ストーリーアイコンSTORYストーリー

第11話 うすれゆくモノ 前編(1)

その日の夕方・・・。

とある宿の一室にミオ達の姿があった。

ミオアイコン

「宿は助かる・・・ちょっとベットは少ないけど」

トルエノアイコン

「こっそり取れる宿はそんなに多くねーんだよ」

ミオアイコン

「それは分かってる・・・(トルエノをおそったのはきっと・・・)

ミオアイコン

「・・・」(流石にフェダリアを連れてくる訳には・・・)

唐突とうとつひびいたノック音、その後にゆっくりと扉が開く。

そこに入って来たのはナイトだった。

ナイトアイコン

「フェダリアの様子を見て来たけど大丈夫そうだ」

ナイトアイコン

「まだ眠ってるけど・・・」

ミオアイコン

「確かヴァンも一緒にいるのよね?場所教えてもらえない・・・?」

ナイトアイコン

「・・・」

ミオアイコン

「?・・・その目は一体・・・」

ナイトアイコン

「・・・いや、ある意味前科持ちだし・・・失踪しっそうの」

ミオアイコン

「えーっと・・・」

ナイトアイコン

「それに、迎えに来るときは2人で来いってヴァンにも言われてるからな」

そんな話をしている2人に割って入るトルエノ。

トルエノアイコン

「一応言っとくけど・・・ちゃんと話すまで自由時間は無しだかんな?」

ミオアイコン

「分かってる」

ミオアイコン

「私も聞きたいことが山ほどある・・・地下の殺意のかたまりみたいな場所とか」

トルエノアイコン

「俺もくわしく聞いたこと無かったんだが・・・」

トルエノアイコン

「どうやら昔の戦争時代の名残なごりらしくてさ、包囲された時あえて警備のゆるい所を作って地下にさそい込んで使ってたらしい・・・」

トルエノアイコン

「なんかうっかり入っちまった使用人が怪我けがしたことが原因で部屋ごと埋めたんだと・・・」

トルエノアイコン

「近年ウチの国じゃはげしい戦争も攻め入られることもなかったからな」

トルエノアイコン

「ただ・・・流石さすがに仕掛けが自動で動く訳はねーんだが・・・」

ミオアイコン

「・・・」(やっぱり・・・ヴィドゥルが居たから・・・?)

ミオアイコン

「それにしても・・・トルエノもよく生きてたね」

ミオアイコン

「部下を逃して1人のあの状況で」

トルエノアイコン

「いや・・・そのセリフはそのままアンタに返したいぐらいだけどな?」

トルエノアイコン

「まぁ、俺は命令違反してこっそり残ってた団員にあの後、城から引きづり出されただけだが」

ミオアイコン

「あぁ・・・確かに魔族まぞくの前に飛び出してまで貴方あなたかばっていた人がいたわね」

ミオアイコン

「本当に大したものよ・・・」

ナイトアイコン

「・・・」(色々話が分からない・・・)

トルエノアイコン

「ともかく本題に入るぞ・・・ルーチェフリアで2年前に何があったのか・・・」

ミオアイコン

「・・・分かってはいるのだけど・・・」

トルエノアイコン

「相変わらずしぶってんのな・・・」

トルエノアイコン

「そんなに恥ずかしがるなよ、同じ部屋で過ごした仲じゃねーの」

ミオアイコン

「・・・何なのその間違いではないけど絶妙ぜつみょうに誤解を招きそうな表現・・・」

ミオアイコン

「あんまり変なこと言ってたら冥土に送るわよ・・・」

ミオアイコン

「まぁ・・・トルエノもすでに出会ってもいるし隠しても仕方ない・・・か」

トルエノアイコン

「そう来てくれねーと困る」

ミオは窓際に歩み寄り、少しの間外をながめた後に口を開いた。

ミオアイコン

「あの日もきっと・・・いつもと変わらない1日になる」

ミオアイコン

「皆そう思って過ごしていたんだと思う・・・」

ミオアイコン

「でもそうはならなかった・・・」

ミオアイコン

「数時間の間に一部の人間は魔族まぞく化してしまって国は多くの魔族まぞく徘徊はいかいする地獄絵図と化した・・・」

ミオアイコン

「・・・その原因はもっと昔・・・国が滅ぶ数年前に何らかの事情であるモノの封印がゆるんだこと」

トルエノアイコン

「あるモノ・・・?」

ミオアイコン

「多くの人が悪霊や悪魔と呼んでいるモノの中の1つ」

ミオアイコン

「エリニュエスの1人である・・・メガイラ」

トルエノアイコン

「まて・・・それって神じゃねーのか・・・?」

ミオアイコン

「確かに元々は復讐ふくしゅうの女神の中の1柱・・・正真正銘しょうしんしょうめい、神だった者」

ミオアイコン

「転化はどんな存在にも起こりえることだから・・・神が悪魔となる事も決してない訳じゃない」

トルエノアイコン

「だがそれはつまり・・・少なくとも神と同格の連中が人間の国を侵略しんりゃくしに来てるって事になっちまう・・・」

ミオアイコン

「逆にそういう存在では無いと仮定した時、小国と言えど一晩ひとばんで国が滅ぶ状況の説明もつかないでしょ・・・?」

第11話 うすれゆくモノ 前編(2)

トルエノアイコン

「・・・確かにそれはそうだな、元々ルーチェフリア領土りょうどは資源も豊富で欲しがる国も多かったが、どの国も一晩ひとばん で落とす事は不可能だ・・・」

トルエノアイコン

「がしかしだ、そんな状況であった事を考えるとなおの事アンタの存在は不思議だ」

トルエノアイコン

「強いのは分かるが、どうやって生還せいかんしたんだ?」

ミオアイコン

「もちろん戦った・・・けど」

ミオアイコン

「共に戦った・・・兄が最後に私を逃してくれたから」

ナイトアイコン

「・・・」

トルエノアイコン

「・・・・・・そうか・・・じゃあ国王は・・・?」

ミオアイコン

「気づいた時には見る影もなかった」

ナイトアイコン

「・・・」(?・・・そもそもミオは国王の知り合いだったのか・・・?)

トルエノアイコン

「・・・やっぱそうだったか・・・しい人を・・・くしたな・・・」

ミオアイコン

「それに何とか生きびたものの国の領土りょうどを出てすぐに意識を失ってしまったからその後の事が分からない・・・」

トルエノアイコン

「聞いた感じだとアンタ以外の生存者の見込みはほぼ皆無かいむか・・・」

ミオアイコン

「あと私が分かるのは思った以上に国から離れた場所で保護されたって言う事実だけ・・・」

ナイトアイコン

「2年前で・・・気が付いたら別の場所だった・・・か」(なんか・・・俺と似てるような)

トルエノアイコン

「原因が人外だとすると一度ひとたび目をつけられたら逃れようは無いのか・・・何にしてもキツイ話だな・・・」

ミオアイコン

「・・・人間が魔族まぞく化した場合は基本的に人間に戻る事は無いの・・・」

ミオアイコン

「だから被害が出る前に早く見つけて倒すしか今のところは無い」

ミオアイコン

「ただ・・・他の魔族まぞくの活性化の原因となる強い魔族まぞくの封印場所が分かれば先に手を打てるかも知れない」

トルエノアイコン

魔族まぞくの封印ってそんなにホイホイあるものなのか・・・?」

ミオアイコン

「下手したら1つの国に1、2箇所ぐらいはあると思っていい」

ミオアイコン

むしろ封印の地があるからそこに国が出来てると言った方が正しいの」

トルエノアイコン

「いや何でそんなヤベー場所に国を建国することになってんだよ」

ミオアイコン

「封印確実なものにするために必要だったから」

トルエノアイコン

「と言うと・・・?」

ミオアイコン

「元々封印したのは人が神と呼ぶ存在だけど」

ミオアイコン

「神は信仰しんこうかてとするもの・・・だからこそ最も信頼し自らを信仰しんこうしてくれる人の一族を王族とした」

ミオアイコン

信仰心しんこうしんが強ければ強いほど封印は強固なものになるはずだった・・・」

ナイトアイコン

「はずだった・・・って事は・・・思ったように成らなかったのか?」

ミオアイコン

「そう・・・時と共に人々の信仰心しんこうしんうすれていった・・・結果が今のこの世界の状況って事」

ナイトアイコン

「その言い方だと色んな国で魔族まぞくが復活するかも知れないのか・・・?」

ナイトアイコン

「・・・・・・ところでこの国の信仰心しんこうしんは?」

トルエノアイコン

「・・・うすい・・・な・・・多分」(俺も全然・・・神とか気にしたこと無かったし・・・)

トルエノアイコン

流石さすがにちょっと責任感じてきたわ・・・」

ミオアイコン

「完璧な仕組みなんてあり得ない、遅かれ早かれ起こった事だと思う」

ミオアイコン

「何より私もある意味では神を信じてないから・・・」

ミオは少しうつろな目でそう語った。

そんな話を終えた頃にはすっかり日が暮れていた・・・。

ミオアイコン

「私が知っている事はこれで全部話したと思う」

おもむろに窓を開けたミオはふちに足をける。

ナイトアイコン

「ちょ、急にどうしたんだ?」

ミオアイコン

「少し出てくる」

ミオアイコン

「あと、部屋は好きに使って?私は外で寝るから」

そう言い残すとミオはそのまま窓から飛びりた・・・。

トルエノアイコン

脱走だっそう・・・手慣れてそーだな」

ナイトアイコン

「外で寝るからって・・・」

トルエノアイコン

「今時の女の子って意外とワイルドなのな・・・」

ナイトアイコン

「いや、そんな訳ない・・・どう見たって特殊とくしゅケース」

トルエノアイコン

「・・・だよ・・・な」

トルエノアイコン

「まぁ・・・それはそうと、アンタは何者なんだ?」

ミオが飛びりた窓から身を乗り出したナイトにたずねるトルエノ。

ナイトアイコン

「何者って?」

トルエノアイコン

「あのタイプの人間が普通の人間を近くに置きたがると思えなくてさ」

トルエノアイコン

存外ぞんがいアンタも特殊とくしゅな人間なんじゃね?」

ナイトアイコン

「俺は普通の人間だよ」

トルエノアイコン

「ホントかよ?」

ナイトアイコン

「そんなことで嘘はつかない・・・」

どこか険悪けんあくな2人を残し窓の外へけ出す小さな影があった・・・。

チェリーは真っ直ぐミオの走り去った方向へ追いかける。

道の先で唐突とうとつに足を止めるチェリー・・・その先から話し声らしきものが聞こえてくる。

ミオアイコン

「こんな所で会えるとは思っていなかった・・・」

第11話 うすれゆくモノ 中編(1)

不明アイコン

「私も・・・とても顔向けなど出来ない事は百も承知しょうちしています・・・」

ミオアイコン

「???」

不明アイコン

「ですがどうしても・・・これだけは・・・」

ミオアイコン

「何かあったの?・・・」

不明アイコン

「各地で起こっている魔族まぞくの活性化にオスクリダと言う教団が深く関わっているのは間違いないのですが」

不明アイコン

「そのオスクリダの拠点の1つがこの国にあるようなのです・・・」

ミオアイコン

「そう言えばその名前、別の場所で・・・」

ミオアイコン

「詳しい場所はわかる?」

不明アイコン

「南方の砂漠地帯にあるらしいのですが」

ミオアイコン

「分かった・・・少し調べてみる・・・」

リヴィアアイコン

「・・・私はいつも・・・頼ってばかり・・・本当なら私が」

ミオアイコン

「昔からこういうのは私の仕事だから・・・」

そんな話し声の元へやって来たチェリー。

ミオアイコン

「チェリー!?どうかしたの・・・?」

おどろいたように振り返るミオ、しかしその近くに話していた相手の姿は無かった。

チェリーアイコン

「ミオ・・・今誰かと話してたよね?」

ミオアイコン

「いえ」

チェリーアイコン

「絶対別の人の声がしてた・・・」

そう言いむくれているチェリー。

ミオアイコン

「・・・」

チェリーアイコン

「何で・・・何でいつも1人で何も言わずにどっか行っちゃうの?」

チェリーアイコン

「何で?何も相談してくれないの・・・?」

ミオアイコン

「・・・必要な時には話すよ」

チェリーアイコン

「それが今なの!」

そんなチェリーをかかえ上げミオは肩に乗せた・・・。

ミオアイコン

「はいはい」

チェリーアイコン

「流すな〜!!そう言うのも悪い所だからね!?」

そう言いながらミオの頭の上へ登りバタバタしているチェリー。

ミオアイコン

「・・・うん、悪い悪い」

チェリーアイコン

「聞く耳持ってよ〜!!!」

ミオアイコン

「・・・」(フェダリアの居場所・・・きっとヴァンの気配を辿たどれば・・・)

数時間後・・・

ナイトアイコン

「本当に帰って来ない・・・」

ナイトアイコン

「一応・・・この辺りは探したんだけどな・・・・」

トルエノアイコン

「そういやさっき、失踪しっそうだかなんだか言ってたな・・・」

トルエノアイコン

「まぁ、何かあろうとそうそう死にそうもねータイプだと思うが・・・」

トルエノアイコン

「何があった?」

ナイトアイコン

「事情は色々ありそうだけど・・・ある日唐突とうとつに姿を消しちゃって」

ナイトアイコン

「あるヤツからミオがこの付近にいたって話を聞いたから探しに来て今にいたってる」

トルエノアイコン

「自分から姿を消したヤツを探すってのもなかなかだねぇ・・・」

トルエノアイコン

「嫌われてるとかだったらどうすんの・・・?」

ナイトアイコン

「・・・!!?」(・・・そこまで考えてなかった・・・)

トルエノアイコン

「まぁ、見た感じ嫌ってはいなさそーだが・・・」

トルエノアイコン

「それに今の立場を考えりゃ、常に失踪中しっそうちゅうの存在ではあるしな・・・」

ナイトアイコン

「それどう言う意味なんだ・・・?」

トルエノアイコン

「・・・?」(・・・ひょっとして何も聞かされてないのか・・・?)

トルエノアイコン

「あ、いや比喩的ひゆてきなヤツさ」

トルエノアイコン

「ある意味、今も見事に失踪中しっそうちゅうだしな」

ナイトアイコン

「・・・なんか違かった気がするんだけど・・・」

ナイトアイコン

「それはそうと・・・第二王子なのになんで一緒に宿にまってるんだよ・・・」

ナイトアイコン

「帰った方が快適かいてきなんじゃないのか・・・?」

トルエノアイコン

「いや・・・ここに来る前に盛大せいだい兄貴あにきもめめたんだよ・・・」

ナイトアイコン

「気まずくて帰れない的な理由だったのか・・・」

トルエノアイコン

「オレにも色々あんだよ・・・」

第11話 うすれゆくモノ 中編(2)

その日の深夜・・・

ポツポツと音を立てはじめた雨音で目を覚ますナイト・・・。

思わず部屋を見渡すがやはりそこにミオの姿は無かった・・・窓を開けると同時に湿しめった土の匂いが飛び込んでくる・・・・。

ナイトアイコン

「雨か・・・」(フェダリアの様子も見に行かないと・・・フェダリアが第二王子をおそった可能性もあるから近付けたくないって話だったけど・・・)

ナイトアイコン

「やっぱり・・・フェダリアだけでも室内に・・・」

そんな時だった、突然ヴァンの声が頭の中でひびく。

ヴァンアイコン

「・・・」(ナイト、今すぐ来れるか?)

ナイトアイコン

「???」(なんでヴァンの声が聞こえるんだ・・・?)

ヴァンアイコン

「・・・」(一定の領域内にいれば使えるテレパシーだが・・・)

ナイトアイコン

「・・・」(初耳なんだけど・・・)

ヴァンアイコン

「・・・」(聞かれてないからな・・・これは色々制約も多いのだ・・・)

ヴァンアイコン

「・・・」(そんなことより早く来い・・・)

ナイトアイコン

「・・・」(元々行く気はあったけど・・・最終的に命令だし・・・)

しばらくして・・・レイテル近隣きんりんの森へやって来たナイト。

しとしとと降り続く雨の中を歩くナイトの目に写ったのは羽を休めるようにうずくまったヴァンの姿だった・・・。

ナイトアイコン

「何があったんだ?来れば分かるとしか言わないし・・・」

そう言われたヴァンは静かに立ち上がる・・・その足元にはフェダリアを抱えるように眠っているミオの姿だった・・・。

ナイトアイコン

「外で寝るとは言ってたけど・・・ここだったのか・・・!?」

ヴァンアイコン

「フェダリアを王子と同じ部屋にはめられないけど1人で外に置いとくのも可哀想かわいそうだからと動かなくてな・・・」

ヴァンアイコン

「嵐の象徴を持つ私に雨風を防げと言うのも難儀なんぎな話だろう?」

ヴァンアイコン

「それに・・・」

ナイトアイコン

「それに?」

ヴァンアイコン

「おそらくだがミオはかなり弱っている・・・出会った頃よりもな・・・」

ナイトアイコン

「それって・・・どう言うことだ?・・・怪我けがとかのなおりは早いんじゃ?」

ヴァンアイコン

「・・・確かに怪我けがすでに回復しているようだが・・・そういうものとは別の生命力が落ちているように見える」

ナイトアイコン

「・・・?」(そんなようには見えなかったけど・・・)

その言葉に疑問を感じつつ眠るミオに歩み寄るナイト・・・。

すると少し体を起こしたミオが眠たそうな目で見つめたずねる・・・。

ミオアイコン

「・・・何故なぜ、ここに?宿で休んでるんじゃ・・・」

ナイトアイコン

「いや・・・雨で寝つけなくってさ・・・」

ナイトアイコン

「そんな事より・・・」

ナイトアイコン

「外で寝るって・・・普段から雨の中寝てるのか?」

そう言いナイトが差し出した傘の上を雨粒がしたたり落ちる。

ミオアイコン

「・・・いや、普通は多少雨をけられる場所を選ぶ・・・」

ナイトアイコン

「それなら宿に戻ろうフェダリアと一緒に・・・折角せっかくただでまらせて貰ってるんだしさ」

ナイトアイコン

「1人増えるって伝えれば大丈夫だろ?」

ミオアイコン

「でも・・・」

ナイトアイコン

「フェダリアが暴れないか心配してるんなら見とけばいい・・・」

ナイトアイコン

「俺はさっきまで宿で休んでたから平気だし」

ミオアイコン

「?・・・さっき、寝つけなかったって・・・」

ナイトアイコン

「え・・・いやともかく平気だからさっさと帰ろう・・・このままだと全員風邪引くし」

そう言うとフェダリアをかかえ上げたナイトは傘をミオに差し出す。

ナイトアイコン

「流石にフェダリアかかえたまま傘をさすのはキツいからさ」

ナイトアイコン

「宿まで一緒に来てくれるよな?」

ミオアイコン

「・・・仕方がないな・・・」

そうナイトにうながされたミオは少し微笑ほほえみながらそう答えた。

しばらくして・・・宿に帰ってきたミオ達。

ナイトアイコン

「だいぶ降られたな・・・」

ナイトアイコン

「フェダリアの服は大丈夫そうだけど・・・」

そう言いながらタオルで水滴を拭き取っているナイト。

ナイトアイコン

「ミオは・・・びしょれだな・・・」

ミオアイコン

「私の服は元々れてたから・・・」

ミオアイコン

「でも流石さすがに肌に張り付いてる感じが気持ち悪い・・・」

ナイトアイコン

「いつも以上にタイトな感じに見える気が・・・」

ナイトアイコン

「・・・と、ともかく着替え貸して貰えないか聞いてくる」

そう言いナイトは足早に部屋を出ていった・・・。

ミオアイコン

「それは私が行けば・・・」

ミオアイコン

「・・・もういないんだけど・・・」

トルエノアイコン

「仲良いねぇ」

ソファでくつろぎながら突然声をかけてきたトルエノにおどろくミオ。

ミオアイコン

「トルエノ・・・さっきまでベットで休んでなかった・・・?」

トルエノアイコン

「人の気配がしたら普通気になるだろ?」

ミオアイコン

「それはそうね・・・起こしてしまったことは謝る」

トルエノアイコン

「別にそこはいいが・・・」

トルエノアイコン

「客人が増えてるみてえだな・・・」

ミオアイコン

「それは・・・私の知り合いの子なの・・・」

トルエノアイコン

「家族は・・・?」

ミオアイコン

「はぐれたみたいで・・・」

トルエノアイコン

「・・・なるほどなぁ・・・だが・・・」

トルエノアイコン

「その女の子にはオレ、見覚えがあるんだよな・・・」

ミオアイコン

「・・・どこで?」

トルエノアイコン

「・・・断言できねぇが」

トルエノアイコン

「オレがられた時に見た気がする」

ミオアイコン

「・・・!・・・そうなの・・・」(やはりここにいる訳には・・・)

ミオアイコン

「なら・・・やっぱりここにはいられないわよね・・・」

トルエノアイコン

「いや、そうは言ってねぇ」

ミオアイコン

「・・・え???」

トルエノアイコン

「アンタがらみなら訳ありじゃない方がすごいくらいだろうしな・・・」

トルエノアイコン

「話せる訳があるなら話してみな?」

ミオアイコン

「・・・実は・・・」

ミオは一通りの事情を説明した・・・。

トルエノアイコン

「なるほどな・・・特殊な血と・・・人間を傀儡くぐつに使う魔族まぞくか・・・」

トルエノアイコン

「確かに・・・それだったら納得いくわ」

トルエノアイコン

「アンタの強さとか」(3年前の塔の事件の理由もな・・・)

ミオアイコン

「今話した通りよ、私も本来ここに長居するべきではないのだけど・・・」

トルエノアイコン

「へぇ・・・なんでだ?」

ミオアイコン

「・・・え?」

トルエノアイコン

「俺はアンタがくる前から殺人予告きてた人間だぞ?」

トルエノアイコン

「それにさ、昼間にも来てただろすでに変な化け物が・・・」

トルエノアイコン

今更いまさら離れたって変わらねぇだろ?」

トルエノアイコン

「そこの子に関しては大人しく寝てるんだったら大丈夫だろうし?」

トルエノアイコン

「それに・・・」

ミオアイコン

「・・・?」

トルエノアイコン

「女子2人を雨の日の夜中に追い出すほどオレは鬼じゃねぇよ」

ミオアイコン

「女子?・・・ちなみに男子だったら・・・?」

トルエノアイコン

「・・・さて、どうだろうなぁ?」

ミオアイコン

「国を背負う人間としては・・・平等に扱ってあげてほしいモノだけど・・・」

そんな話の最中さなか、部屋に帰ってきたナイト・・・。

ナイトアイコン

「服・・・借りられたけど・・・・・・ってなんの話してたんだ?」

ミオアイコン

「ありがとう・・・」

ミオアイコン

「大した話じゃないから気にしないで」

ナイトアイコン

「そうなのか・・・?」

ミオアイコン

「私は着替えてくるから2人は先に寝てて・・・時間かかりそうだし」

ミオはそう言いナイトから服を受け取ると部屋を後にする・・・。

トルエノアイコン

「まぁ・・・れた服も悪かねーけどな・・・」

ナイトアイコン

「なんか不純ふじゅん・・・」

トルエノアイコン

「そうかぁ?純粋じゅんすいな感想なんだが?」

ナイトアイコン

純粋じゅんすいの方向性を疑ってるんだよ・・・」

トルエノアイコン

「お前がガキなだけかもよ」

ナイトアイコン

「やっぱ・・・絶対気が合わない気がする・・・」

トルエノアイコン

「まぁ、それは同感かな」

第11話 うすれゆくモノ 後編(1)

ナイトアイコン

「どこぞの王子様はさっさとベットでお休みになられればいいんじゃ」

トルエノアイコン

「いや、オレはソファで寝るわ」

トルエノアイコン

「たまにはソファで寝るっていう経験してみたいんでね」

ナイトアイコン

「流石にこの国の王族をソファで寝かせられる訳ないだろ・・・ベットで寝るか城で休むかしてくれ・・・」

ナイトアイコン

「俺はフェダリアの様子を見てなきゃいけないからソファでもいいし」

トルエノアイコン

「じゃあ、2人で1組で使うか」

トルエノアイコン

「そっちの小さいレディは頼んだぜ」

ナイトアイコン

「いや、それなら女子同士でかためろよ」

トルエノアイコン

「そうなるとオレらが一緒?・・・」

トルエノアイコン

「・・・オレはお前とい寝はしたくねぇな・・・」

ナイトアイコン

「べ、別に俺たちが一緒に寝なくていいだろ・・・」

ミオアイコン

「なんか・・・?分からないけど仲・・・良いのね・・・」

そう言い部屋をのぞき込んでいるミオ・・・。

トルエノアイコン

「お前のせいでメチャクチャ誤解されてるじゃねぇか・・・」

ナイトアイコン

「俺のせいなの?」

トルエノアイコン

「て言うか・・・思ったより似合ってるじゃんその服」

ミオアイコン

「そうかな・・・着慣れて無いから私にはよくわからない・・・」

ナイトアイコン

「俺も似合ってると思うけど・・・」

ミオアイコン

「・・・ありがと、雨の中・・・むかえに来てくれたことも・・・」

ナイトアイコン

「あ・・・あれは、ただフェダリアの様子を見に行ったらたまたま見つけただけで・・・」

ミオアイコン

「そっか・・・」

ミオアイコン

「で・・・ナイトはトルエノと2人でベット使うの?」

ナイトアイコン

「それは誤解!!」

ナイトアイコン

「そんなことするぐらいなら俺は床と仲良くする・・・!」

ミオアイコン

「それなら私もベットで寝ることでのこだわりは無いから床とかソファでも・・・」

ナイトアイコン

「ミオは借りた服着てるだろ・・・床で寝ちゃダメだろ普通・・・」

ナイトアイコン

「あと・・・何か頼む・・・男をたてさせてくれ・・・」

ミオアイコン

「・・・え・・・・よくわからない・・・」

トルエノアイコン

「まぁ・・・やりたいようにさせてやれば良いってことだよ・・・」

数時間後・・・。

床でスースーと寝息を立てるナイト。

ミオアイコン

「ほ・・・本当に床で寝てしまったのか・・・」

ミオは布団の1枚をナイトにゆっくりとかけた。

ふと隣のフェダリアに視線を向けた後、再びナイトに視線を戻す・・・。

ミオアイコン

「あの時・・・止めてくれて・・・来てくれてありがとう・・・」

ミオアイコン

「びっくりしたけど・・・何故なぜだか少しうれしかったんだ・・・喜んでちゃいけないのに・・・」

ミオアイコン

「でも・・・私はやっぱりまた・・・巻き込んでしまったのかな・・・」

ナイトアイコン

「・・・別に巻き込まれたとか思ってない・・・」

ミオアイコン

「・・・!!!?」

ミオアイコン

「お、おきてたの・・・?」

ナイトアイコン

「い、いやフェダリアのこともあるしちょっとだけ気を張ってたっていうか・・・」

ナイトアイコン

「・・・だまっておけなかったっていうか・・・」

ナイトアイコン

「俺の意志で勝手についてきただけだから、巻き込まれたとか思わない」

ナイトアイコン

「それに・・・ちょっと本音が聞けて良かったかな」

ミオアイコン

「・・・さっきの・・・全部忘れて」

ナイトアイコン

「それは多分無理だな」

ミオアイコン

「・・・余計なことはしゃべるもんじゃないわね・・・」

ナイトアイコン

「余計なのか?」

少し笑いながらたずねるナイトから視線をらすミオ。

ミオアイコン

「余計なものは余計なのよ・・・・・・もう寝る」

そんな会話の後、再び体を休めるのだった・・・。

翌朝・・・。

トルエノアイコン

「なんか・・・重い・・・」

なぞ圧迫感あっぱくかんで目を覚ましたトルエノ・・・。

ミオアイコン

「あ、待ってたわよ」

ミオアイコン

「ヴィドゥルがね」

トルエノが目を開くとそこには黒いライオンの顔が・・・。

トルエノアイコン

「な、何だこの状況!?」

ミオアイコン

「さっきまでちゃんとベッドの横でお座りして待ってたんだけど・・・」

ミオアイコン

「待ちくたびれたみたいで・・・」

トルエノアイコン

「いや前足しか乗ってないけど圧死しそうなんだが!傷が開くわ」

ヴィドゥルアイコン

「わぁ、本当だ話聞いてくれそう!」

トルエノアイコン

「どこら辺でその判断にいたったんだ!?」

ミオアイコン

「ごめんなさい、貴方あなたなら彼のこと理解してくれるかもしれないって思って」

ミオアイコン

「昨日、会ってみることをすすめたんだけど・・・」

ミオアイコン

貴方あなたに話をする前に先に来てしまった・・・」

ヴィドゥルアイコン

「このベットって面白い!ねる、ねるよ!」

トルエノアイコン

「分かった聞く、話聞くからあばれんじゃねぇ」

第11話 うすれゆくモノ 後編(2)

30分後・・・。

トルエノアイコン

「とんだ 起床きしょうだった・・・」

ナイトアイコン

「ははは・・・お疲れ様」

トルエノアイコン

「笑い事じゃねぇ・・・」

トルエノアイコン

「しかし・・・城の地下にあんなのが住んでたのか・・・」

トルエノアイコン

「それに仕掛けが動いてるのはヴィドゥルが放ってる電気エネルギーだったとは・・・」

トルエノアイコン

「仕掛けの物騒さとは真逆に無邪気むじゃきすぎるし・・・」

ミオアイコン

「悪い子じゃなさそうなの」

ミオアイコン

「記憶が曖昧あいまいみたいだし城の方に何かしらの記録とか残ってるか貴方あなたに聞こうと思ってたんだけど・・・」

トルエノアイコン

流石さすが合成獣キメラの飼育記録は見たことねぇな・・・」

ミオアイコン

「ライオンかヤギか蛇あたりの可能性も・・・どの頭の記憶かは断定できないし・・・」

ミオアイコン

「一番有力なのはライオンだと思うけど」

トルエノアイコン

「なんか王家をまもってるって言ってたな・・・あれが記憶から来る行動なら昔関わりがあった可能性は高いが」

トルエノアイコン

「・・・ヤベェ・・・よくよく考えると普通に人以外としゃべってたわ・・・」

ナイトアイコン

合成獣キメラってことは普通の生き物じゃないんだよな・・・?」

ミオアイコン

「少なくとも誰かが意図的に生み出したんでしょうね・・・」

ナイトアイコン

「何でわざわざそんなことするんだろうな・・・」(人間でも同じ事するのか・・・?)

ミオアイコン

「それはやった人間にしか分からない・・・」

トルエノアイコン

「何にしてもだ、ウチの国で勝手に実験をされたとかじゃ洒落しゃれになんねぇ」

トルエノアイコン

「だからアイツの件はオレの方で調べとくが・・・」

トルエノアイコン

「それとは別にこっちにも問題があってな・・・悪いがそっちを手伝ってもらえねぇか?」

ミオアイコン

「問題・・・?」

トルエノアイコン

兄貴あにきの事・・・って言うか」

トルエノアイコン

「黒いローブの連中を覚えてるか?」

ミオアイコン

「オスクリダって言う宗教団体しゅうきょうだんたいの人達・・・?」

トルエノアイコン

「そう・・・あの目の前で化け物になった連中・・・」

トルエノアイコン

「実はそのオスクリダの連中が何故か砂漠の遺跡いせき頻繁ひんぱんに出入りしてるのが確認されていた・・・」

ミオアイコン

「・・・砂漠・・・ね」

ミオアイコン

「で・・・それがお兄さんに何の関係があるの?」

トルエノアイコン

「ある日を境に兄貴あにきの様子がおかしくなっていったんだが」

トルエノアイコン

「そのある日ってのに兄貴あにきめずらしく仕事以外で外出届けを出していてな・・・」

トルエノアイコン

「帰ってきた団員も怪我けがをしていて重度の疲労状態ひろうじょうたいだったらしい」

ミオアイコン

「で、お兄さんは?」

トルエノアイコン

兄貴あにきも多少の怪我けがはあったみたいだが割とピンピンしてたらしい」

ミオアイコン

「・・・もう流石さすがとしか言いようが無いわね・・・」

トルエノアイコン

「だがな・・・その日から武器庫に見知らぬ斧が置かれるようになった」

ミオアイコン

「・・・あの斧か・・・」

トルエノアイコン

「一応当日に兄貴あにきと行動していた団員に聞いたがどうも歯切れが悪い」

トルエノアイコン

「取りえずは周辺への聞き込みで遺跡いせきに行かなくてはいけない用事があるってらしてたらしいから」

トルエノアイコン

遺跡いせきに行ったんだとは思うが」

ミオアイコン

「・・・と言うことは手伝いってのは砂漠の遺跡調査いせきちょうさってこと?」

トルエノアイコン

「そう言うことだ、話が早くて助かる」

ナイトアイコン

「ちょっと、待て」

ナイトアイコン

「そんなよく分からないことが起こった場所に行かせるのか?」

トルエノアイコン

「あぁ、その意見はごもっともだ」

トルエノアイコン

「だが現状、騎士団の連中を派遣したとしても無事で済む確率はもっと低い」

トルエノアイコン

「だったら強くて最初から知識のありそうな奴に頼むのが得策だろう・・・」

ミオアイコン

「分かった・・・行ってくる」

ナイトアイコン

「・・・!?」

ミオアイコン

「収穫があるかは分からないけど」

ミオアイコン

貴方あなたには借りがあるし」

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「ホント、助かるぜ」

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「危ないのが分かってるんならお前も来いよな・・・」

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「オレだって出かけてーんだけどな」

ナイトアイコン

「出かけるって・・・別に遊びに行くんじゃ無いんだぞ・・・・・・」

ナイトアイコン

「・・・やっぱ来なくていいや・・・」

ミオアイコン

「ただ・・・あんまりお兄さんにあの斧使わせない方がいいと思う・・・」

ミオアイコン

「いっそ行く前に腕斬り落としておくとか・・・?」

ミオアイコン

「五分五分で正気に戻るかも・・・?」

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「たぶん、兄貴あにきが正気に戻ってもアンタが牢獄ろうごくに逆戻りする事になるからオススメはしねぇよ・・・?」

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「あと、五分五分でやるけじゃねぇだろ・・・それ」