ストーリーアイコンSTORYストーリー

第9話 奈落ならく鼓動こどう 前編(1)

そんなナイト達が街に潜入せんにゅうする前に話はさかのぼる・・・。

エクティスアイコン

「・・・・・・このような状況から」

ミオの裁判の終結の時が刻一刻こくいっこくと近づいていた・・・が。

ミオアイコン

「・・・」(周りの騎士は6人、いや両隣りょうどなり入れて8人・・・)

脱出に必要なさそうな事は全く聴いていないミオ。

トルエノアイコン

「この件には未だ不明な点も多い!」

トルエノアイコン

「今回の一件、私は調査の不十分さを感じております」

トルエノアイコン

「このような重要な事柄において十分な調査をせずに裁判にかける事に、私はこの場で抗議の意を表明させて頂く」(このしゃべり方・・・疲れる・・・)

ミオアイコン

「・・・」(槍が5人、剣が3人、2階に吹き矢3人・・・)

ミオアイコン

「・・・」(って・・・あの人・・・あんな話し方できたんだ・・・)

トルエノの裁判の存在そのものを否定しかねない発言にざわめく人々・・・。

しかしその大半の意見は否定的な意見のようだった。

裁判官アイコン

「皆様、静粛せいしゅくに・・・」

ミオアイコン

「・・・」(そうね・・・10分・・・10分あれば行ける・・・)

そんな事を思っているミオに裁判官が声をかける。

裁判官アイコン

「被告人・・・何か意見はありますか?」

ミオアイコン

「・・・!?」(今・・・貴方あなたが天使に見える・・・!)

ミオアイコン

「では、折角せっかくなので・・・」

ミオアイコン

「まず、私はこの件でさばかれるような事をした覚えはありません」

ミオアイコン

「次に・・・私はやってもいない事でさばかれたくはないです」

ミオアイコン

「・・・最後に・・・生憎あいにく私には死んでるひまなんてない・・・なので私は私の意志でここを出ていかせてもらうことにします」

そう言ったミオの手にはすで拘束こうそくは無く解けた縄がにぎられていた。

トルエノアイコン

「・・・・・・」(へぇ・・・縄ぬけ上手いんだな・・・)

兵士アイコン

何故なぜだ先ほどまで確かにしっかりとしばって・・・」

兵士アイコン

「そんな事を考えるのは後だ!早く大人しくさせるぞ!」

そう言い剣を抜こうとする騎士達だったが・・・。

ミオアイコン

「少しぐらい考えた方がいいかも・・・そんな事ってやつ・・・」(縄なんて・・・棘付きの手枷てかせとかに比べたら・・・)

兵士アイコン

「な、なんだ・・・これは!?」

ミオは先程まで自らをしばっていた縄で騎士達をしばると駆け寄ってきた槍を構えた騎士の方へ思いっきり押した。

倒れてくる仲間に思わず槍をらしたが彼らの下敷したじきになっている・・・。

そこから槍を拾い上げるミオ。

ミオアイコン

「この槍・・・借りるよ」(貴方あなたが仲間思いでよかった・・・)

ミオアイコン

「・・・」(あと5人・・・)

ミオは手にした槍をクルッと回し取り囲んだ騎士達の中の1人に切っ先を向ける。

兵士アイコン

「大人しくあきらめろ!逃げ場はないぞ!」

ミオアイコン

「逃げ場?」(今逃げ場を作っているのは自分達なのに・・・)

そんなミオを2階から吹き矢をかまえている影・・・。

吹き矢使いアイコン

「ダメだ・・・この位置では見方に当たってしまう・・・」

ミオアイコン

「・・・」(でも、このまま動かなくてもいつかは吹き矢が飛んでくる・・・)

吹き矢使いアイコン

「仕方ない・・・少し移動するか・・・」

兵士アイコン

「なんだどこ行った!?・・・ゲホッ」

腹部に走る痛みにひざまずく。

ミオアイコン

「・・・一応・・・人はらない主義なの・・・」(これで2本目)

槍を向けこちらに向かってくる騎士団員にミオは槍を半分程に折り投げた・・・その槍は思わず身構みがまえた騎士の横を何事も無かったかのように通り過ぎた。

だったはずなのだが・・・。

兵士アイコン

「な、なんでこっちに飛んでくるんだ〜!」

その後方にいるいかにも気の弱そうな騎士の頭の上に突き刺さっている・・・その後続けて投げた2本目はさらにはるか上に刺さっていた。

兵士アイコン

「嘘だろ・・・壁に突き刺さってる・・・?」

彼はもうそのことで戦意を喪失そうしつしているようだった。

ミオアイコン

「・・・」(あの人・・・ここにいない方が・・・)

兵士アイコン

「これ以上好き勝手にはさせられん!」

そう言い槍を振ろうとした手首を何かがつかむ。

ミオアイコン

「好き勝手にさせてくれてたら・・・私はこんなことしなくて良かったんだけど・・・」

そう呟き鳩尾みぞおちを軽くひざり怯んだ騎士の手ににぎられていた槍をり上げる。

・・・だが思った以上に手の力が抜けていたのかはじかれた槍が騎士のつか部分があご付近に直撃した。

倒れた騎士にれ思わず様子を確認するミオ。

ミオアイコン

「・・・大丈夫みたいね」(少しやり過ぎた・・・でもこれで足りるはず・・・)

そうして手にした槍をすぐさま先程刺した2本の槍の上を目がけ投げるミオ・・・。

無事に刺さってはいるようだが・・・。

ミオアイコン

「・・・」(少し刺さりが甘いかも・・・力が足りなかったみたい)

そんな中、周囲に増援を求める声がひびきわたる。

ミオアイコン

「でも・・・やり直す時間もない・・・」

そう言い壁に向かいけ出したミオの前に2人の騎士が飛び出して来たがその向けられた槍の上を踏み、飛び越えたミオは壁の槍を足場に2階を目指していた。

そんな時に1階の入り口側から姿を表したトルエノ。

裁判官などの無関係な人の避難ひなんと増援を呼ぶと言う理由をつけて離れていたが、副団長と言う立場もあり増援と共に帰ってきたらしい。

到着の遅さを考えるとタイミングを測っていたようだ。

トルエノアイコン

「第二部隊到着!」

トルエノアイコン

「・・・」(・・・結構は派手にやってるな・・・修繕費しゅうぜんひ高くつきそうだ・・・)

槍の刺さった壁を見たトルエノは団員にたずねる。

トルエノアイコン

「お前ら・・・あれ登れる?」(いっそあの壁のまま訓練施設にでもするか・・・?)

必死に首を横に振る団員達・・・・。

トルエノアイコン

「まぁ鎧重いからなぁ、さてどうするかね」(流石さすがに何もしないわけにはいかねぇからな・・・)

トルエノアイコン

「取りえずお前らは階段から上がれ、俺は登れるからこのまま追いかける・・・」

そう言い追い掛けようとしたトルエノをさえぎるように低い声がひびく。

アンノーンアイコン

「その必要はない・・・」

トルエノアイコン

兄貴あにき・・・追わなくていいってどういう事だ?」

そこには黒い斧を持ったエクティスの姿があった・・・。

第9話 奈落ならく鼓動こどう 前編(2)

エクティスアイコン

「登れないなら落とせばいい」

トルエノアイコン

「・・・!」(・・・落とす!?まさか・・・?)

最後の足場に飛び移ろうとしたミオ・・・。

だがその背後から何かの風をる音がこえ思わず足場にとどまった。

ミオアイコン

「!!!」

そんなミオの目の前にガンッという激しい音と共に大きな斧が突き刺さった。

ミオアイコン

「止まらなかったら・・・完全に背中からくところだった・・・」

ミオアイコン

「しかもこの武器・・・少なくとも人間界のものじゃない・・・」(これは・・・)

そんなことを考えていたミオの目の前で刺さっている斧がギギギっと不気味ぶきみな音をたて振動しんどうしている・・・。

ミオアイコン

うそ・・・でしょ・・・」

斧は壁の破片はへんを飛ばし抜けた斧は使い手の元に戻って行った・・・。

ミオアイコン

「あれ・・・遠距離武器なの・・・?」(これって・・・また飛んでくるのよね・・・)

トルエノアイコン

「・・・兄貴あにき」(っぶね〜・・・確実に殺す気だったろ・・・)

トルエノアイコン

「・・・」(なんとか時間をかせがねえと・・・)

エクティスアイコン

「・・・ところでどうした?トルエノ」

エクティスアイコン

「顔が引きっているぞ?まるで生きて逃したい理由があるみたいだな・・・?」

トルエノアイコン

「・・・俺は女を殺すのは反対なだけだよ・・・」

エクティスアイコン

「お前は女に甘すぎる」

エクティスアイコン

「・・・ここは俺が預かる、お前は負傷者の手当てに回れ」

トルエノアイコン

「・・・」(流石に今武器を出して止めたら・・・周りの団員がパニックになりそうだ)

エクティスアイコン

「不満があるのか?」

トルエノアイコン

「いや、了解だよ・・・団長」(今は信じるしかねぇか・・・どうにか手をうたねぇと・・・)

そう渋々了承しぶしぶりょうしょうした時だったカランカランっという音がひびく。

ミオアイコン

「・・・!!」

自然とその音源を探し視線が集まる・・・。

ミオアイコン

「・・・・・・」(これはまずい)

視線の先にあったのは2階に登り終えたミオの姿だった・・・。

どうやら刺さりの甘かった3本目がえきれずに下に落ちたようだ。

咄嗟とっさに柱に身を隠し様子をうかがっていたミオだったがその柱の横をかすめるように飛んできた斧が目の前の壁に突き刺さった。

ミオアイコン

「・・・」(この高低差で的確に飛んでくるなんて・・・もはや人間業じゃない・・・)

そんなミオの視界のはしに映り込んだのは吹き矢をかまえ近づいてくる影だった・・・。

矢を放とうと吹き矢に口を近づけた時、かまえていた吹き矢が突然切断される。

ミオアイコン

「・・・同じ手は2度食わない」

そう言い刀をかまえるミオにおどろき思わず尻餅しりもちをつく吹き矢使い。

吹き矢使いアイコン

「いつの間に・・・?」

動揺どうようを隠せない様子の目の前の者に目もくれることなく二方向に手裏剣しゅりけんを打ったミオ。

その手裏剣しゅりけんは残り2人の持つ吹き矢に刺さっている・・・。

ミオアイコン

「ずっとコソコソ様子見られてるよりねらってもらった方がこっちも見つけやすい・・・」(吹き矢はもう無いはずだけど・・・)

エクティスアイコン

「それは確かだな・・・」

ミオアイコン

「・・・!」(斧が抜けて戻るまで時間があると思ってたんだけど・・・)

そこに立っていたのはエクティスだった。

エクティスアイコン

「斧が戻って来ないなら取りに来るまでだ」

ミオアイコン

「・・・なるほど」

ミオアイコン

「残念だけど今戦ってる時間はないの・・・」

そう言い走り出したミオだったが容赦ようしゃ無く飛んでくる斧が伏せた頭上を通り過ぎる・・・。

何とか攻撃を交わしつつやっとの思いで身を隠しエクティスの追跡をいたミオ・・・。

ミオアイコン

「・・・」(何とかなったのかな・・・?)

エクティスアイコン

「・・・見失ったか・・・」

ミオを見失ったエクティスはすぐさま動ける団員を集め捜索そうさくを命じている・・・。

エクティスアイコン

「逃げた娘はまだ城内にいるはずだ、天井裏含め探せる場所は全て探せ」

騎士アイコン

「ハッ」

指示を受け団員達は一斉に散開していく。

その頃・・・

トルエノアイコン

「・・・」(兄貴あにきが人員を集めてるって事は・・・今のところは逃げきれてるか・・・?)

騎士アイコン

「・・・副団長、何を先ほどから気にされてるので?」

トルエノアイコン

「・・・あぁ、ちょっとな」

トルエノアイコン

兄貴あにきも女相手に本気出さなくてもいいのになぁって」

騎士アイコン

「ふ、副団長らしい御意見ですね」

トルエノアイコン

「・・・!」

トルエノは巻いていた包帯ほうたいをギュッと引っ張っている。

騎士アイコン

「痛いです!痛いです!」

トルエノが包帯ほうたいを止めて手を放すと団員は安心したように一息いてつぶやく。

騎士アイコン

「ですが・・・副団長・・・」

騎士アイコン

「あの娘、またたく間に我々を・・・あの娘なら1人であの森の団員を壊滅かいめつさせる事も可能なのでは・・・?」

トルエノアイコン

「それは・・・出来るんじゃねーの?」

トルエノは当然のように答えた。

騎士アイコン

「!・・・では何故なぜあの時・・・」

トルエノアイコン

「・・・馬鹿かよお前は・・・」

トルエノアイコン

「出来るのと実際殺したかは別問題だろーが」

騎士アイコン

「ですが!ここにいた者達は・・・!!?」

トルエノアイコン

「やっと気づいたか・・・」

トルエノアイコン

「誰1人死んでねーよ・・・」

トルエノアイコン

「まぁ、怪我けがといえばいいとこ打撲だぼくぐらいだな・・・ぶっちゃけお前にも包帯ほうたいはいらなさそうだけど」

騎士アイコン

「?・・・副団長・・・では何故包帯なぜほうたいを?」

トルエノアイコン

「あ?いやひまつぶし・・・」

騎士アイコン

「え・・・ひまつぶし・・・なんですか・・・?」

第9話 奈落ならく鼓動こどう 中編(1)

呆然ぼうぜんとしている団員。

トルエノアイコン

「冗談だよ、お前があんまり痛がるからさぁ」

トルエノアイコン

「でも・・・あれだけ実力があれば本気だしゃ、いくらでも殺して逃げられただろうさ」

トルエノアイコン

「・・・」(頭数減らした方が逃げやすいに決まってる・・・)

トルエノアイコン

「それにしても・・・外がさわがしいな」

そうつぶやき外の様子を見るトルエノ。

騎士アイコン

「心配なんですか?」

トルエノアイコン

「何が?」

騎士アイコン

「それは勿論もちろんあの娘が逃げ切れるか・・・」

トルエノアイコン

「おいおい・・・何で俺がそんな心配しなきゃいけねーんだよ」

騎士アイコン

「それは副団長が無実だと信じておられるからです」

騎士アイコン

「出来る事なら逃げびて欲しい・・・そう思われているのではありませんか?」

トルエノアイコン

「・・・・・・お前・・・相当たくしい想像力だな・・・」

騎士アイコン

「よく仲間に言われております」

トルエノアイコン

「だろうな・・・アハハ・・・」

トルエノアイコン

「って・・・お前・・・いつまでココにいんだよ」

トルエノアイコン

「元気なら兄貴あにきの所に戻れよ・・・召集しょうしゅうかかってただろ?」

騎士アイコン

「それに関しては副団長も同じです」

トルエノアイコン

「俺はまだこの辺の連中の面倒見なきゃいけねーんだよ・・・」(考える余裕よゆうがねぇ・・・)

騎士アイコン

「それに・・・私も口は元気ですが痛いのは変わりませんし」

トルエノアイコン

「ひょっとして・・・お前・・・サボりたいのか・・・?」

騎士アイコン

「そ、そのような事は決して・・・」

不明アイコン

「トルエノ」

トルエノアイコン

「!・・・兄貴あにき

声をかけて来たのはエクティスだった・・・。

トルエノの後ろで気絶している団員に視線を送っている・・・。

エクティスアイコン

みな怪我けがの具合はどうだ?」

トルエノアイコン

「目立った怪我けがはないぜ」

エクティスアイコン

「そうか」

それを聞いたエクティスは安心したように言った。

エクティスアイコン

「そのまま休ませてやってくれ」

そう言いその場を去ろうとしたエクティスは足を止めたずねた。

エクティスアイコン

「トルエノ・・・あの娘が逃げたのはお前の計算の内か?」

トルエノアイコン

「・・・!」(さっきまでと目の色が少し・・・)

トルエノアイコン

「さぁな・・・兄貴あにきこそ何を考えてるか教えて欲しいもんだぜ」

トルエノの目にはエクティスの瞳が少し赤みを帯て写った・・・。

そんな時だった、1人の団員が血相を変えてやってきた・・・。

一方・・・その頃トルエノの部屋付近に辿たどり着いたミオ。

だが下の階が何故なぜさわがしくなった。

ミオアイコン

「何か・・・さわがしい」(でも、どうやら私のことではなさそう・・・)

そう思いつつトルエノの部屋に向かうことにしたミオだったが・・・。

騎士アイコン

「エクティス団長!」

その声を聞きすぐに柱に身を隠し様子をうかがう。

ミオアイコン

「・・・」

エクティスアイコン

「どうした?見つかったのか?」

騎士アイコン

「い、いえ・・・それはまだ・・・」

エクティスアイコン

「・・・では、何だ?」

団員はあわてた様子で報告している。

騎士アイコン

「先程付近の森で巨大な鳥を見たと・・・」

エクティスアイコン

「鳥?」

そんな声を上の階で聞いていたミオ。

ミオアイコン

「・・・・・・」(鳥?・・・大きい鳥って・・・)

騎士アイコン

「そ、それだけではなく・・・その少し後にピンク色をした変な猫の侵入しんにゅうを許してしまったらしく・・・」

ミオアイコン

「・・・」(?・・・ピンクの猫・・・ね)

騎士アイコン

「その後、街の内部で奇妙きみょうな猫と銀色の髪をした少年を目撃した者がごくわずかではありますがいる模様です」

騎士アイコン

「方法は不明ですが銀髪の少年もこの街の外からの侵入者しんにゅうしゃだと思われます」

ミオアイコン

「・・・」(・・・ものすごく想像しやすい取り合わせ・・・)

ミオアイコン

「・・・」(・・・でも何故なぜここに・・・)

騎士アイコン

「それと・・・先程逃走した娘ですが、もうすでに街まで逃げているのでは・・・」

そうおそおそる話す騎士団員・・・。

エクティスアイコン

「それは無いとは思うが、確かに街へ逃げている可能性も否定はできんな・・・」

そんな時だった!もう1人・・・外から団員が駆け込んで来る。

ミオアイコン

「!!!」(この気配は外から?)

騎士アイコン

「団長!大変です!見回りの兵が何者かにおそわれ重症です!」

エクティスアイコン

「何!?何者かと言ったがあやしい奴は近くに居なかったのか!?」

騎士アイコン

「いえ、その様な・・・?いえ、1人だけ変わった髪色の男を・・・」

エクティスアイコン

「男・・・?ひょっとしてお前が見たのは銀髪の少年か?」

その騎士団員少し考え答えた。

騎士アイコン

「そ、そうです銀髪なんて初めて見たので間違いありません」

エクティスは少し目を閉じて考え団員にたずねる。

エクティスアイコン

「お前、おそわれた場所は分かるか?」

騎士アイコン

「はい!」

エクティスアイコン

「ではそこまで案内してくれ私も行く・・・」

そしてエクティスはもう1人の団員に指示を出す。

エクティスアイコン

「お前は他の団員に街に潜伏せんぷくしている可能性がある少年と逃走した娘の探索を並行して行うことを伝達を頼む」

エクティスアイコン

「無論、城内部を探索する者も残しておけ」

そう言い残しエクティスは外に飛び出していった・・・。

ミオアイコン

「・・・」(あの気配は・・・間違いなくアイツの・・・)

ミオは近くに人がいない事確認すると急いでトルエノの部屋へ向かった。

第9話 奈落ならく鼓動こどう 中編(2)

ミオアイコン

「急がないと・・・もし私が感じたのが間違ってないなら・・・」

クレアアイコン

「お待ちしておりました・・・ご無事で何よりでございます」

女性は部屋の扉をけミオに言う。

クレアアイコン

「こちらから速く、他の者に見つかる前に・・・!」

ミオアイコン

「ありがとう・・・」

ミオが部屋に入ろうとした時・・・ピタリと足を止めた。

ミオアイコン

「!!!?」(これは・・・魔族の気配・・・?しかも城内から・・・?)

ミオアイコン

「・・・」(さっきまで何も感じなかったのに・・・?)

すると場内から誰かが助けを求める声が聞こえた・・・。

ミオアイコン

「!!」

きびすを返し向かおうとするミオを引き止める声に足を止める。

クレアアイコン

「お待ちください!今戻るのは危険すぎます!」

クレアアイコン

「いくら何でもつかまってしまいます」

ミオアイコン

「ありがとう・・・でも大丈夫」

ミオアイコン

「それに、私は貴女あなたが仕えている人に借りがあるの・・・」

クレアアイコン

「・・・?」

そう言ってミオは来た道を戻って行った。

そうして戻ったミオの目に映ったのは1人の人物を囲むように集まった人だかりだった・・・。

トルエノアイコン

「・・・お前ら・・・こんな所で何してんだ!」

トルエノアイコン

「俺のことは良いから・・・速く仕事に戻れ・・・!」

人々が囲んでいたのは深手を負ったトルエノだった・・・。

騎士アイコン

「医者は!?医者はまだなのか!」

ミオアイコン

「・・・」(人が多すぎる・・・今近づいたらつかまえてくださいって言ってるようなもの・・・)

ミオアイコン

「・・・」(でも医者を探している時間なんてある訳ない・・・)

すると少し前に走って医者を探しに行っていたのであろうか・・・1人の団員が戻ってきた・・・だが息を切らし帰って来た団員の後ろには医者らしき姿は無い。

騎士アイコン

「!・・・何!?医者が居ない?」

騎士アイコン

「はい・・・1人は医師の会合に召集しょうしゅうされ、もう1人は別の町の患者かんじゃ治療ちりょうに・・・そしてもう1人は何者かに・・・」

騎士アイコン

「何と言うことだ・・・ではどうすれば・・・」

不明アイコン

「ねぇ、ちょっとそこどいて」

騎士アイコン

「お、お前は!?どうしてここに!?」

トルエノアイコン

「!!!?」

そう声をかけたのはミオだった。

騎士アイコン

「お前!トドメを刺しに来たのか!?」

そう言って武器を一斉いっせいに向ける団員達・・・。

ミオアイコン

貴方あなた達・・・私にそんな物向けるひまがあるなら!速く止血しなさい!」

その言葉に周りの人々は騒然そうぜんとしている。

ミオアイコン

なに勘違かんちがいしてるか知らないけど、私が殺しに来て失敗したならまずその場に帰って来ない・・・」

騎士アイコン

「た、確かに」

ミオは向けられた武器にそっと手をれ言う。

ミオアイコン

「私は貴方あなた達が守ろうとしてるその人を助けに来たの・・・だから邪魔じゃましないで・・・」

不明アイコン

「あの・・・これは使えますか?」

そう何処どこからか帰って来た女性がミオに何かを差し出した。

ミオアイコン

「・・・これは・・・お酒?」(アルコールも十分強い・・・これなら消毒になる)

ミオアイコン

「ありがとう・・・助かる」

酒を受け取ったミオはトルエノの元へ歩き出した。

団員達はゆっくりと後退あとずさりし道をあけてくれた・・・。

トルエノアイコン

「何で・・・戻って・・・来たんだよ・・・」

ミオアイコン

「説教なら後で聞くから生きたいならしゃべらないで・・・」

ミオアイコン

「止まる血も止まらなくなるでしょ・・・」

手を床につき起き上がろうとしているトルエノに言う。

トルエノアイコン

「!!っ」

傷の痛みで再びくずれ落ちたトルエノの背に手を伸ばしている。

ミオアイコン

「少し服、切るよ・・・傷の深さと正確な位置が分からないから・・・」

そう言い血のにじんだ服を少し切り開く・・・。

ミオアイコン

「・・・背中に一太刀・・・」(不意打ち・・・?)

ミオアイコン

「・・・」(それにこの傷・・・上に行くほど浅くなってる・・・もしかして身長が低かったから?)

ミオアイコン

「・・・!」(考えてる場合じゃない・・・早く傷を)

ミオは手にした酒を傷に勢いよくかける。

トルエノアイコン

「・・・ウッ・・・!!」(メチャクチャ染みる・・・逆に気を失いそうだ・・・)

ミオアイコン

「・・・我慢がまんして、感染症かんせんしょうのリスクは減らしたいの・・・」

かけた酒により血が流れ少し見やすくなった傷を確認しているミオ。

ミオアイコン

「やっぱり出血が多い・・・」(少しだけど闇の力も感じるし・・・)

ミオアイコン

「普通の方法じゃ難しそう・・・」

ミオアイコン

「でもこれ位の傷なら・・・なんとか・・・」(治せるかも・・・)

ミオアイコン

「・・・少し離れてて貰える?」

そう言われ周囲の人々が離れるのを確認するとトルエノの傷に手を置いた。

ミオが目を閉じ集中した後・・・かすかに光を帯た手を静かに傷に沿ってすべらせた・・・。

その光が消えた頃には傷はほとんど塞がっていた・・・。

騎士アイコン

「な、何が起こったんだ?き、傷が!傷が治っている!?」

トルエノアイコン

「今・・・俺に何を・・・?」(痛みが・・・だいぶ楽に・・・?)

起き上がったトルエノも状況を飲み込めずにいる・・・。

ミオアイコン

「別に・・・大した事は・・・してない・・・」

ミオアイコン

「あくまで・・・応急処置でしかない・・・はげしく動くと・・・傷が開くかも知れない・・・」(うぅ・・・昔から治療ちりょうは苦手だったし・・・)

トルエノアイコン

「!・・・おい、大丈夫か!?」(何が起こったのかも分からねーが・・・顔色が)

騎士アイコン

「お前達!!一体何処どこから入ってきた!?」

突然響とつぜんひびいた声に思わず視線を送る。

そこには黒装束くろしょうぞくの人物が立っていた・・・。

第9話 奈落ならく鼓動こどう 後編(1)

トルエノアイコン

「!・・・アイツは!」

ミオアイコン

「・・・知り合い・・・?」(次から次へと・・・問題しか起きない)

トルエノアイコン

「知り合いじゃねーけど・・・」

トルエノアイコン

「アイツは・・・オスクリダって言う教団の連中だ」

トルエノアイコン

「何を信仰しんこうしてるのか知らねーけど平く言うとテロリストみたいな奴だよ・・・」

トルエノアイコン

「どうやってろうから逃げたんだ・・・?」

ミオアイコン

「・・・じゃあ・・・逃亡友達ってことね・・・」

ミオアイコン

「・・・でも仲良くできそうには無い・・・」

邪教徒アイコン

「・・・ググ」

黒装束の人物に武器を向け距離を詰めようとする団員達・・・。

ミオアイコン

「待って!・・・その人」

ミオアイコン

「いえ・・・その生き物に近付かないで・・・!」

トルエノアイコン

「!!!」

トルエノアイコン

「どう言う意味?」

ミオアイコン

「どうやら彼はすごくお腹を減らしてるみたいだから・・・」

トルエノアイコン

「腹が減ってるって・・・それで近付いたらダメな理由ってのがわかんねーんだけど・・・」

トルエノアイコン

「飯やったら落ち着くのか?」

ミオアイコン

「かもね・・・彼の食べ物は・・・人間だけど」

トルエノアイコン

「・・・は?」(マジ・・・?)

ミオアイコン

「だから・・・早く動ける人間を連れて逃げて・・・!」

みだれてい呼吸こきゅうととのえ刀をかまえるミオ。

トルエノアイコン

「逃げろって?アンタはどうする気なんだ?」

ミオアイコン

「私は残る・・・ここで止めなければ国ごと食いくされるだけ・・・」

トルエノアイコン

「な、何言ってんだ!俺に女1人置いて逃げろってのか?」

トルエノアイコン

「ましてやこの国に関わることなら俺の問題だ!」

そう言っているトルエノだが完全に完治していない傷のためか痛みでひざをつく・・・。

ミオアイコン

「多くの人を生かすためにも優秀な指揮官は必要なものよ・・・」

騎士アイコン

「トルエノ様!」

あわ ててけ寄る団員達・・・。

ミオアイコン

「無理よ・・・その体じゃ・・・戦うなんて不可能」(万全でもどうなるのか分からないのに・・・)

そう横を通り過ぎながら言ったミオ。

トルエノアイコン

「それを言うならアンタだって同じだろ?」

邪教徒アイコン

「・・・グォォォ」

ミオアイコン

「!」

黒装束の人物はミシミシと奇怪きかいな音をたて体の形が変化していく・・・その姿を見ていた団員達は目の前で起こっていることが理解できず言葉を失った・・・。

体はすでに原型をとどめておらず変化に対応できなかった黒装束はただの布切れと化している。鋭い牙が並ぶ大きな口と爪を持つそのおぞましい姿はまぎれもなく魔族デーモンだった。戸惑とまどう1人の団員に容赦ようしゃ無く振り下ろされる爪・・・。

騎士アイコン

「うわっ」

ミオアイコン

「・・・少しは逃げる気になった?」

そこには振り下ろされた爪を刀で受け止めるミオの姿があった。

ミオアイコン

「ともかく速く王子を連れて逃げるべきね・・・生きているうちに・・・」(後悔は先に立たないものよ・・・)

騎士アイコン

「トルエノ様、私の肩に捕まって下さい」

トルエノアイコン

「何言ってんだお前も怪我けがしてただろ!俺は1人で歩ける・・・」

騎士アイコン

「そんなことを言っている場合ではありません!私達の今の役目は王子であるトルエノ様をお守りすることです」

騎士アイコン

「確かにトルエノ様は我々と同じ騎士団の一員として行動を共にしておりました・・・ですがそれ以前に貴方あなた様はこの国の大切な王子です」

騎士アイコン

「命の重さが我々とは違うのです」

そう言った団員にトルエノは少し声をあららげている。

トルエノアイコン

「王子だろーが何だろーが、命の重さに差なんてねーだろ!」

ミオアイコン

「その話は取りえず逃げてからやって・・・?」

目の前の魔族デーモンの喉元に刀を突き立て蹴飛ばしたミオは呆れたように言う。

ミオアイコン

「それに・・・命の心配はいらない・・・」

ミオアイコン

「私は貴方あなた達を死なせる気もないしね・・・」

トルエノアイコン

「・・・・・・分かった」

トルエノアイコン

「悪いが肩を貸して貰えるか・・・?」

騎士アイコン

「はい、お安い御用です」

そう団員は何処どこうれしそうに答えトルエノと共にその場を後にした・・・。

その様子を確認し少し安心したのも束の間だった・・・目の前で倒れていた魔族デーモンが急に起き上がり急に真逆の方向へ駆け出した。

ミオアイコン

「・・・!?」(あれは!?)

視線の先にあったのはさわぎが気になってやって来たのだろうか、先ほどトルエノの部屋の前であった女性の姿だった。

彼女がいるのは2階だが魔族デーモンにとっては大した障害しょうがいにはならない。

爪を食い込ませながら勢いよく壁をよじ登っている。

クレアアイコン

「・・・!!」

その異様な音に思わず身構みがまえた女性にの前に姿を表したのはミオだった。

クレアアイコン

「あら、ミオ様!ご無事で何よりです」

ミオアイコン

「それ・・・こっちが言いたいセリフ・・・」(不思議な人・・・状況の割に落ち着いている気が・・・)

そう手摺てすりを超えながら言うミオに思わず疑問をぶつける女性・・・。

クレアアイコン

「ミオ様・・・どのようにしてここへ?」

ミオアイコン

「・・・丁度いい足場を見つけたから」

そう言うと刀を持ち自分が登ってきた方を振り返るミオ・・・。

直後に姿をのぞかせたのは巨大な口だった、しかしその頭は振り抜かれた刃により宙を舞う・・・。

クレアアイコン

「!!!」

その光景に戸惑とまどい言葉を失う女性に対してミオがかけた言葉は意外なものだった。

ミオアイコン

「・・・貴女あなた、本当にただのメイドさん?」

クレアアイコン

「・・・え?」

第9話 奈落ならく鼓動こどう 後編(2)

何のことだか分からないような雰囲気ふんいきの女性の姿にミオは話を切り上げた。

ミオアイコン

「ごめんなさい少し気になったから・・・聞いてみただけ」

ミオアイコン

「取りえず近くの部屋に隠れて、鍵をかけて何があっても絶対に開けないで」

そう言い去ろうとしたミオに女性がさけぶ。

クレアアイコン

黒装束くろしょうぞくの人物を見つけ気になって追いかけここに来たのですが・・・」

クレアアイコン

「実はこの場所に来る前、同じような人物をもう1人見かけたのです・・・」

ミオアイコン

「!!!・・・それ本当なの?」

その頃・・・トルエノ達の前には見覚えのある黒装束くろしょうぞくの姿があった。

トルエノアイコン

「・・・マジかよ・・・つかまえた人数より増えてるとかないわ・・・」

案の定目の前で変異をはじめる姿に絶望を隠せない一同・・・。

トルエノアイコン

「お前らは先に行ってろ、これは副団長命令だ!」

レイピアをかまえたトルエノは振り下ろされた爪を紙一重でかわしつつ斬撃ざんげきを加えていく。

トルエノアイコン

「全く手応えがねぇ・・・」(このままじゃ・・・)

だが首元に向け放たれた突きにより魔族デーモンにレイピアが貫通したが・・・しかし・・・。

トルエノアイコン

「筋肉で抜けねぇとか、マジ?」(首の筋肉どうなってるんだ・・・コイツ)

戸惑とまどうトルエノに魔族デーモンの顔は心なしか笑ったように見えた。

トルエノアイコン

「・・・笑っやがるし」

振り上げられた爪をレイピアを手放し飛び退くことでけたトルエノだったが・・・その背は少しずつ血がにじみ出している。

トルエノアイコン

「こんな時に傷が・・・!」

思わず再びひざをついたトルエノにジワジワと歩みを進める黒い影・・・。

トルエノアイコン

「どうせ追っかけられるならこんな奴じゃなくて可愛い女の子がいいんだけどな・・・」

そんなトルエノに振り下ろそうとした爪が動きをピタリと止める。

トルエノアイコン

「何で急に止まった・・・?」

動きを止めよだれを垂らし出した魔族デーモンがゆっくりと振り向いた先にいたのは刀をかまえたミオだった。

その手からはかすかに血が流れ静かにしたたり落ちている・・・。

ミオアイコン

「可愛くなくて悪かったわね・・・?」

トルエノアイコン

「!」

ミオアイコン

「色んな意味で血には勝てないみたいね・・・」

トルエノアイコン

「この生き物・・・さっきよりはるかにえてる・・・?」

トルエノアイコン

「・・・」(それに・・・今、自分で手を・・・)

すさまじい咆哮ほうこうを上げる魔族デーモン、それは周囲の人間が振動を感じるほどだった・・・。

歩み出した魔族デーモンは二足歩行を止め四足歩行でけ出した。

トルエノアイコン

「アイツさっきより速くなってる」

ミオアイコン

「ちゃんと来てくれて嬉しい限り・・・」

自分を狙っている様子を確認するとミオは急いで階段をけ上がる。

時折手摺てすりの下から伸ばされる手をけ階段を登り終えた頃。

ミオアイコン

「・・・こんなの外には出せないし、何とかしないと・・・」

手摺てすりをこわすように爪を立てている魔族デーモンから後退あとずさりした時だった。

ミオアイコン

「!!?」

ミオのとなりにあった扉が急にはじけ飛んで来た。

状況が分からないまま目の前のもろくなった手摺てすりと共に下の階へ落下したミオ。

はげしく全身を強打し意識が朦朧もうろうとする中その視界には見覚えのある黒いあしが映り込む・・・。

横になったままそのあし辿たどるように見上げたミオ。

その瞬間しゅんかんに突き刺すように振り下ろされた爪、それを転がりかわすとすぐさま立ち上がる。

少しクラクラする頭に軽くれた時チクッという痛みを感じその後はジンジンと脈打つ度に若干痛む。

れた指先には血がついていた・・・どうやら落下した時に切ってしまったようだ。

目の前の魔族デーモンは突き刺した爪を抜いている・・・。

上に登るときに相当暴れたのかヒビが入り崩れ落ちた後方の壁からはわずかに風が吹いているようだ・・・。

ミオアイコン

「ここは・・・最初通ったとき風を感じた・・・」

壁に気を取られるミオの後ろからドスンという音が聞こえた。

思わず振り返ったミオ。

ミオアイコン

「・・・あれ・・・2体になってる・・・?」

どうやら扉が飛んできた原因はもう1体の仕業だったようだ・・・。

退路のふさがれたミオは後方の壁の穴に飛び込んだ・・・がその空間は入ってきた穴以外には出入りできる扉もない行き止まりだった。

ミオアイコン

「・・・この部屋どこともつながっていないの?・・・」

辺りを見渡し壁を軽く叩いている・・・。

ミオアイコン

「・・・!」(ここだけ壁が薄い・・・それに変な音が・・・)

ミオアイコン

「試してみる価値はあるかも」

後ろからガラガラと音をたて魔族デーモンが入って来た。

そのままの勢いで突っ込んでくる魔族デーモンの足元をすべり抜けかわしたミオ。

攻撃の衝撃しょうげきで薄い壁は一瞬いっしゅんやぶれたようだ。

その先の暗闇に吸い込まれるように姿を消した魔族デーモンの後を追うように下へ続く階段を降りる。

ミオアイコン

「この先・・・」(やっぱり変な音が・・・)

暗闇にみ入った瞬間しゅんかんにガタンっと足元から音がした・・・。

中へ入ると意外なことに薄明かりが灯っている。

だが足元はやはり暗い・・・。

ミオアイコン

「長く使われてはいないみたいだけど・・・」

ミオアイコン

「!!?」

キョロキョロと見渡しながら様子を見ていたミオは足が何かに当たった・・・。

ミオアイコン

「・・・さっきの魔族デーモンの頭・・・」(・・・とんでもない場所に入ってしまった・・・)

それは先にここに入って行った魔族デーモンの変わり果てた姿だった・・・。

ミオアイコン

「・・・そういえば」(死んでも人の姿に戻ってない・・・今までと何かが変わってきているの・・・?)

思わず周囲を見渡し魔族デーモンの残りの体を探す・・・。

うっすらと先にそれらしき物を見つけた・・・どうやら頭と胴とあしがそれぞれ別れを告げたらしい・・・。

ミオアイコン

「・・・魔族デーモンの体を切断する刃なんて大したものね・・・」(何か別の力も働いているみたいだけど・・・)

ミオアイコン

「何にしても不用意に入らない方がいいみたい・・・」

引き返そうとしたミオの後ろにドスンと聞き覚えのある音がひびく。

降ってきた魔族デーモンと共に多くの瓦礫がれきが降り注ぎ、来た道がふさがってしまった。

ミオアイコン

「・・・待って・・・戻る道がなくなった」

残された道は1つしか無かった・・・。

ミオアイコン

「・・・進むしかなさそうね・・・」

オスクリダデーモンアイコン

「グゥオオオ」

薄暗い中・・・魔族デーモンの赤い目が揺れながら近づいて来ている・・・。