ストーリーアイコンSTORYストーリー

第10話 愚者ぐしゃの道 前編(1)

残された道を進む事を心を決め足をみ出したミオ。

その後ろから重さのある足音がひびいてくる・・・。

ミオアイコン

「・・・あの魔族デーモンの位置・・・」(切断された箇所)

ミオアイコン

「頭の部分は考えなくても良い・・・問題は」(足元と胴体部分)

そう考えてる間に壁のうすみぞからかすかにあかりを反射し光る何かが見えた・・・。

回転し始めた刃は下段、中段、上段でそれぞれ時間差があるようだった。

下段と中段の刃の間を決死の覚悟でくぐり抜けたミオだったが着地しようとした地面に不自然に穴が一列並んでいる・・・その光景にすぐさま手を付き素早く前転するミオ。

その足が通り過ぎた直後に勢いよく槍が穴から飛び出してきた・・・。

ミオアイコン

「危なかった・・・」(殺す気満々な造りの場所・・・)

オスクリダデーモンアイコン

「ギャルルゥゥ」

飛び出した槍によっておりのようになっている向こう側から魔族デーモンが手を伸ばしている・・・。

どうやらミオが通り過ぎた後に刃を叩き折り追って来たようだ。

ミオアイコン

「・・・長く持ちそうには無い」

その場を後にししばらく歩き進めるミオは開けた空間に出た。

辺りを見渡しながら部屋の中央に差しかかった時だった・・・。

ガタンっと音をたて出口と入口が閉ざされてしまう。

部屋の壁にも何とも嫌な予感のぎる穴が無数に空いている・・・。

すると辺りからギリギリという音がひびいたかと思うと壁から何かが飛び出しうでかする。

思わず目で追うミオ、その目に映ったのはカランカランと音を立て地面をすべるナイフだった・・・。

ミオアイコン

「・・・ナイフ?」(どんな技術してるのよ・・・)

そのナイフの重さでなのか・・・何かの仕掛けが作動し四方八方からギリギリと言う音がひびき渡る・・・。

そんな中ミオが具現化したのは桜模様の扇子せんすだった・・・。

おうぎあおぐ度に花びらが部屋を満たしていく・・・。

ミオアイコン

天崩あまくずし・・・!」

そう言い舞うのと同時に一斉いっせいに打ち出されるナイフ・・・しかしそのナイフは周囲にただよっていた思念体しねんたいの花びらにさり止まっている。

その後ミオがおうぎをパチッと閉じるとただよっていた花びらがふっと消え、止まっていたナイフが次々と地面へと落下する・・・。

そんな中、唐突とうとつに放たれたナイフ・・・どうやら古い設備だった為に引っかかっていた最後の1本だった。ミオはそのナイフを扇子せんすで弾き回転しながら再び降ってきたナイフをつかながめている。

ミオアイコン

「このナイフ・・・普通のナイフじゃない・・・」

どうやらこの部屋の仕掛けには特殊とくしゅな力が宿やどっているようだ。

その力があったからこそ通常の刃物では傷をつける事も難しい魔族デーモンの体を切断できたのだろう・・・。

そんなミオの背後から物音がひびいてくる・・・それは鉄が地面を叩き、落ちる音だった。

その音に振り返ったミオだがそこには敵の姿はなく爪で切りかれた入口の鉄格子てつごうしだけだった・・・。

ミオアイコン

「後ろにはいない・・・ってことは・・・?」

見上げた瞬間しゅんかん、目に映ったのは赤い2つの瞳だった・・・。

降って来た影に押し倒されながらも忍刀でみつかれるのを防いでいるがすでにヒビが入り明らかに持ちそうにはない・・・。

その上にミオを押さえている魔族デーモンの爪の中の1本が肩にさっている・・・。

ミオアイコン

「・・・」(よだれが流れてこなくてよかった・・・)

以外にも余裕よゆうがあるようだ・・・。

突然に魔族デーモンがミオの上から飛び退く・・・。

ミオアイコン

「・・・悲しい姿ね・・・理性すら働かない・・・」

飛び退いた魔族デーモンはなんとミオの血のついたみずからの指を食べている・・・。

ミオアイコン

「・・・」(理由の想像はつく・・・人間から魔族デーモンへ変化した者は変化した時のエネルギーの消費・・・そして人とは比べものにはならない食欲・・・)

ミオアイコン

「・・・」(それらをおぎなうように手当たり次第に捕食ほしょくしようとする・・・でも覚醒後思ったようにエネルギーの摂取せっしゅができなかった結果・・・)

ミオアイコン

「私の血のついた指ごと食べたのね・・・」(空腹のために正常な判断ができなくなったか・・・)

ミオアイコン

「・・・あれが・・・神と並ぶ力を持った一族の成れの果て・・・?」(知能も無くしたの・・・?貴方あなた達は・・・)

そうつぶやくミオだが・・・あまり状況は良いとは言えない。

血を摂取せっしゅした為か牙はするどく伸び変異をはじめているようだ・・・。

さらに食欲の増したはげしい攻撃で部屋のあちこちが崩壊ほうかいしている。

部屋中散らばるナイフを投げ応戦し視覚を奪うことに成功したミオは崩壊ほうかいした壁の穴から通路に抜けた、だが血の匂いを追って再びせまい通路で飛び掛かって来た魔族デーモン巴投ともえなげをし受け流すも直ぐさま体勢を立て直しミオの方へ向き直っている・・・。

立ち上がり再び具現化した忍刀をかまけ出したミオ。

ミオアイコン

「!!!?」

ガンっという音と共に魔族デーモンの足音が突然消える・・・。

警戒けいかいしながら再び歩み出したミオの目の前に振り子のように刃が通り過ぎた・・・。

しかしその次の刃は何かにさり動かなくなっているようだ・・・。

ミオアイコン

「さっきの魔族デーモンに反応して仕掛けが作動したのね・・・」(結果的には敵は減ったけど・・・)

ミオアイコン

「ここの仕掛け・・・流石にコリすぎじゃない・・・?」

第10話 愚者ぐしゃの道 前編(2)

ミオアイコン

「取り えず地下から出ないと・・・」

少し歩き回り道を探すミオだが先につながっていそうな場所はここしか無いようだった・・・。

タイミングを測り飛び込み刃の振り子をくぐったミオは着地し顔を上げる、しかしそこにはライオンとヤギの頭を持ち尾には蛇の頭を持つ獣が座っていた・・・その背には黒く大きなつばさが生えている。

ミオアイコン

「この国・・・変わった番犬・・・?番猫を飼っているのね・・・」

その姿に思わず刀をかまえたミオだったが直ぐにその刀を下ろした・・・。

ヴィドゥルアイコン

「君・・・普通の人間じゃないよね?」

ヴィドゥルアイコン

「いや〜初めてだよ・・・ここ抜けて来た人!」

ミオアイコン

貴方あなた合成獣キメラ・・・よね?」

ヴィドゥルアイコン

「僕はこの城の王家の守護精霊しゅごせいれいっぽいやつ!」

ミオアイコン

「っぽいやつ・・・?」

ヴィドゥルアイコン

「僕は地下の通路の見張りをしてるんだ・・・空間に誰か入ったら分かるようにしてたら普通じゃない気配が3つもあったからビックリしたよ!」(思わず放電しそうだった・・・)

ヴィドゥルアイコン

「で、来てみたら君がいたって訳・・・」

ミオアイコン

「王家のって言い方的に家系をまもっているってことよね?個人じゃなくて・・・」

ミオアイコン

「ところで貴方あなた名前はあるの?」

ヴィドゥルアイコン

勿論もちろんあるよ!僕の名前はヴィドゥル」

ミオアイコン

「ヴィドゥル・・・貴方あなたはこの城のことくわしい?」

来た道を振り返り考えた後に言葉を続ける。

ミオアイコン

「お願いがあるんだけど・・・」

ミオアイコン

「外に出る道を教えて欲しいの・・・」

ヴィドゥルアイコン

「教えても良いけど・・・その前に遊んで!」

ミオアイコン

「・・・」(遊んだら死にそう・・・)

ヴィドゥルアイコン

「くれる訳・・・ないよね・・・」

ヴィドゥルアイコン

「・・・じゃあ僕の質問にも答えてよ?」

ヴィドゥルはミオに思いっきり近づける・・・。

ヴィドゥルアイコン

「君・・・何者?普通じゃないし・・・何より・・・」

ヴィドゥルアイコン

魔族まぞくおそわれたはずなのに生きてるし・・・あの仕掛けの中この部屋まで来てる・・・」

そう言いミオの足に軽く大きな前足を乗せるとクンクンとにおいをいでいる・・・。

ヴィドゥルアイコン

「それに・・・なんか知ってる気がするんだよね・・・においとか顔とか・・・」

ミオアイコン

「あぁ、それは・・・」

ミオが何かを言いかけた時だった・・・。

ミオアイコン

「!!」(この気配は)

ヴィドゥルアイコン

「!!?」

ヴィドゥルアイコン

「どうやら地下の魔族等やつらより強いのが街にいるみたいだね・・・」(仕方ないや・・・)

するとヴィドゥルは急に奥へ歩き出す・・・。

ヴィドゥルアイコン

「こっち来なよ・・・道、教えてあげるから」

そうして辿たどり着いた場所は行き止まりのように見えた。

ヴィドゥルがその行き止まりになっている壁の下にある地面に前足で軽くれた直後にその目の前の床が音をたて抜けた。

ヴィドゥルアイコン

「この下は地下水路なんだ」

ヴィドゥルアイコン

「そこを抜けたら城の外に出られるよ」

ヴィドゥルは振り返りそう言った・・・。

ミオアイコン

「私が質問に答えるまで教えてもらえないと思ってた」

ヴィドゥルアイコン

「あの質問はただ僕が興味があったから聞いただけ」

ヴィドゥルアイコン

「それに・・・僕が思い出せば良いだけの話さ・・・」(この姿になる前のこと・・・)

ヴィドゥルアイコン

「それより君が早く出たがっている訳も理解できたしね」

そう言って穴に飛び降り振り返るヴィドゥル。

ヴィドゥルアイコン

「早くおいでよ・・・ここは魔物も住み着いてるから出口まで送るよ」

ミオアイコン

「・・・ありがとう」

ミオアイコン

「・・・」(外から感じたあの気配は・・・あれは間違いなく・・・)

ミオは無言のまま穴に飛び降りヴィドゥルとミオの姿は水路の奥へ消えて行く。

ミオが水路を歩いている頃・・・。

路地で倒れている兵士とその近くにはエクティスの姿があった・・・。

その様子を屋根の上でこっそり様子をうかがっている人影。

ナイトアイコン

「チェリー・・・さっきの人は・・・?」

そう下を向きたずねるナイト・・・その問いにチェリーはただ無言で首を横に振る・・・。

ナイトアイコン

「そうか・・・」

チェリーアイコン

「応急処置はしたけど・・・多分無理・・・」

2人はしばらく無言で路地の様子をながめていた・・・。

ナイトアイコン

「さっきから気になってたんだけど・・・下にいる奴等やつらが探してる犯人の特徴とくちょうって・・・俺だよな・・・?」

チェリーアイコン

「そだね」

ナイトアイコン

「そだねって・・・えらく簡単に言ってくれるな・・・」

ナイトアイコン

「コレ結構な問題だと思うんだけど・・・」

ナイトはこの状況に思わずめ息をらす。

ナイトアイコン

「下の奴が話てる感じからしてミオは逃げたみたいだし・・・俺達も少し離れ・・・」

ナイトは路地に背を向け去ろうとした時だった。

騎士アイコン

「エクティス様!こんな所におられたのですね!」

第10話 愚者ぐしゃの道 中編(1)

突然ひびいたその声に思わずせるナイト・・・。

どうやらナイト達が見つかった訳では無いようだが・・・何やら大切な話のようだ。

エクティス

「何だ?次から次へと・・・」

そう言ったエクティスだが団員の話を聞くとぐ馬に乗りその場から走り去った。

団員が小声で伝えた内容をナイト達がうかがい知る事は難しい・・・。

ナイトアイコン

「さっき話題になってたトルエノがおそわれたらしいな・・・」

そう思われたが特に問題は無かったようだ。

チェリーアイコン

「でもミオが助けたみたい」

ナイトアイコン

「その後、黒い化け物が現れて・・・」

ナイトアイコン

「化け物と交戦中に一部が崩落ほうらくして地下に落下・・・両方とも消息は不明」

ナイトアイコン

「そんな話だったな・・・」

チェリーアイコン

「ミオ・・・大丈夫かな・・・」

ナイトアイコン

「何となく・・・無事な気がする・・・信じたいだけかも知れないけど・・・」

ナイトアイコン

「地下に降りられる場所が分かれば」

チェリーアイコン

「って言うか・・・よく聞こえたね」

チェリーアイコン

「人間の耳の性能ってそんなに良かったっけ?」

ナイトアイコン

「あぁ、俺・・・ヴァンと契約けいやくしてから目と耳が良くなったみたいなんだよな」

そんな話をしていた時だった、2人の視界のはしを何かが横切る。

思わずそちらを振り返ったがそこには誰もいない・・・。

チェリーアイコン

「いた!」

そう言い下の道へ飛び降りるチェリーを追いかけ屋根から飛び降りるナイト。

路地で曲がる人影を見つめ立ち止まるチェリー・・・その姿はナイトにも見覚えがあるものだった・・・。

チェリーアイコン

「フェダリア!」

チェリーが追いかけさけんだ時・・・。

フェダリアが立ち止まり見つめる先にたたずむ男が視界に映る。

青白い肌と黒い翼を持つ男は辺りを見渡し言う。

ヴェルディスアイコン

可笑おかしいですね・・・確かに近くに人間のような気配があったのですが・・・」

ヴェルディスアイコン

「姿が見えませんね・・・」

確かにフェダリアを追いかけていたナイト達の姿はそこには無い・・・。

ヴェルディスの気配に気付き物陰ものかげに隠れた2人・・・。

チェリーアイコン

「ヤッパリ・・・間違いない」

チェリーアイコン

「ヴェルディス・・・」

そう小声で話すチェリー・・・。

ナイトアイコン

「ヴェルディスって確か・・・」

ヴェルディスアイコン

「・・・出来れば姿を見せて頂けないでしょうか?」

ヴェルディスアイコン

「それとも・・・こちらから会いに行った方がよろしいですか?」

ヴェルディスアイコン

「ねぇ?」

ナイトアイコン

「!?」

肩に冷たい何かがれた・・・それはまぎれもなくヴェルディスの手だった・・・。

つかまれた左手を背につけるように壁に押し付けられるナイト。

ヴェルディスアイコン

「おや、これはなつかしい顔ですね・・・」

そうチェリーを見て言うと不気味ぶきみ微笑ほほえみを浮かべる・・・。

ヴェルディスアイコン

貴女あなたが居ると言うことは・・・当然・・・契約者けいやくしゃも居ると言うことですよね・・・?」

ヴェルディスアイコン

「しかも貴女あなたと一緒に行動している彼も当然・・・知り合いということですね・・・?」

ヴェルディスアイコン

「フフ・・・これは楽しくなりそうです・・・」

ヴェルディスアイコン

貴女あなたは先に向かってください・・・」

そう言われたフェダリアは無言のままけて行ってしまう・・・。

すると思い出したようにナイトに問いかけるヴェルディス。

ヴェルディスアイコン

「そういえば・・・何故なぜ隠れていたのですか?」

ヴェルディスアイコン

「もしや・・・わたくし恐怖きょうふを感じさせてしまったのでしょうか・・・?それは悲しいですね・・・」

ヴェルディスアイコン

わたくし・・・魔族一優しいと自負していたのですが・・・」

ナイトアイコン

「・・・!?」(絶対・・・嘘だ)

ヴェルディスアイコン

「紫のおじょう さんの居場所が知りたいのですが・・・そうですね・・・」

すると何かをひらめいたように笑った・・・。

ヴェルディスアイコン

「答えが出るまで彼の指の骨を一本ずつ折って行くのはどうでしょう!」

ヴェルディスアイコン

「我ながら人道的な拷問ごうもんだと思うのですが?」

ナイトアイコン

「人道的な拷問ごうもんってなんだ・・・?」

チェリーアイコン

「こ、コイツ頭おかしいよ・・・」

ナイトアイコン

「それは・・・最初から分かってるよ・・・」

そう言い右手で剣を具現化ぐげんかするナイト・・・。

ヴェルディスアイコン

「なかなか面白い事をしますね」

ヴェルディスアイコン

「この状況で武器を出すとは・・・」

ヴェルディスアイコン

「ですが悪い事は言いません・・・その武器はしまった方が身のためですよ・・・?」

ナイトアイコン

「俺もやってからコレは失敗だと思った・・・」

少し残念そうに言ったナイトは剣からパッと手を離した。

しかしそうやって手を離したナイトは指を引っ掛けるようにしクルッと剣を回転させ逆手に素早く持ち替えるとヴェルディスの足を目掛け思いっきり突き立てる。

攻撃を寸前で飛び退きかわしたヴェルディスだがその足には剣のまとう風により複数の切り傷を負っている・・・。

ナイトアイコン

「最初から逆手で具現化ぐげんかできるようにしておくべきだったかなって・・・な」

第10話 愚者ぐしゃの道 中編(2)

そう向き直り剣をかまえるナイト。

ヴェルディスアイコン

「やはり・・・貴方あなたを生かしておくのは後々邪魔じゃまになると言う感は間違いなさそうですね・・・」

そのしばらく後・・・街の中のとある家の扉がゆっくり開く。

ミオアイコン

「地下水路がこんな所に続いてるなんて・・・」

ヴィドゥルアイコン

「僕はこの先には行けない・・・皆んながこわがるから・・・」

少しさみしそうにしているヴィドゥルを優しくきしめるミオ。

ミオアイコン

「今日は遊んであげられないけど、また今度時間があったら」

ヴィドゥルアイコン

「本当!?」

ヴィドゥルはうれしそうに尾をっている。

ミオアイコン

「えぇ、だからそんなにさみしそうにしないで?」

ミオアイコン

「それと・・・2番目の王子に会ってみたら良いと思う」

ミオアイコン

「彼ならきっと気づいてくれると思うから・・・」

そう言うとミオはヴィドゥルからサッと離れ扉から出て行った。

閉まった扉をしばらく見つめその場を後にするヴィドゥル。

その後ろ姿は何処どことなくさみしげだった・・・。

街を走り抜けとある場所に辿たどり着いたミオ・・・。

ミオアイコン

何故なぜ・・・?」

ミオアイコン

「・・・こんな所に居るの・・・?・・・フェダリア・・・」

1年前に目の前で亡くしたはずの少女の姿に困惑こんわくするミオ。

ミオアイコン

「・・・あの子は確かにあの時に・・・」

ヴェルディスアイコン

「そうです・・・確かにあの時死にました貴女あなたが関わったばかりに・・・」

ミオアイコン

「・・・」

ミオアイコン

「・・・何のために・・・?・・・フェダリアに何をしたの!?」

ヴェルディスにりかかるミオをさえぎるように飛び込んできたフェダリアに思わず飛び退くミオ・・・。

ヴェルディスアイコン

「何を怒っているのでしょう・・・?」

ミオアイコン

貴方あなたが何の理由わけもなく人間を蘇生そせいなどするはずが無い・・・それに・・・」

ミオアイコン

「気配も・・・もう人のものじゃない・・・」

そう言うミオの目の前に立つフェダリアの手には血の付いたナイフがにぎられていた・・・。

ヴェルディスアイコン

ひどいですね・・・気配が人じゃないだなんて・・・」

ヴェルディスアイコン

「大好きなミオおねえちゃんにそんなこと言われたら・・・泣いてしまうかも知れませんよ・・・?」

ヴェルディスアイコン

「今はただ心を持たない人形・・・私の助手ですよ・・・でも何故なぜでしょうねぇ」

ヴェルディスアイコン

「おかしな事に王子を殺しそこなって帰ってきたんですよね・・・?」

ミオアイコン

貴方あなた・・・そんな事をさせるために・・・フェダリアを・・・」

ヴェルディスアイコン

「フェダリアの魂が肉体に留まっているのでしょうか?なかなか人を殺してはくれないんですよ・・・」

ミオアイコン

「・・意識がかすかにでも残った状態で操られているとでもいうの?・・・」

ヴェルディスアイコン

「そう考えると不愍ふびんですね・・・」

ミオアイコン

「・・・」

ヴェルディスアイコン

「ですが私には関係ないので使えるものは使わせていただきますが・・・」

ヴェルディスアイコン

「どうします?このまま放置すればフェダリアはいつか人を殺すことになリますよ?」

ミオアイコン

「・・・」

ヴェルディスアイコン

犠牲者ぎせいしゃも増え続け・・・フェダリアも苦しみ続ける・・・」

ヴェルディスアイコン

「ですが、今ここで貴女あなたがトドメを刺してあげればこれ以上苦しまないかも知れません・・・」

ミオアイコン

「・・・そんなことのためだけに・・・」

ミオアイコン

「私にトドメをささせるためだけにフェダリアを利用していたの・・・?」

ミオアイコン

「でもそれが分かっていて私が貴方あなたの思い通りにすると思う?」

ミオアイコン

貴方あなたをここでれば終わらせられる話でしょ・・・!」

そう言い再びりかかるミオの前に立ちはだかるフェダリア・・・。

フェダリア1アイコン

「・・・」

ミオアイコン

「・・・フェダリア」

ヴェルディスアイコン

「やはり戦えませんか?」

ヴェルディスアイコン

「ではこうしましょう・・・目の前の人間をり伏せ街の人間を全員殺して来て下さい・・・」

ヴェルディスアイコン

「たとえ殺すことを拒絶きょぜつしていようとも怪我人けがにんが大量に出ればいずれ死人は出るでしょうし」

ミオアイコン

「・・・!?」(急に動きが・・・!)

次の瞬間しゅんかん・・・腕に傷が刻まれている・・・。

ミオアイコン

「・・・どうにか動きを・・・止めないと・・・」

幾度いくどおそい掛かる斬撃ざんげきを刀で受け硬直こうちょくする2人・・・。

ミオアイコン

「フェダリア・・・本当の貴女あなたを取り戻して!」

フェダリア1アイコン

「・・・」

そう声をかけるミオだが特に反応を返すことはない・・・。

ミオアイコン

「・・・無理なの・・・?」

たがいにはじくように後方へ飛び退いた両者が再び刃を交えようとした時だった・・・2人の間に飛び込んできた影がり抜かれるミオの刀を受け止めた。

ナイトアイコン

「その決断待った!」

第10話 愚者ぐしゃの道 後編(1)

そこで刀を受け止めていたのはナイトだった・・・。

ミオアイコン

「ナイト!?何故なぜここに?・・・」

ナイトはもう片方の手でフェダリアの手をつかみ持っていたナイフは風ではじき飛び地面をねるように落下した・・・。

ナイトアイコン

「話すと長いんだよな・・・」

そんなナイトを見て少しおどろいたように話すヴェルディス・・・。

ヴェルディスアイコン

「まさか・・・あの魔族デーモン達を倒してくるとは・・・」

ナイトアイコン

手下てしたをけしかけて急に姿を消したから余程よほど気になることがあるんだろうって急いで探した甲斐かいがあったな」

そんなナイトの姿に武器を引いたミオ・・・。

つかまれた手を振りほどこうとするフェダリアに対してナイトがとった行動は意外なものだった・・・。

ナイトアイコン

「ちょっと手荒てあらだけど・・・我慢がまんしてくれ・・・」

そう言いフェダリアの腹部をてのひらで強くたたいたその瞬間しゅんかん・・・わずかな桜の花びらが舞う。

ミオアイコン

「・・・!!?」

ミオアイコン

掌打しょうだ・・・」(でも何故なぜ花びらが・・・)

ナイトアイコン

「あのまま手にかける事になればアイツの思うつぼだ」

ナイトアイコン

「それに・・・動きを止めればアイツの思い通りにはならない・・・だろ?」

そう言いながら意識を失ったフェダリアをかかえたナイト・・・。

ヴェルディスアイコン

「意識を失わせたところで体を直接あやつれば関係ないですよ・・・?」

ヴェルディスアイコン

「・・・?おや・・・できないようですね・・・」

ヴェルディスアイコン

「・・・一体何をしたんですか・・・?」

ナイトアイコン

「フェダリアだけじゃ、お前の支配に勝てない・・・なら勝てるように力を渡してやればいい」

ミオアイコン

「・・・どういうこと・・・?」

ナイトアイコン

「ミオがいなくなる前に墓に置いて行った桜があっただろ?」

ナイトアイコン

「あれ・・・消えずにずっと残ってたんだ・・・」

ナイトアイコン

「その一部をさっきフェダリアに打ち込んだ」

ミオアイコン

「・・・それって・・・?」

ナイトアイコン

「武器を具現化ぐげんかする時に必要なのは強い思いであり意志だとしたら・・・」

ナイトアイコン

「あの桜は武器とは別の思いが入ってたんじゃないか?」

ミオアイコン

「・・・!・・・確かに・・・武器としては具現化ぐげんかしていなかった」

ミオアイコン

「・・・ただ少しでも亡くなった人のせめてものとむらいをしたかったのと・・・」

ミオアイコン

「これからも魔族デーモンと戦い続けることのちかいとして・・・?」

ナイトアイコン

「それがあの桜の正体ならフェダリアの害になる訳ない」

ナイトアイコン

「例え救えなかったとしても・・・ほんの数パーセントでも救える可能性があるならそっちに俺はけたい」

ミオアイコン

「その発想は無かった・・・」

ヴェルディスアイコン

「桜に残っていた意志だけでどうにかなるはずないでしょう・・・」

ナイトアイコン

「お前に足をられてもくっしない人間の意志でも?」

ミオアイコン

「・・・え」

ヴェルディスアイコン

貴方あなた・・・なかなか小賢こざかしい真似まねをしてくれますね・・・」

ナイトアイコン

「それはこっちのセリフだよ」

ヴェルディスアイコン

「ですが貴方あなた・・・子供一人かかえてわたくしと戦うおつもりですか?」

ヴァンアイコン

「敵の心配をしている余裕よゆうがあるとは・・・流石氷魔さすがひょうまと言うべきか」

その声と共に足元の煉瓦れんがくだくように降ってきたのはヴァンだった。

ヴァンアイコン

「3対1ならハンデの心配はいらんだろう?」

そんなヴァンの頭の上でチェリーがさわいでいる・・・。

チェリーアイコン

「私もいるのに!」

ヴァンアイコン

「お前は赤子と変わらん・・・大人しく乗っていろ・・・」

チェリーアイコン

「・・・!!!・・・は!?」

ミオアイコン

「上手くやってるみたいね・・・」

チェリーアイコン

「ぜんぜん出来てないから!」

ヴァンアイコン

「そこらにひそんだお前の部下達は掃除済そうじずみだ・・・私も少々ひましてたのでな」

ヴェルディスアイコン

「フフッ・・・手下が減ったところで私には関係ないですよ・・・」

そう言いフェダリアをかかえたままのナイトに氷の槍を放つ。

ミオアイコン

「・・・!」

その槍を咄嗟とっさに刀ではじくミオ・・・弾はじかれ地面にさった槍から氷の柱が伸びはじめる・・・。

せまり来る氷の柱から逃れるように後方へ退しりぞこうとしたミオだったが・・・何故なぜか足が動かない・・・。

ミオアイコン

「・・・靴底くつぞここうっている・・・?」

そのことに気づき視線を落とした瞬間しゅんかんに足元の氷が足首までおおう。

ナイトアイコン

「アイツ・・・街ごと氷漬けにでもする気なのか・・・」

押し寄せる冷気を手でさえぎろうとするも冷たさで痛みすら感じる・・・。

そんな時だった飛び立ったヴァンがミオ達とヴェルディスの間に着地する。

ヴァンアイコン

「我が風・・・嵐の前にてつく風如かぜごときは無意味!」

ヴァンの着地と共に巻き起こった風により押し返した冷気が巨大な氷の結晶を形作っている・・・。

だが先ほどまで前方にいたはずのヴェルディスの姿は屋根まで届くほどある氷の結晶の上にあった・・・。

ヴェルディスアイコン

「なかなか楽しめますね・・・しかし」

ヴェルディスアイコン

わたくしいそがしい身なので今回のところはこの辺で失礼させて頂きますよ・・・仕事が入ってしまいましたので・・・」

ヴェルディスアイコン

「うーん・・・実に名残惜なごりおしい・・・」

赤い氷の結晶を持ちくちびるめるヴェルディス・・・。

ヴェルディスアイコン

「そう言えば・・・そこのおじょうさん・・・血・・・美味しかったですよ」

そんな言葉を残しヴェルディスは姿を消した・・・。

第10話 愚者ぐしゃの道 後編(2)

ミオアイコン

「・・・」

ミオの右手には成長した氷の柱がさったあとが残されていた。

ミオアイコン

「・・・」(ちゃっかり血液採取されたか)

ミオアイコン

「・・・血液の水分を凍らせた上で持っていくとは・・・」

ナイトアイコン

「大丈夫か?」

そうたずねるナイトにミオは平然と答える。

ミオアイコン

「よく色々さるから・・・これぐらいは平気」

ナイトアイコン

「それはそれで平気じゃない気がするんだけど・・・」

ヴァンアイコン

「感動の再会中に悪いがのんびりしているひまはないぞ」

ヴァンアイコン

「この氷のオブジェは目を引く・・・さわぎはまぬがれないだろう」

そんな時だった・・・あんじょう人々の声が近づいてくる・・・。

ミオアイコン

「確かに・・・逃げた方が良さそうね」

ミオアイコン

「ナイトはヴァンと一緒にすぐに街の外へ・・・フェダリアをお願い・・・」

そう言い残し走り出したミオ。

だがナイトの考えは違うものだった・・・。

ナイトアイコン

「ヴァン、フェダリアを頼む」

ヴァンアイコン

「お前はどうする?」

ナイトアイコン

「ミオの後を追う」

ヴァンアイコン

「・・・・・・後でフェダリアをむかえに来い、2人でな」

ヴァンがフェダリアを乗せ飛び立つと同時にナイトもミオを追いかけ走る・・・。

道を走り抜けた先で立ち止まり周囲を見渡しているミオの姿を見つけけ寄るナイト・・・。

ナイトが近づいた時・・・少しビクッとしたミオは振り返り言う。

ミオアイコン

「伏せて!」

ナイトアイコン

「・・・!?」

その直後にミオに足払あしばらいをかけられ転倒したナイトのななめ横に土煙つちけむりが上がる・・・。

ナイトアイコン

「なんか飛んできた・・・?」

ミオアイコン

「人が作ったカラクリ武器・・・」

ミオアイコン

相変あいかわらずとんだ挨拶あいさつね・・・」

ナイトアイコン

挨拶あいさつ・・・?また敵か・・・?」

状況を飲み込めないでいるナイトを置いてミオはとある建物の屋根へのぼっていく。

そんなミオをすぐに追いかけのぼるナイト・・・のぼり終えた屋根の上、そこで見知らぬ女性と話すミオの姿があった・・・。

ミオアイコン

「毎度毎度・・・いきなり攻撃してくるなんてどう言うつもりなの?」

ミオアイコン

「アネッサ・・・」

そう呼ばれた女性は微笑ほほえみながら答えた。

アネッサアイコン

「でもミオ・・・アナタなら私の弾丸たま・・・けてくれるから大丈夫よね?」

アネッサアイコン

「まぁ・・・ちょっとした健康診断みたいなものでしょ?」

ミオアイコン

「不健康だったら即死の健康診断ってなに・・・?」

ナイトアイコン

「・・・!?」

ミオアイコン

「今までたまたま何とかなってるだけだから・・・」

ミオアイコン

「いつか当たったらどうするのよ?・・・」

アネッサアイコン

弾丸たまが当たっても大丈夫、急所から5ミリずらしてるから・・・ウフフ」

ミオアイコン

「いやそれでも十分脅威きょういじゃない・・・?」

ナイトアイコン

「・・・」(当たって大丈夫な訳が無い・・・)

アネッサアイコン

「そう言えば・・・」

ミオの後方から様子をうかがうナイトに視線を送るアネッサ・・・。

アネッサアイコン

「もしかして連れなのかしら?・・・めずらしいわね・・・」

アネッサアイコン

「アナタが誰かと行動するなんて」

アネッサアイコン

流石さすが に1人がさみ しくなっちゃった?」

ミオアイコン

「そんなんじゃない・・・」

ミオアイコン

「そもそも貴女あなた こそこんな所で何を?」

ミオアイコン

「お互いろくなことじゃないでしょうし」

アネッサアイコン

「当然、仕事よ?」

そんなことを言いながらナイトの横にやって来たアネッサ。

アネッサアイコン

「仲良くしてあげてね、ああ言う子・・・絶対さみしがりだから♪」

ナイトアイコン

「・・・?」

ミオアイコン

「・・・は!??」

アネッサアイコン

「じゃあ、またね?」

そう言い残しとなりの屋根に渡って行ってしまった・・・。

ミオアイコン

「絶対会いたくない・・・」

去っていくアネッサの姿を見ていたナイトにミオは言う。

ミオアイコン

「・・・私、下に降りる・・・」

ミオアイコン

「べ・・・別について来て欲しい訳じゃないから・・・」(・・・何だろう・・・この何言っても微妙びみょうな感じ・・・)

ナイトアイコン

「わかってるって」

あわてて屋根から飛び降りたミオを追うナイト・・・。

ミオが地面に着地した時だった・・・突然声をかけられる。

トルエノアイコン

相変あいかわらず派手はで にやってるねぇ」

ミオアイコン

「・・・!?」

そこにいたのは建物に寄りかかるように立っていたトルエノだった・・・。

ミオアイコン

「・・・トルエノ・・・?」

トルエノアイコン

結構けっこう探したぜ・・・地下に落ちたみたいだったしさ」

ナイトアイコン

「・・・誰・・・?」

ミオアイコン

「レイテルの第二王子」

ナイトアイコン

「あぁ・・・例の・・・」

トルエノアイコン

「へぇ・・・連れがいたのか・・・」(銀髪の少年ねぇ・・・)

トルエノアイコン

「て言うか・・・なんか初対面なのに嫌われてね?俺・・・」