あ・・・あれは、ただフェダリアの様子を見に行ったらたまたま見つけただけで・・・」
「そっか・・・」
「で・・・ナイトはトルエノと2人でベット使うの?」
「それは誤解!!」
「そんなことするぐらいなら俺は床と仲良くする・・・!」
「それなら私もベットで寝ることでのこだわりは無いから床とかソファでも・・・」
「ミオは借りた服着てるだろ・・・床で寝ちゃダメだろ普通・・・」
「あと・・・何か頼む・・・男をたてさせてくれ・・・」
「・・・え・・・・よくわからない・・・」
「まぁ・・・やりたいようにさせてやれば良いってことだよ・・・」
数時間後・・・。
床でスースーと寝息を立てるナイト。
「ほ・・・本当に床で寝てしまったのか・・・」
ミオは布団の1枚をナイトにゆっくりとかけた。
ふと隣のフェダリアに視線を向けた後、再びナイトに視線を戻す・・・。
「あの時・・・止めてくれて・・・来てくれてありがとう・・・」
「びっくりしたけど・・・何故だか少し嬉しかったんだ・・・喜んでちゃいけないのに・・・」
「でも・・・私はやっぱりまた・・・巻き込んでしまったのかな・・・」
「・・・別に巻き込まれたとか思ってない・・・」
「・・・!!!?」
「お、おきてたの・・・?」
「い、いやフェダリアのこともあるしちょっとだけ気を張ってたっていうか・・・」
「・・・黙っておけなかったっていうか・・・」
「俺の意志で勝手についてきただけだから、巻き込まれたとか思わない」
「それに・・・ちょっと本音が聞けて良かったかな」
「・・・さっきの・・・全部忘れて」
「それは多分無理だな」
「・・・余計なことは喋るもんじゃないわね・・・」
「余計なのか?」
少し笑いながら尋ねるナイトから視線を逸らすミオ。
「余計なものは余計なのよ・・・・・・もう寝る」
そんな会話の後、再び体を休めるのだった・・・。
翌朝・・・。
「なんか・・・重い・・・」
謎の圧迫感で目を覚ましたトルエノ・・・。
「あ、待ってたわよ」
「ヴィドゥルがね」
トルエノが目を開くとそこには黒いライオンの顔が・・・。
「な、何だこの状況!?」
「さっきまでちゃんとベッドの横でお座りして待ってたんだけど・・・」
「待ちくたびれたみたいで・・・」
「いや前足しか乗ってないけど圧死しそうなんだが!傷が開くわ」
「わぁ、本当だ話聞いてくれそう!」
「どこら辺でその判断に至ったんだ!?」
「ごめんなさい、貴方なら彼のこと理解してくれるかもしれないって思って」
「昨日、会ってみることを勧めたんだけど・・・」
「貴方に話をする前に先に来てしまった・・・」
「このベットって面白い!跳ねる、跳ねるよ!」
「分かった聞く、話聞くから暴れんじゃねぇ」
第11話 薄れゆくモノ 後編(2)
30分後・・・。
「とんだ 起床だった・・・」
「ははは・・・お疲れ様」
「笑い事じゃねぇ・・・」
「しかし・・・城の地下にあんなのが住んでたのか・・・」
「それに仕掛けが動いてるのはヴィドゥルが放ってる電気エネルギーだったとは・・・」
「仕掛けの物騒さとは真逆に無邪気すぎるし・・・」
「悪い子じゃなさそうなの」
「記憶が曖昧みたいだし城の方に何かしらの記録とか残ってるか貴方に聞こうと思ってたんだけど・・・」
「流石に合成獣の飼育記録は見たことねぇな・・・」
「ライオンかヤギか蛇あたりの可能性も・・・どの頭の記憶かは断定できないし・・・」
「一番有力なのはライオンだと思うけど」
「なんか王家を護ってるって言ってたな・・・あれが記憶から来る行動なら昔関わりがあった可能性は高いが」
「・・・ヤベェ・・・よくよく考えると普通に人以外と喋ってたわ・・・」
「合成獣ってことは普通の生き物じゃないんだよな・・・?」
「少なくとも誰かが意図的に生み出したんでしょうね・・・」
「何でわざわざそんなことするんだろうな・・・」(人間でも同じ事するのか・・・?)
「それはやった人間にしか分からない・・・」
「何にしてもだ、ウチの国で勝手に実験をされたとかじゃ洒落になんねぇ」
「だからアイツの件はオレの方で調べとくが・・・」
「それとは別にこっちにも問題があってな・・・悪いがそっちを手伝って貰えねぇか?」
「問題・・・?」
「兄貴の事・・・って言うか」
「黒いローブの連中を覚えてるか?」
「オスクリダって言う宗教団体の人達・・・?」
「そう・・・あの目の前で化け物になった連中・・・」
「実はそのオスクリダの連中が何故か砂漠の遺跡に頻繁に出入りしてるのが確認されていた・・・」
「・・・砂漠・・・ね」
「で・・・それがお兄さんに何の関係があるの?」
「ある日を境に兄貴の様子がおかしくなっていったんだが」
「そのある日ってのに兄貴が珍しく仕事以外で外出届けを出していてな・・・」
「帰ってきた団員も怪我をしていて重度の疲労状態だったらしい」
「で、お兄さんは?」
「兄貴も多少の怪我はあったみたいだが割とピンピンしてたらしい」
「・・・もう流石としか言いようが無いわね・・・」
「だがな・・・その日から武器庫に見知らぬ斧が置かれるようになった」
「・・・あの斧か・・・」
「一応当日に兄貴と行動していた団員に聞いたがどうも歯切れが悪い」
「取り敢えずは周辺への聞き込みで遺跡に行かなくてはいけない用事があるって漏らしてたらしいから」
「遺跡に行ったんだとは思うが」
「・・・と言うことは手伝いってのは砂漠の遺跡調査ってこと?」
「そう言うことだ、話が早くて助かる」
「ちょっと、待て」
「そんなよく分からないことが起こった場所に行かせるのか?」
「あぁ、その意見はごもっともだ」
「だが現状、騎士団の連中を派遣したとしても無事で済む確率はもっと低い」
「だったら強くて最初から知識のありそうな奴に頼むのが得策だろう・・・」
「分かった・・・行ってくる」
「・・・!?」
「収穫があるかは分からないけど」
「貴方には借りがあるし」
「ホント、助かるぜ」
「危ないのが分かってるんならお前も来いよな・・・」
「オレだって出かけてーんだけどな」
「出かけるって・・・別に遊びに行くんじゃ無いんだぞ・・・・・・」
「・・・やっぱ来なくていいや・・・」
「ただ・・・あんまりお兄さんにあの斧使わせない方がいいと思う・・・」
「いっそ行く前に腕斬り落としておくとか・・・?」
「五分五分で正気に戻るかも・・・?」
「たぶん、兄貴が正気に戻ってもアンタが牢獄に逆戻りする事になるからオススメはしねぇよ・・・?」
「あと、五分五分でやる賭けじゃねぇだろ・・・それ」