ストーリーアイコンSTORYストーリー

第6話 くしたもの、消えない記憶 前編(1)

チェリーアイコン

「マッドカーサっていう沼の近くを歩いていた時に・・・」

ミオアイコン

「・・・!!」

チェリーアイコン

「どうしたの?」

ミオアイコン

「あの沼・・・何かいる・・・」

視線向けた先で沼の表面がボコボコと音を立てている。

その後一気に沼の表面が盛り上がりすさまじい音とどろを跳ね上げ巨大な水竜が姿を現した。

竜の頭は8個あり、目はそれぞれ6個ずつ・・・赤く不気味ぶきみな光を放っている・・・・。

チェリーアイコン

「蛇ににらまれたかえるの気持ちが分かる気がする・・・」

様子をうかがっていた2人、その少し遠くからかすかに声が聴こえる・・・

フェダリアアイコン

「うっうっ・・・こわいよ・・」

ミオアイコン

「子供!?何故なぜこんな場所に・・・」

チェリーアイコン

「泣きたい気持ちもすごく分かる・・・って・・・」

チェリーアイコン

「あの茶色い水竜・・・あの子ねらってる!」

その水竜は一度沼にもぐり女の子の方に近づいているようだ・・・

ミオアイコン

「完全に食べる気ね・・・」

ミオアイコン

「チェリー、あの子の近くの木に移動して・・・何かあったら援護えんごをお願い・・・」

ミオアイコン

「私は奴を止める・・・」

チェリーアイコン

「了解!」

そう返事をしたチェリーはあっと言う間に木をけ上がっていった・・・。

ミオアイコン

「私も動かないと間に合わなくなる・・・」(それにしても・・・相変わらず木登り速い)

フェダリアアイコン

「うっ、うぇ〜ん」

泣きながら後ろへ後退あとずさりしている女の子に沼から勢いよく飛び出し口を開けた水竜、しかしその頭は上空からり下ろされた刃により地に落ちた・・・。

着地したミオの足は湿地の泥の上を少しすべってから止まった。

ミオはり返り女の子にたずねる。

ミオアイコン

怪我けがは・・・無いみたいね・・・」

ミオアイコン

「1人で家に帰れる・・・よね?」

すると女の子は小さく横に首をっている・・・。

ミオアイコン

「それは・・・」(困ったな・・・あまり長居はしたくない・・・)

木の上にいたチェリーが声を上げる。

チェリーアイコン

「ミオ、あの竜様子がおかしい!」

少し水竜の様子を見たミオ。

ミオアイコン

「・・・」(割とすぐ動き出しそう・・・)

女の子を再び見つめミオは水竜を指差しながら・・・。

ミオアイコン

「この竜・・・ちょっとしつこそうだから取りえず一緒に逃げる?」

そう言われた女の子は小さな声で答えた。

フェダリアアイコン

「・・・うん」

ミオアイコン

「じゃあ、行こう」(後ろは気になるけど・・・)

ミオは女の子の手を取り走り出した・・・。

ミオアイコン

「チェリー!」

チェリーアイコン

「わかった、援護えんごする」

そうやってどうにか村まで逃げてきたミオ達。

ミオとチェリーアイコン

「死にそうだった・・・」

安堵あんどしている2人の横で女の子がキョロキョロと何かを探しているようだ・・・。

フェダリアアイコン

「あれ?・・・無い・・・?」

ミオアイコン

「どうしたの?」

フェダリアアイコン

「お薬に使う薬草が無くなちゃったの・・・」

ミオアイコン

「薬の材料?誰か病気なの?」(この子、薬のためにあんな所に1人で・・・?)

女の子は少しうつむきながら・・・。

フェダリアアイコン

「今ね、お母さん病気なの・・・だから早く良くなって欲しくて・・・」

ミオは少し考えた後・・・。

ミオアイコン

「うーん・・・じゃあ、私がその薬草探してくる・・・どんなのか教えてくれる?」

フェダリアアイコン

「本当!?ありがとう!ミオおねえちゃん!」

ミオアイコン

「???!お、おねえちゃん!?って・・・何で私の名前を?」

フェダリアアイコン

「あのピンク色のねずみさんがそう呼んでたから・・・ミオおねえちゃんって呼んじゃだめ?」

ミオアイコン

「別にいいけど・・・」(チェリーにまったく動じていない・・・この子いったい・・・)

フェダリアアイコン

「やった!」

フェダリアアイコン

「あ・・・薬草はこんなのだよ」

女の子が見せてくれたのは・・・さっき取った中で唯一ゆいいつ残っていた薬草・・・らしいのだが・・・。

ミオアイコン

「何というか・・・」(泥まみれで薬草に見えない・・・一応どういう物かは分かった)

ミオアイコン

「そういえば・・・名前まだ聞いてないね・・・」

フェダリアアイコン

「フェダリアだよ」

ミオアイコン

「フェダリアはお母さんの事・・・大好きなのね・・・」

フェダリアアイコン

「うん、この服ねお母さんが作ってくれたんだ」

そう言うとうれしそうにくるりと回り、手作りの洋服を見せてくれた。

ミオアイコン

「可愛い服ね・・・」

フェダリアは満面の笑みを浮かべている。

ミオはその笑顔を見て少し安心した。

ミオアイコン

「私はそろそろマッドカーサに行ってくる・・・」(こわい思いをしただろうから心配だったけど・・・大丈夫そうね・・・)

フェダリアアイコン

「気を付けてね!おねえちゃん!・・・」

そう見送られたミオは再びマッドカーサに向かった。

ヴェルディスアイコン

「・・・」

その後はひたすら草とにらめっこしている・・・。

ミオアイコン

「これ・・・あ、違った・・・」(こっちか)

ミオアイコン

「これで全部かな・・・!!?」

バチン!いきおいよく閉じた水竜の口が音を立てる。

ミオアイコン

「あ、危なかった・・・」(落ち着いて探し物もできない・・・)

ヒュドラアイコン

「お前・・・よくも俺のご馳走ちそううばってくれたな・・・」

ミオアイコン

「悪いけど・・・私、急いでるから・・・帰らせてもらう」

その場を去ろうとしたミオの行く手をはばむように水竜の首がすべり込んできた・・・。

第6話 くしたもの、消えない記憶 前編(2)

ミオアイコン

「・・・!!」(近い・・・)

ヒュドラアイコン

「どうした?もうらないのか?」

ミオアイコン

「・・・って欲しいならり落としてあげても良いけど・・・」

ヒュドラアイコン

「しかし・・・お前」

ヒュドラアイコン

みょう美味うまそうな匂いがするな・・・?」

ミオアイコン

「本当に急いでるから・・・今日中にこの地を離れたいの・・・」(魔族あいつらに気付かれる前に・・・誰かが巻き込まれる前に離れたいのに・・・)

ヒュドラアイコン

「俺様は今・・・この地を訪れる者に」

ヒュドラアイコン

「この地にを離れるよりも先にこの世に別れを告げることを強くすすめているところだ」

ヒュドラアイコン

「だから、お前・・・俺様にクワレロ・・・」

ヒュドラアイコン

「このヒュドラ様にな!」

ミオアイコン

「その提案は・・・受け入れられない・・・」

ミオの足にヒュドラの2つの頭が食らい付く・・・。

片方の頭に手を付きそれをじくに交わしたミオだったが・・・もう1つの頭の牙が足をかすった。

ミオアイコン

「・・・っ!しまった・・・少しだけど肉を持って行かれた・・・」(食べられると・・・まずい・・・)

何とか着地したミオのところにやって来たチェリー。

チェリーアイコン

「ミオ!大丈夫!?血が・・・」

ミオアイコン

「チェリーこの薬草を持ってフェダリアのところに急いで!」

その時だった・・・以前り落としたはずの首がボコボコと音を立て再び頭が生えた・・・。

チェリーアイコン

「頭が生えた・・・しかも2つに・・・増えてる・・・」(もしかして食べられたの・・・?)

ヒュドラアイコン

「予想以上に美味うまい肉だな・・・頭も増えて食欲も倍増したようだ・・・!」

ミオアイコン

「チェリー!急いで・・・」(頭が増えるなんて・・・どんな食欲なの・・・?)

チェリーアイコン

「ミオも逃げようよ!足、怪我けがしてるんだよ!戦えないよ!」

ミオアイコン

「見て通り・・・状況が変わった・・・簡単には逃してもらえそうには無い・・・」

ミオアイコン

「だから一緒には逃げない・・・今アイツが食べたいのは私・・・」

ミオアイコン

「今逃げても必ず私を追ってくる・・・」(そんな状況で村に戻れば・・・村の人も危険になる・・・)

ミオアイコン

「行って!必ず追いつくから」

チェリーアイコン

「う〜、分かったよ・・・」

チェリーアイコン

「必ず戻ってよ!食べられたら許さないから!」(薬草・・・重い・・・)

ミオアイコン

「言われなくても・・・大人しく食べられるつもりはない・・・」(とは言え・・・長く戦う余裕よゆうはない・・・)

ミオアイコン

「・・・」(戦って勝てる確率は30%位かな・・・)

ヒュドラアイコン

「ミオ?その名前聞いたことあるな・・・確か願意の血統ファントムブラッドを持つ最後の生き残り・・・いや今は死を招く血と呼ばれていたか?」

ヒュドラアイコン

「道理で美味うまい訳だ・・・骨まで喰いたくなってきた・・・」

そう言ったヒュドラの牙がミシミシと音をたてするどとがった・・・。

ミオアイコン

「いつの間にか嫌な方の有名人になってる・・・」(・・・生存確率が15%位になった気がする・・・)

ミオアイコン

「・・・」(どうにかして・・・村までの道が分からないように逃げる方法を)

ミオアイコン

「それにしても・・・すごいよだれね・・・」(そんなに私って美味おいしいの・・・?・・・!・・・あれは・・・)

突然とつぜん走り出すミオ、泥に足をとられながらも辿たどり着いたのはそびえ立つがけの前だった・・・。

ヒュドラアイコン

まさにふくろのねずみだな・・・」

そう言い突進とっしんするヒュドラの目に映ったものは・・・。

ヒュドラアイコン

「笑った?」

その直後正面にとらえていたはずのミオの姿を見失った。

ヒュドラアイコン

「消えた!?」

しかし気づいた時には目の前は岩の壁、激突げきとつけられなかった。

がけにぶつかり少し動きを止めたヒュドラの頭を渡りがけの上を目指そうとしているミオ。

ミオアイコン

「それにしてもすごい石頭・・・」(頭・・・がけにめり込んでる・・・何とか飛べてよかった・・・)

そんな事を思っていたらヒュドラの体が小刻こきざみにふるえている・・・。

ヒュドラアイコン

「ギャルルル」

ミオアイコン

「・・・!動き出した」(復活早・・・)

急いでヒュドラからがけに飛び移ったミオ、強化した刀を岩の隙間すきまに突き刺し何とか登っていた時・・・。

ミオアイコン

「折れないでよ・・・」

突然とつぜんはげしいれがおそう・・・そのれで刺した刀がかたむいて抜けそうになっている。

ミオアイコン

「・・・!」

思わず下の様子を確認するミオ。

そこにはミオを落とそうと体当たりをり返しているしているヒュドラの姿が・・・

ヒュドラアイコン

「必ず引きづり落としてってやる・・・」

ミオアイコン

「何あれ・・・絶対・・・降りたくない」

やっとの思いで上の方まで登ってきたミオだったがある問題に打ち当たる。

ミオアイコン

「どうやったらヒュドラを無力化できる?」(元気そうだし・・・)

ミオアイコン

「そして・・・流石に腕が・・・痛い・・・揺れるし」(足の動きも悪い・・・)

そんな時だったミオはある事に気づく・・・。

ミオアイコン

「何か・・・」(あの岩・・・割れてきてる・・・?)

ミオアイコン

「これを登り切れば・・・」

崖の一番上に手をかけ刀を足場に勢いをつけ一回転して登るミオ。足場にした刀は程なくして下へと落下した。

ミオアイコン

切羽詰せっぱつまると・・・頑張れるものね・・・」(ある意味・・・普通じゃなくてよかった)

ミオアイコン

「・・・」(なぜか普通に登るより回転する方が楽・・・)

登りきってもなお落とそうとがけへの体当たり止めないヒュドラ・・・。

ミオアイコン

「本当・・・執念しゅうねん深い・・・」

ミオは両手で忍刀を具現化ぐげんかするとヒュドラの体当たりでひび割れ、今にも落ちそうになっている大岩のもろくなっている部分にタイミングを合わせ2本の刀を突き立てた。

ミオアイコン

「これでも・・・食べてて・・・」

大岩にミシミシとヒビが入り、大小様々だいしょうさまざまな岩がり注ぐ。

ドスドスっと落ちる音が止んだ頃にはれはおさまっていた・・・。

下をのぞき込むミオ、そこには一番大きな岩に動きをさまたげられ動けなくなっているヒュドラの姿が・・・。

ミオアイコン

「食べるには大き過ぎたみたいね・・・」

ミオアイコン

「私も急がないと・・・」(ヒュドラが動けるようになる前に・・・)

そう言うと足を少し引きづりながらも村に向けて浅い川を歩き始めた・・・。

第6話 くしたもの、消えない記憶 中編(1)

その頃チェリーは・・・。

チェリーアイコン

「重い、すごく重い・・・この泥!」

何とも重そうに村を目指していた。

それもそのはず・・・薬草はしっかりと湿地しっちの泥におおわれており小さなチェリーにとっては重い・・・尚且なおかつつ遠い・・・。

チェリーアイコン

「あと半分くらいかな・・・」(遠い!ミオ・・・早く来ないかな・・・)

チェリーがそんな事を考えている時・・・。

ザバザバと浅い水辺を歩いて進むミオの姿があった。

ミオアイコン

「・・・そろそろ道に戻ろうかな・・・」(これで匂いで追うことも難しいはず・・・)

ささっと水から上がるミオ。

ミオアイコン

「ふぅ・・・なんか今更いまさら、足の痛みにも慣れてきた・・・」(何だか・・・少しだけど昔より治りが悪くなってる気が・・・)

ミオアイコン

「・・・」(追って来てはないみたい・・・?・・・チェリーは近くにいる・・・)

ミオが辺りを見渡すと・・・。

チェリーアイコン

「もう・・・もう・・・足が進まない・・・」

まるで亀のようなスピードで進んでいるチェリーの姿が・・・。

ミオアイコン

「チェリー!・・・」(スローモーションに見える・・・)

ミオアイコン

「大丈夫・・・!?」

思わずけ寄るミオ・・・。

チェリーアイコン

「よかった・・・無事だった・・・」(もうヘロヘロ・・・)

ミオアイコン

「・・・重かったでしょ・・・私が持つよ・・・薬草」

チェリーアイコン

「・・・ありが・・・と・・・う」

あたりはすでに暗くなっていた・・・2人が速く村に戻らなくては・・・そう思い歩き出そうとした時だった・・・。

ミオとチェリーアイコン

「・・・!!」(この気配・・・まさか!)

2人の顔色が変わる・・・。

ミオアイコン

「急に現れた・・・?」

チェリーアイコン

「昼間は何も感じなかったのに・・・」

つかれも忘れミオ達はけ出した。

もう少しで村に着くそんな時、村の方から聞き覚えのある声がひびく・・・だがそれは明らかに悲鳴だった・・・。

辿たどり着いた先で2人が目にしたものは・・・。

ミオアイコン

「フェダリア!」

そこに倒れていたのは昼に笑顔で見送ってくれたフェダリアだった・・・夢中でけ寄り抱き上げるミオ・・・。

ミオアイコン

「フェダリア・・・どうして?私はそんなに長く過ごした覚えもない・・・関係も何もない・・・まだこんなに小さいのに・・・」(なぜ死ななければならない・・・)

フェダリアはするどい刃物のようなもので心臓をつらぬかれており、ミオが来るほんの少し前に息を引き取っていた・・・しかし何故魔族が武器など使ったのか謎でもあった・・・。

フェダリアの服は大量の出血により薄暗い中ですら紺色こんいろの服は黒く染まって見えた・・・フェダリアを降ろしたミオの手もまだ生暖かい血で染まっていた・・・。

村人の男性アイコン

「何があったんだ?」

村人の女性アイコン

「あの子・・・フェダリアちゃんじゃない・・・?・・・何でこんな事に・・・?」

数人ではあったが人が集まって来ていた・・・。

村人アイコン

「一体誰がこんなことを・・・」

周りがそんな話でざわめきだした時・・・一人の女性がふるえた声を上げる。

妊婦の女性アイコン

「わ・・・私・・・そこにいる子がフェダリアを刺すのを見たわ!」

その女性はミオを指差しそう言い放ったのだ・・・。

ミオとチェリーアイコン

「・・・!!!!?」

ミオアイコン

「私は・・・殺してない・・・」

それを聞いた村人の男性がその女性をいさめる。

村人の男性アイコン

「ちょっと待てよ・・・あの子・・・フェダリアを抱き上げて泣いてたんだぞ・・・」

妊婦の女性アイコン

「そんなのあの子の自作自演よ!」

ミオアイコン

「だから・・・私は・・・」

その言葉を否定しようとした時・・・ミオはその女性の言葉の意味を理解した。ミオが殺したと必死に訴える妊婦の女性であったが問題はその後ろに立つ異質な雰囲気ふんいきの男だった・・・。

ミオアイコン

「・・・」(おどされているのね・・・2人の命が人質・・・か・・・下手に動けば犠牲者ぎせいしゃが増える・・・)

男は女性の後ろに立ち女性の顔は強張こわばっている・・・しかし、その表情もこの状況では何ら不思議ではなかった・・・女性の意見に反対するものもいたが後から集まった村人も含めてその目の前の状況と女性の証言により人々は恐怖と不安で正常な判断などできる状態ではなくなっていた・・・一度広がった不安を払拭ふっしょくする事などすでに不可能だった。

村人の細身男性

「あの子が犯人なら捕まえた方が・・・いいんじゃないか?」

村人女性アイコン

「でも、相手は子供を殺すような子なんでしょ・・・下手したら皆殺しにされるんじゃ・・・」

ざわめく人々・・・。

そんな中、1人が家から包丁を持ち出して来た・・・。

ミオアイコン

「・・・」(強いにくしみ・・・でも他の人とは違う・・・これは愛情・・・なの?)

村人男性アイコン

「フィリアさん!駄目だめだ、近づいたら殺されてしまう・・・」

その女性は明らかに衰弱すいじゃくしており・・・足元も覚束おぼつかない・・・。

フィリアアイコン

「どうして・・・?フェダリアを・・・殺したの?・・私の娘を!」

その言葉を聞いたミオは迷う事なく包丁を持っているフィリアに近づく。

ミオアイコン

「・・・そう・・・貴女あなたが・・・フェダリアの・・・」

チェリーアイコン

「ミオ、危ないよ!・・・」

そんなチェリーを後目しりめにミオはフィリアの前に立った・・・。

フィリアアイコン

「・・・!!?」

今にも倒れそうになりながら突き出された包丁、それを持つ手首をにぎったミオ。

ミオアイコン

「私は、フェダリアを殺してはいない・・・だけど・・・私のせいで殺されたかも知れない」

そう言うと・・・ミオはフィリアの包丁をにぎったままの手を自分の首の前に近づけた・・・。

フィリアアイコン

「!・・・???」

ミオアイコン

「もし・・・貴女あなたがその手で私を殺す気があるなら・・・少し力を入れれば殺せる・・・」

ミオアイコン

「でも1つだけ・・・貴女あなたに言えるのは・・・私を殺しても苦しむのは貴女あなた自身・・・何も救済きゅうさいはない・・・それでも良ければ・・・刺せばいい・・・」

フィリアははげしく動揺どうようして尻餅しりもちをついた・・・。

フィリアアイコン

「どうして・・・刃を向けられて・・・平然としていられるの?・・・私は貴女あなたを殺そうとしてるのに・・・」

第6話 くしたもの、消えない記憶 中編(2)

ミオアイコン

「フェダリアは貴女あなたのことが大好きだった・・・つまりそれは貴女あなたがフェダリアの事を大切にしていたからでしょ・・・?」

ミオアイコン

「私には愛情とかそういうの詳しく分からないけど・・・大切な人をくした痛みは知ってるつもり・・・」

フィリアアイコン

「フェダリアと話したの・・・?」

フィリアアイコン

「でも・・・包丁を持っている手を自分の首に近づけるなんて普通じゃないわ・・・」

フィリアアイコン

「私が力を入れれば死ぬんでしまうのに・・・?」

ミオアイコン

貴女あなたは・・・私を殺せない・・・優しそうだもの・・・」

ミオアイコン

「でも貴女あなたの憎しみは本物だった・・・だけど・・・無抵抗な人間を殺せるほど残酷ざんこくではない・・・」

そう言い背を向け去ろうとした時。

村人女性アイコン

「つ、捕まえなくて・・・いいの?あの子」

戸惑とまどう村人の声が聞こえた。

ミオアイコン

「もし・・・私を殺したい人が今ここにいるなら・・・1つ聞きたい・・・」

ミオアイコン

「あなた達は・・・人を殺めた時・・・殺めた後、そのとがを背負い生き続けることができる?」

ミオアイコン

「その罪悪感に耐え続けることができる・・・?その覚悟があるなら私を追って来ればいい・・・」

問われた村人達は言葉を失った・・・。

それを見たミオは無言で暗い森へ姿を消した・・・。

そこからかなり離れた場所、月明かりの差し込む木の前に座り込んだミオとチェリーの姿があった・・・。

チェリーアイコン

「何で・・・刃物持ってる人に近づくの?死にたいの!?」

そう怒るチェリーだったが・・・。

ミオアイコン

「私は・・・どうすれば・・・良かったの?」

ミオアイコン

「ヒュドラに食べられそうなフェダリアを助けない方が良かったの?」

ミオアイコン

「・・・」(どちらを選んでも・・・フェダリアは死んでいたの・・・?)

ミオアイコン

「でも・・・助けても、それ以上関わらなければ・・・フェダリアはまだ生きていたかも・・・知れない・・・」

ミオアイコン

「殺したのは・・・私・・・私が殺したようなものよね・・・」

チェリーアイコン

「違うよ!ミオがもし薬草を探しにいかなかったら・・・フェダリアは1人でヒュドラのいる湿地に・・・」

ミオアイコン

「行かなくても・・・良かった可能性もあった・・・」

ミオアイコン

「私の考えが浅かったせい・・・」

怪しげな男アイコン

「そうです・・・貴女あなたのせいであの子供は死んだのです・・・」

その言葉と共に氷の槍がミオの肩をつらぬいた。

ミオアイコン

「!・・・」

暗闇からこちらに近づいて来たのは先ほど村にいた異質な気配の男だった・・・その姿は次第に姿を変え青白い肌の魔族が現れた。

ミオアイコン

「正に人の皮をかぶった悪魔って奴ね・・・道理で気配が薄い・・・しかもこの上なく悪質」

ヴェルディスアイコン

わたくし・・・ヴェルディスと申します」

ヴェルディスアイコン

「嬉しいですね・・・おめ預かり光栄です」

そう言い不敵な笑みを浮かべたヴェルディスはミオの足を強くみつけた・・・。

ミオアイコン

「ウッ・・・」(足の骨・・・折れた・・・)

チェリーアイコン

「・・・なっ」(なんて性悪なの・・・)

ヴェルディスアイコン

「申し訳ございません、思わず折ってしまいました・・・」

ヴェルディスアイコン

「しかし、思ったより悲鳴を上げてくれませんね・・・すごく聞いてみたかったのに」

ヴェルディスアイコン

「そうです!こちらの足も折ってみましょう」(我ながら名案です)

そう言いもう一方の足を折ろうとしたヴェルディス、その足をりつけるチェリーだったが・・・。

ヴェルディスアイコン

「何ですか・・・?このねずみは?」

ヴェルディスアイコン

邪魔じゃまですし殺しましょう」

ミオとチェリーアイコン

「!!!」

ヴエルディスアイコン

「それに貴女あなたのせいで村人の断末魔だんまつまを聞き損なったじゃありませんか・・・」(いきなり移動してしまうから・・・)

その間も肩に刺さった槍を抜こうとしているミオ・・・。

ヴェルディスアイコン

「おや・・・思ったより抵抗しますね・・・」

ヴェルディスアイコン

「もう少しあの子供にはギリギリに死んで貰えば良かったですね・・・」(そうしたらもう少し精神的に弱って・・・)

そんな時だった・・・ミオの様子に少し変化が起こる・・・自分の血のついた手を見て少しふるえているようだ・・・そんなことは気にせずチェリーをみ殺そうとしたヴェルディス・・・。

ヴェルディスアイコン

「もう一人・・・貴女あなたのお友達を目の前で死んでいただきましょう」

しかし、ヴェルディスは身の危険を感じたのか思わず飛び退く・・・。

赤い目のミオアイコン

「これ以上・・・私の・・・周りの人間に手を出さないで・・・」

ヴェルディスアイコン

「あの槍を自力で・・・?しかも・・・立っている?骨は確かに折れていたはずなのに」(骨だけ先に再生したのでしょうか・・・)

チェリーアイコン

「ミオ・・?」(何だか・・・いつもと違う)

赤い目のミオアイコン

「これ以上・・・誰も・・・死なせない・・・」

そう言いミオが具現化ぐげんかしたのは今まで見たことのないき通った青白い刃を持つ紫の大鎌だった・・・。

チェリーアイコン

「あんな武器・・・今まで見た事ない・・・」

ヴェルディスアイコン

「闇属性の武器ですか・・・我々闇の住人を闇でるなど不可能です」

他の魔族達呼び出すヴェルディス。

ヴェルディスアイコン

「手負いのお嬢様などわたくしが出るまでもありません」(いえ、ただの捨てごまですが・・・)

手下の悪魔アイコン

「まぁ、そういう事だから悪く思うなよ・・・」(ヴェルディス様・・・悪魔使い荒い・・・)

一斉に飛びかかったはずの魔族達だったが・・・。

手下の悪魔アイコン

「・・・どこに消えた!?」

ヴェルディスアイコン

「数が多いのに手負いの相手を何故見失っているんですか・・・」

その次の瞬間に現れた青白い光と共に一部の魔族達が消滅していく・・・。

ヴェルディスアイコン

「今のは・・・光?確かにあの武器は闇属性だったはずですが・・・?」(そもそも何故・・・闇の武器を?)

考えを巡らせる間にも呼び出された魔族達は消滅してゆく・・・残された者達の前に現れたのは紛れもなく先ほど足を折られたはずのミオであった・・・血に染まった衣服がその傷のひどさを物語る・・・もはや何故動いているのかも分からないほどだった。

ヴェルディスアイコン

「・・・どうやら無痛状態のようですね」(彼らの攻撃をけてすらいない・・・恐れ入りますね・・・)

赤い目のミオアイコン

月華閃げっかせん

ミオが持つ大鎌の刃が青白い光を放ち振り抜かれた後に残された残光はまるで蒼い月のようなだった。その一撃で残された魔族を一掃いっそうしたミオだったが。

ヴェルディスアイコン

「・・・いただきです!」

後方から投げられた5本の氷のナイフが空をく。

赤い目のミオアイコン

「・・・!」

5本のうち2本は鎌によりはじかれたが残りの3本は太腿ふともも、腹部、そしてもう1本はほほかすめた・・・。

痛みさえ感じていなかったミオだがすでに多くの傷を負っていた事もありその場で意識を失ってしまった・・・。

第6話 くしたもの、消えない記憶 後編(1)

チェリーアイコン

「ミオ!・・・」(どうしてこんな無茶な戦い方を・・・普段なら・・・もっと・・・)

ヴェルディスアイコン

「本当に手間のかかるおじょうさんですね・・・こんなに血を無駄遣むだづかいして・・・」

ヴェルディスアイコン

折角せっかく美味おいしいのに・・・勿体もったい無いじゃないですか・・・」(殺さず連れて来いとは・・・あの方も性格が悪い・・・ですが)

ヴェルディスアイコン

「少しぐらい・・・食べてもばちは当たりませんよね・・・?」

そう手を伸ばすヴェルディス・・・。

チェリーアイコン

「ギャー」

チェリーアイコン

「ミオ!起きて!た、食べれちゃう!」

しかし、全く目を覚ます気配はない。

チェリーアイコン

「ミオには手を出させないから・・・」

チェリーは小さい体で必死に守ろうとしている・・・。

そんな時だった、どこからともなく現れたふだが張り付きヴェルディスの背がただれた・・・。

ヴェルディスアイコン

「チッ」(ふだですか・・・)

謎の声アイコン

「えらくあばれてくれたようだな・・・ここは私の縄張りである事を忘れないことだ・・・」

謎の声アイコン

「勝手は許さぬぞ・・・氷魔ひょうま

そこに立っていたのは白い耳と尻尾を持つ黒髪の女性だった。

ヴェルディスアイコン

「これはこれは・・・狐神様じゃないですか・・・」(これは面倒なことになりそうですね・・・)

ヴェルディスアイコン

「それでは仕方がありません・・・別の場所にしましょう」

そう言いミオをつかもうとしたヴェルディスの手がジューっと音を立てただれた・・・。

ヴェルディスアイコン

「クッ」(たいしたコントロールですね・・・紙を飛ばしてるとは思えません・・・)

狐神アイコン

「先ほどの言葉では伝わらなかったようだな・・・」

狐神アイコン

「私もそこの娘には用事があるのだ・・・ゆえにその娘に手を出すな・・・」

狐神アイコン

「そして早々に立ち去れ・・・もなくばこの場で跡形もなくかしてやろう」

ヴェルディスアイコン

「おやおや、これはまたおそろしい事を言いますね・・・」

ヴェルディスアイコン

「仕方ありません・・・今日のところは退いてあげましょう・・・」(もうすぐ夜明け・・・能力が落ちるのに戦うほどおろかではありません)

そう言いヴェルディスは闇の中へと姿を消していった・・・。

チェリーアイコン

「行った・・・?」

そんなチェリーの頭に何かが当たった・・・。

カルマアイコン

「今日はネズミ狩りか・・・?」

そう言いながらかぎくわえた狐がクンクンと匂いをいでいる。

チェリーアイコン

ねずみじゃないって・・・え・・・・!」

狐神アイコン

無駄口むだぐちを叩いてるひまはない・・・急ぎ百尾神社ひゃくびじんじゃに戻る」

狐神アイコン

「フツマ、カルマ運ぶのを手伝え」

フツマアイコン

紅香こうか様・・・何故なにゆえこの人間を助けるのです?」

コウカアイコン

「事情は戻ってから説明しよう」

コウカアイコン

「それでもまだしゃべりたいなら石像に戻すぞ?」

フツマアイコン

「いえ、何も・・・」

カルマアイコン

「イエッサー・・・」

フツマはミオを背に乗せると空間に穴が空いているようにも見える光の中に消えって行った・・・。

チェリーアイコン

「えー!?どこ行くの〜!!!」

コウカアイコン

「お前は一緒になくていいのか?」

チェリーは紅香こうかにそううながされ急いで後を追いかけた。

そんなチェリーを見送った紅香こうか・・・。

コウカアイコン

「さて・・・お前は一緒に来なくて良いのか?蒼月竜そうげつりゅう・・・」

そこにあったのは月明かりを背に降り立ったシェイドの姿だった。

シェイドアイコン

「フッ、何故我なにゆえわれが・・・」

コウカアイコン

「何か訳ありなのだろう?でなければ色々説明がつかん」

シェイドアイコン

「話す義理もなければついていく理由もない・・・」

チェリーアイコン

「その後・・・その狐神が助けてくれて何とか・・・」

ナイトアイコン

「昔そんなことが・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・分からんことが多い話だな」

ヴァンリートアイコン

契約けいやくした訳でもなく特殊とくしゅな武器を具現化ぐげんかしたり・・・」

ナイトアイコン

「でもそれって、ヴァンと契約けいやくする前に一度あったよな・・・」

ヴァンリートアイコン

「確かに・・・ではミオにも仮契約かりけいやくの奴が・・・?」(・・・何でお前ができた?)

ウルアジスアイコン

「・・・」(こいつら・・・俺のこと忘れてないか・・・)

ナイトアイコン

「そんなことより・・・その大鎌を具現化ぐげんかした時、一体何が起こったんだ?」

ナイトアイコン

「倒れるまで戦い続けることなんて普通ならできないだろ・・・」

チェリーアイコン

「どうやら・・・原因はフェダリアが殺されたこと・・・」

チェリーアイコン

「条件がそろうとフラッシュバックが起こるみたいなの・・・」

チェリーアイコン

「その錯乱状態さくらんじょうたいの時に何かが重なると・・・痛みを感じない状態になるみたい・・・」

ヴァンリートアイコン

「だが・・・そうなると必然的ひつぜんてきに死ぬまで戦うことになる・・・」

ナイトアイコン

「どうにか・・・それだけでも止める方法ないのかな・・・」

ナイトとチェリーとヴァンリートアイコン

「・・・」

ヴァンリートアイコン

保留ほりゅうで・・・」

ナイトアイコン

「ずっと気になってるんだけど・・・何でミオはそんなに食べられそうになってるんだ」(やたら皆んな食べるって言ってるよな・・・)

チェリーアイコン

「それは・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・血だろうな・・・」

ナイトアイコン

「血・・・?血がどうかしたのか?」

ヴァンリートアイコン

「血筋・・・と言ったところだ・・・しかもいわく付きのな・・・」

チェリーアイコン

「人間には分からない人が多いと思うけど、ミオが願意の血統ファントムブラッドだっていうのは有名なの」

チェリーアイコン

「いや、人間でもうわさで聞いたことあるって人は多いかも知れない・・・」

ナイトアイコン

「それ、どう有名なの・・・?」

チェリーアイコン

魔族まぞくにつけ狙われる血筋・・・」

ナイトアイコン

「それは・・・嫌な血筋だな・・・」

ヴァンリートアイコン

「元々はもっと別の意味を持っていたらしいが・・・」

ヴァンリートアイコン

「その血の味を覚えた魔族まぞく達はこぞってその血を求めるようになったのだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「結果的にその血を持つ者を付け狙うようになり、ついでに周りの人間も襲撃しゅうげきされたことによりその血を宿したものを・・・「死を招く血」と呼ばれるようになった・・・それが今のファントムブラッドだ」

第6話 くしたもの、消えない記憶 後編(2)

ナイトアイコン

「死を招く血・・・ってそんなの・・・」(そんな呼び名って、血なんて選ぶことも変えることもできないのに・・・)

ヴァンリートアイコン

「だが・・・願意の血統ファントムブラッド随分ずいぶん昔に魔族に滅ぼされたと聞いていた・・・それに」(あの血筋は本来人間のものではない・・・)

チェリーアイコン

「・・・」

ナイト達の様子を見て悩んでいたチェリー。

チェリーアイコン

「私・・・今から・・・ミオを追おうと思うんだけど・・・2人はどうするの?」

ナイトアイコン

「何で聞くんだ?行くに決まってる」

チェリーアイコン

「・・・でも」

チェリーイコン

「死ぬかもしれないだろ?」

ナイトアイコン

「何度も聞いたよ・・・って言うより来るなって言われても行くけど」

ヴァンリートアイコン

「・・・私は・・・後を追うのは契約精霊けいやくせいれいとして、守護しゅごするものとしては反対だ・・・」

ナイトアイコン

「ヴァン!?」

ヴァンリートアイコン

「だが、私個人としてはナイトの意志を尊重そんちょうする・・・」

ナイトアイコン

「じゃあ」

ヴァンリートアイコン

「賛成だ・・・まぁ、折角せっかく行くんだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「お前のその意思をミオに伝えろ、血のために心を閉ざした者にもわかるようにな・・・」

ナイトアイコン

「・・・!あぁ!」(俺も今度こそ・・・約束を守る・・・)

チェリーアイコン

「・・・2人とも・・・ありがとう」

ナイトとヴァンリートアイコン

「???」

ウルアジスアイコン

「おーい、さっきから聞こえてるか?・・・それとも無視か?」

ナイトアイコン

「何か様子おかしいぞ」

チェリーアイコン

「熱中症になったとか?」

ヴァンリートアイコン

「いや・・・奴は前からおかしいぞ」

ウルアジスアイコン

「お前ら・・・良い加減かげんそのいじりやめろ」

ナイトアイコン

「で、何でまだいるんだ?とっくの昔に動けるようにしただろ?」

ウルアジスアイコン

「お前らが追おうとしてる小娘の事で気になる事があったから、教えといてやろうと思っただけだ・・・」

ナイトとチェリーとヴァンリート

「!!!」

思わず耳を疑った。

ナイトアイコン

「気になることって何だよ・・・」

ウルアジスアイコン

「あの小娘が去っていった時、前方からレイテル騎士団の連中の臭いがしていた・・・」

チェリーアイコン

「それに問題が・・・?」

ウルアジスアイコン

「大ありだ・・・特に返り血を浴びたあの服じゃな」

ナイトアイコン

「それは危険かもな・・・その状況・・・」

チェリーアイコン

「何で?何で危険なの?」

ナイトアイコン

「確かレイテルの王子宛に殺人予告があったらしくて・・・それがきっかけで取り締まりがきびしく・・・て言うより」

ウルアジスアイコン

理不尽りふじんになったらしい」

チェリーアイコン

「え・・・それってダメでしょ・・・」

ウルアジスアイコン

「ダメだろうと何だろうと殺人予告を出された王子の兄貴が騎士団長をやっているのもあって特に警戒けいかいしているようだ」

ヴァンリートアイコン

「理由は何であれ急いだ方が良さそうだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「だが・・・どういう風の吹き回しだ?」

ウルアジスアイコン

「風のことはお前の方がくわしいだろ?」

ウルアジスアイコン

「まぁ、なんだ・・・お前らが小娘の話をしてるのを見て・・・ちょっと人間も全部が悪い訳じゃないかもなと思っただけだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「そうか・・・ではお前のその良心に感謝せねばならんな」

ウルアジスアイコン

「!・・・そんなにあっさり・・・俺の言葉を信じるのか?罠の可能性もあるだろ・・・」

ヴァンリートアイコン

「変な奴だな・・・お前が言ったことに違和感はなかった・・・」

ヴァンリートアイコン

「それに・・・とてもうそをついてるようには見えなかったからな・・・」

ウルアジスアイコン

「・・・!」

ナイトアイコン

「俺達もそろそろ行くか!」

ヴァンリートアイコン

「ナイト!チェリー!私に乗れ!ぶ方が走るより速い」

ナイトアイコン

「だよな・・・!」

そう言いヴァンに飛び乗るナイト。

チェリーアイコン

「あ、ちょっと待ってよ!」

ヴァンが力強く羽ばたいた時、ウルアジスの声がひびいた。

ウルアジスアイコン

「おい、小僧!1つあの小娘に伝えて欲しい事がある!」

ウルアジスアイコン

「魔族が各地の魔獣に何か吹き込んでいるようだとな!」

ナイトアイコン

「わかった!必ず伝える!」

ウルアジスアイコン

「フン、ならサッサと行け・・・」

ナイトアイコン

「自分が呼び止めたんだろ・・・」

ナイトアイコン

「よく分からないけど、お前も元気でな!」

そう言い残しび去ったヴァンの姿はあっという間に小さくなっていく・・・。

ウルアジスアイコン

「元気でな・・・か、軽く言ってくれるな・・・」

ウルアジスアイコン

「・・・自分の思い通りに動かないこまを消しにきたのか?氷魔ひょうま・ヴェルディス・・・」

ヴェルディスアイコン

「おや、バレてましたか・・・?」

ヴェルディスアイコン

「まぁ、楽しくないおもちゃには興味は無いですね・・・」

ウルアジスアイコン

「やたら強え人間のガキの次は氷魔ひょうまが相手とは・・・チッ・・・ホントついてねぇな・・・」

その頃・・・レイテル近辺の森では・・・。

ミオアイコン

「・・・」(人間・・・か・・・相当警戒けいかいされてる・・・)

只々ただただ・・・風の吹き抜ける音だけがしているが確実に不穏ふおんな空気が流れていた・・・。

ミオアイコン

「・・・私に何か用事でも?」

そう言った途端とたん予想以上の数の兵に囲まれてしまったミオ。

ミオアイコン

「とりあえず・・・その槍を下ろしてもらえない?」(・・・全然聞く耳無し・・・)

ミオアイコン

ちなみに・・・何で私はその槍を向けられているの?」

その問いに1人の兵士が答えた。

レイテル兵士アイコン

「先ほどこの近辺きんぺんで我がレイテル兵の一団が何者かによって襲撃しゅうげきを受け壊滅かいめつした・・・」

ミオアイコン

「それで?」

ミオアイコン

「私がその人達に何をしたっていうことになってるの?」

レイテル兵士アイコン

襲撃及しゅうげきおよび殺人・・・だそうだ・・・」

ミオアイコン

「その裏づけは?」

レイテル兵士アイコン

「その服の返り血だ・・・そうだ」

ミオアイコン

根拠こんきょはそれだけ・・・?その推測すいそくで私を捕まえると・・・」

ミオアイコン

状況証拠じょうきょうしょうこだけで殺人容疑をかけて無理矢理捕まえるってどうかと思うけど・・・」

レイテル兵士アイコン

「俺も・・・そう・・・いや!そんな事はない!」

ミオアイコン

「・・・貴方あなたも苦労してるのね・・・」

そんな時・・・突然とつぜんその場の空気が張り詰めた・・・。

レイテル兵士アイコン

「エクティス団長!」

ミオアイコン

「・・・・・・」(あれが・・・団長・・・レイテル第一王子・・・)

エクティスアイコン

「話は後で聞く・・・」

エクティスアイコン

「それと・・・早々に捕らえろと命じたはずだが」

レイテル兵士アイコン

「はっ・・・」

そう言われ兵士たちの槍がスッとミオの首元に近づけられた。

ミオアイコン

「・・・急に動きが良くなったわね・・・でも流石さすがにこの対応は納得できない・・・」

エクティスの指先がかすかに動いた次の瞬間しゅんかんミオの首筋に痛みが走った。

ミオアイコン

「・・・吹き・・・矢?」(この土地でも吹き矢ってあるの・・・?)

それと同時に周りの兵は槍をおさめミオはその場に倒れ込んでしまった。

レイテル兵士アイコン

護送ごそうしろ・・・私は一度城に戻る・・・」