STORY
第5話 不穏な足音 前編(1)
「・・・」(私は・・・どうすべきなのだろう・・・)
木の上で何かを悩んでいる様子のミオを遠くから眺めていたナイトはヴァン達に尋ねる。
「なぁ、ミオは何をそんなに悩んでるんだ?」(話しかけづらいし・・・)
「知らんな・・・」
「私にもわからない・・・」
「そっか」(・・・ずっと何も食べてないけど・・・腹減らないのかな・・・)
「・・・」(言えない・・・)
「・・・」(・・・置いていくか悩んでるなんて・・・)
するとナイトは何かを閃いたようにどこかへ走って行ってしまった。
「・・・???」(何だろ・・・今の・・・)
それから暫くして大きな荷物を持って帰ってきたナイト・・・。
「・・・おかえり?・・・で何持って帰ってきたの?」
ドスっと地面に置いた荷物の中身は・・・。
「これ飯盒だ!」
「おにぎりでも作ろうと思って・・・」(って言うより他に作れるだけの材料が残ってなかっただけだけどな・・・)
「だが何故、急におにぎりを作ろうと思ったんだ?」
「いや、朝からずっとあんな感じだし・・・」
「会ってから結構見てるけど、ご飯とかほとんど口にしてないし」
「食べたら少しは元気になるかと思って・・・」
「そうか・・・」(飯の問題では無いと思うが・・・)
「ナイトは優しいね・・・」(ずっと一緒にいてあげて欲しいけど・・・本人がね・・・)
「でも、火はどうするの?」
「あぁ、それなら大丈夫」
「俺、火起こすの得意だからさ」
そう言って火打ち石を見せながらナイトは笑った。
「火打ち石・・・」(このご時世に火打ち石で火を起こせるボーイがいるとは・・・)
「ナイトはある意味、絶滅危惧種だね」
「???」(どういう意味だよ・・・それ)
「他の地域では火打ち石はもうあまり使われていないかもしれんが、この土地ではずっと火打ち石で火を起こしていたからな」
「火打ち石で火を起こせるのはここじゃ普通だ」
カチン、カチンと火打ち石をぶつける音が響いている。
「へぇ〜」
「ついた!」
「はやっ」(これ普通?早くない?・・・絶対早いよね)
「これをここに・・・」
手際良く準備を済ませたナイトにチェリーが尋ねた。
「ナイトは料理得意なの?」
「まぁ、苦手って訳じゃない・・・ってくらいだな」
「俺、親父と2人暮らしだったからさ、料理の一つぐらいできるようになれって厳しく仕込まれたんだ」(2年ぐらいの間だけど・・・)
「2人暮しだからって問題なのかな・・・」(ミオは作らないしね)
「・・・」(どう考えても・・・私といれば危険が増える・・・)
「・・・」(ん・・・そもそも悩む余地など無かったはず・・・私は何を迷っている?)
「〜い、ミオ?」
「ん?この声って・・・」
声のする方に視線を落とすと木を見上げるナイトの姿が・・・。
「朝から何も食べてないだろ?とりあえず食べないと身体に悪いぞ」
「・・・・・・おにぎり!?」
「・・・そんなものどこにあったんだろ・・・」
そう言い木の上から飛び降りたミオ。
「・・・!!」(そこ飛び降りるのか!?)
少し焦るナイトを尻目にストっとナイトの前に着地したミオ。
しかし、その着地した一瞬、傷の痛みで顔が歪んだように見えたがすぐに何も無かったようにナイトに声をかける。
「で、おにぎりなんてどこに・・・」(傷の修復が間に合ってない・・・)
ナイトはその一瞬の表情を見逃さなかった。
「・・・」(今のって・・・)
「・・・私の顔に何か・・・」
「さっき着地した時、一瞬痛そうな顔してたよな?」
「気のせいじゃない?」
そう言い軽く流そうとしたミオ。
「何で・・・ずっと我慢してるんだよ・・・痛い時くらい痛いって言えばいいのに・・・」
「・・・?」(心配してくれってるの・・・かな?でも・・・)
「・・・?」(そう言っている貴方が辛そうに見えるのは何故?)
「別に我慢なんてしてないよ、私は普通・・・」
「でも、心配してくれて・・・ありがとう」(何を心配されてるか分からないけど)
「・・・あんま無理するなよ・・・」(何で隠すんだろ・・・俺、そんなに信用ないのかな・・・)
そんな2人の姿を見ていたチェリー達は口を揃えて呟く。
「素直じゃないなぁ・・・」
「ミオはどうしてあんなに自分の感情を押し殺しているのだ?」
そう小声でチェリーに尋ねるヴァン。
「いや・・・多分、ミオは別に自分が我慢してるつもりがないんだよね・・・素直じゃないだけの可能性もあるけど・・・」
「ミオにとっては痛いとか辛いとか口に出さないのが日常、だから自分が我慢してる認識はサラサラないんだよ」(そもそも助けを求める相手もいないし・・・)
「いったいどんな育ち方したのだ・・・」
「そういえば・・・ミオの傷の治りが早いのは分かるが、どれくらいの怪我だったんだ?」
「あの木片は内臓を貫通してた・・・正直よく立ってたと思う・・・」(普通の人間ならもうこの世にはいないかも・・・)
「・・・」(私が今見てるのは・・・実は亡霊・・・なんてことは・・・)
チェリーとヴァンがそんな話をしている間も。
「私は別に無理はしてない」
「どう見たって、絶対無理してるだろ」
「・・・」(まだ言ってたのか?)
「・・・」(まだ言ってたんだ・・・)
お互いの主張を曲げずにいる2人を見兼ねたチェリー達が駆け寄る。
「ミオ・・・それくらいにしなよ・・・ナイトの主張は間違ってない・・・ミオが無茶が多いのは確かだよ・・・」
「・・・」(私は別に・・・)
「ナイト、お前もそれくらいにしろ」
「ミオにも事情があるようだからな・・・」
「まぁ、どうしても気になるのなら・・・話てくれそうな奴に聞くのも手だろうな」
そう言いながらヴァンはチェリーの方をチラッと見た・・・。
「何でソコ私を見る・・・」
「気のせいだ気にするな・・・」
「気にするし普通!」
そんなチェリーを素通りしヴァンはナイトに耳打ちした。
「・・・」
「・・・女性にあまりしつこくすると嫌われるらしいぞ・・・」
ヴァンに耳打ちされたナイトの表情が少し曇った・・・
「・・・??」(何が起こった?)
第5話 不穏な足音 前編(2)
「・・・」(それはそうかもだけど・・・)
「・・・」(思った以上に効いてるな・・・しかし、ナイトは分かりやすくて面白いな・・・)
あまりのナイトの凹みように思わずヴァンに尋ねるミオ。
「ヴァン・・・いったい何を言ったの?何だか・・・暗いオーラが出てる気がするんだけど・・・」
「こっちの話だ、まぁ・・・あの凹みっぷりは予想以上だったが・・・」
「あの感じなら復活まで時間がありそうだ・・・ミオ、お前はナイトがおにぎりを何故作ったか知りたがっていただろう?」
「ちょっと耳を貸せ」
「・・・・・・」(・・・そんなにも気にかけてくれていたのね・・・)
「と、いう訳だ」
「ミオ、お前に食ってかかるのも心配するが故だ・・・許してやってくれ」
「別に私は最初から怒っていない・・・」
「ナイトは・・・優しすぎる・・・」
「・・・・・・思ったより復活が遅いな・・・悪いがナイトに声をかけてやってくれないか?」
「・・・何故?・・・私?」
「細かい事は気にするな、強いていうなら・・・それがナイトにとっては一番いいからだ」
「・・・」(それ説明になってない・・・)
疑問を感じつつも声をかけることにしたミオ。
「ナイト、あの・・・」(こういう時なんて言っていいのか・・・分からない・・・)
「・・・?」
「ヴァンに聞いたんだけど・・・おにぎり・・・私のこと心配して作ってくれたんだよね・・・」
「・・・まぁ」
「あの・・・心配してくれて・・・ありがとう」
そう言いながら少し照れ臭そうにミオは微笑んでいる、ナイトはそんなミオの表情に少し驚いているようだ・・・。
「別にいいよ、そんなこと気にしなくても・・・」
そう言ってナイトも照れ臭そうに笑っている・・・。
そんな様子を見ていたチェリーはヴァンに尋ねる・・・。
「最初から狙ってたの?」
ヴァンは空を流れる雲を眺めながら答える。
「さぁな・・・私は気まぐれに吹く風みたいなものだからな、適当に過ごしているだけだ」
「・・・」(案外・・・)
「・・・計算高いよね・・・」
そう言われヴァンは軽く鼻で笑った。
「お前ら、そんな所でのんびり話してるとおにぎりが干からびるぞ」
「干からびるって・・・?」
すると、バサバサっという音を立ておにぎりの前で羽ばたいている。
「何でそんなところで遊んでんだ!?」
「ヴァンって悪戯好きだったの?」
「って、ちょっとその風止めて!本当に干からびるから!」
「・・・・・・ちょっと・・・固くなってる」
「・・・」(少々やりすぎたか・・・)
「・・・」(ヴァン・・・もう少し別の方法があったんじゃないかと思う・・・)
「・・・」(案外・・・ヴァンも不器用なのかも・・・)
「うーん、ちょっとこれは食べにくいかも・・・」
そう言っているナイトの横で・・・
「そんなことない・・・すごく・・・美味しい」
「今まで食べたどんなものより美味しい・・・気がする・・・」
おにぎりを食べ終えたミオはナイトに尋ねる。
「ナイト・・・聞きたいことがあるんだけど・・・」
「何でそんなに他人の心配ばかりしているの?」
その質問に当然のように答えた。
「何だ、そんな事か・・・友達を心配するのは当たり前だろ?」(他にも理由はあるけど・・・)
「友・・達か・・・」(何かおにぎりが美味しかった理由わかった気がする・・・)
ミオの目から一雫涙が零れ落ちた・・・。
「ど、どうしたんだよ急に」
「ごめん、大丈夫・・・ちょっと目にゴミが入ったみたい・・・」(嬉しかったのか?・・・私は・・・)
その様子を少し固くなったおにぎりを食べながら見ていたチェリー。
「ミオ・・・」
「・・・」(あの2人もうずっと一緒にいればいいと思う・・・)
そんなチェリーの視線にミオが気づいた。
「チェリー・・・なんか余計なこと考えてない?」
「何でもない!何でもないよ!」
そう言い残しチェリーは激走する・・・。
「逃げた・・・」(今度しっかり聞いとかないと・・・)
「・・・」(チェリー・・・お前は分かりやすいにも程があるぞ・・・)
そんなことを思いながらヴァンは無言でおにぎりを食べていた。
「・・・」(しかしおにぎり・・・って美味い・・・)
そんなヴァンのもとへナイトがやってきた・・・。
「ヴァン、お前・・・あのおにぎり全部食べたのか?」(固いのばっかり結構あったと思ったけど・・・やっぱ胃もデカイから足りなかったのか・・・?)
「おにぎりを固くしてしまったのは私だからな・・・」
「それを気にしてあんなに食べてたのか・・・そこまで気にしなくて良かったのに・・・」
「・・・」(底無しの善人か・・・お前)
「あれ、あのおにぎり全部食べたの?」
「・・・あれ?服着替えたのか?」
「・・・?、ぱっと見変わった様には見えないが・・・」
何の事だか分からない様子のヴァン・・・。
「よくわかったね・・・服のデザインとか全然変わってないのに・・・」
「だってさっきまで着てた服、少し血の痕が残ってたし・・・」
「それが綺麗さっぱり無くなってたら気づくだろ?」
「・・・よく見てるのね・・・一応この服血が目立ちにくい方なんだけど・・・」
「でもいつの間に着替えたんだ?全然気付かなかった・・・」
「いつ着替えてたか知ってても問題になると思うぞ・・・」
「まぁ、それは確かに・・・」
「・・・どういう問題?」
「フッ、今のお前には関係なさそうだがな」
「・・・」(全然意味わかんねー・・・考えるの止めよう、答え出そうにない・・・)
「そういえば・・・ずっと気になってたんだけど」
「何でミオは魔族奴らと戦ってるんだ?」
「理由?理由か・・・そうね・・・強いていうならただの腐れ縁」
「腐れ縁って前にも言ってたよな・・・やっぱりそんなに前から戦ってるのか・・・?」
「それなりに長いと思うけど・・・」(ある意味では貴方が生まれる前からの付き合い・・・だなんて言えないし・・・)
「恐いとか・・・思った事ないのか?」
「恐い?・・・」
「ない事はないかな・・・だけど私がやめてしまったら犠牲者も増え続ける・・・」
「それに・・・恐いと思っていたとしても相手は止まらない」(それに・・・今一番恐ろしいのは・・・)
「・・・」(私自身・・・敵を躊躇せず斬れる自分自身の方が・・・ある意味恐い・・・)
「それって・・・どんなに恐くても、やめたくてもやめられないって事だよな・・・」
何故か思い詰めていそうなナイトに申し訳なさそうにミオが口を開く。
「・・・・・・あの・・・私何か傷つけるようなこと言った?」
「もしそうだったら・・・ごめん・・・」
ナイトは思いも寄らない言葉に驚いたように答える。
「別にそういう訳じゃ・・・!でもどうしてそんな事思ったんだ?」
「・・・え?それは・・・」
第5話 不穏な足音 中編(1)
少し言いづらそうにミオは答えた。
「ここ1年くらい、私は普通の人と話したことが無かったから・・・」(元々話すの苦手だし・・・)
「正直どう会話していいのかわからないし・・・」
「だから、ひょっとしたら傷つける事を言ってしまっているかもと・・・」
「別に傷つくようなことなんて言われてない」(けど・・・どうやって生活してたんだろう・・・)
そう優しく笑いながら答えたナイト。
「それなら・・・良かったけど・・・」
「それじゃ・・・私は用事があるから少し外すね・・・」
そう言い残しミオは駆けて行った・・・。
「あれは・・・相当重症だな・・・」
「あぁ・・・思った以上に・・・」(1年くらい話をしていなかったって・・・)
「お前、アレ・・・助けになれる自身はあるのか?」
「・・・・・・」
「助けになるような事が・・・俺にできるかは分からない・・・」
「だけど!俺にできる事はしたい・・・」(ただそう思った・・・)
「まぁ、お前らしい答えだな・・・」
「だが、思っている以上に傷は深そうだぞ・・・」
「わかってるよ・・・そんな事・・・」
「・・・あの、さっきから2人で何をコソコソ話しているの?」
背を向けて話し込んでいた2人にミオが声をかけた。
「うわ、いつの間に!?・・・用事は?」
「一応用事が済んだから帰ってきたんだけど・・・」(そう、用事も・・・終わった・・・)
「帰ってきたら2人がコソコソ話してるから・・・」
「で?何の話してたの?」(・・・やっぱり西の方から・・・何か感じる・・・)
「あっ、いや・・・それは」
返事に困るナイト、そこにヴァンが割って入った。
「次の目的地の話だ・・・」
「元々この森は西にあるレイテル帝国を目指す旅人がよく通っていくからな・・・」
「お前らもそこに向かっていたのでは?という話をしていた」
「レイテルは近辺で失踪事件が増えてるって聞いたけど・・・」
「そういえば・・・ミオ、この間・・・レイテルだったらここから近いからナイトと一緒にいけるのでは?っとか言う話をしていたような気が・・・」
「な・・・何をいきなり・・・」(何でチェリーと2人で話てたことを・・・と言うより内容が少し変わってるし・・・まさかわざと・・・)
ヴァンの言葉を聞いたナイトが少し反応した・・・気がした。
「・・・」(心なしか目が・・・期待に満ちてる・・・あんな目で見られたら断りづら過ぎる・・・)
「・・・」(でもここで私が折れたら・・・)
「ごめん・・・やっぱり一緒にいけない・・・」
「・・・」
「どうして・・・」
「ずっと魔族と戦ってきた・・・色々、理由はあるけど」
「私は普通より魔族達に狙われやすいの」(・・・色んな意味で私は目立ちすぎている・・・)
「そのうち今よりも強くて凶悪な奴がやってくる事もあると思う・・・そうなれば確実に殺されてしまう」
「・・・」(できる事なら・・・今からでも平和に生きて欲しい・・・)
「確かに俺はまだ弱いけど、もっと強くなれば・・・!」
「・・・」(ナイト・・・)
悔しそうに言うナイトの言葉を無言で聞いていたミオ、そこへ両手にいっぱい木の実を抱えたチェリーが戻ってきた・・・。
「皆んなで木の実食べ・・・?」(え・・・何この空気・・・)
何かを感じ取った様子のミオが再び口を開く。
「!・・・私・・・もう行く・・・時間がないの・・・」
あまりの出来事にチェリーは抱えていた木の実を地面に落としてしまった・・・
「チェリー、貴女はナイト一緒に・・・」(チェリーなら・・・)
「どうして・・・こんな事に・・・?」
チェリーが状況を理解できない間に・・・。
「優しくしてくれて・・・ありがとう」
そう言い残しあたりを一瞬包んだ煙と共に姿が見えなくなってしまった・・・ミオが姿を消した時に現れた桜の花びらが風に乗りどこか悲しく舞っている・・・
その花びらを手に取り見つめるナイト・・・。
「・・・」(どうして急に・・・)
「・・・」(ミオの性格なら断り切れずに行動する事を選ぶと思っていたが・・・一体何がそこまで・・・)
「チェリー」(・・・時間がないと言っていたな・・・)
「ミオには私はもう必要ないって事なの?」
激しく動揺し声の届かない様子のチェリー。
「ぎゃふ」
そんなチェリーをヴァンが脚で軽く押さえつけた。
「いきなり何するの!」
「いいから私の話を聞け!」
「ミオが去る前、確かに「ナイトと一緒に・・・」と言っていた、だがあれは必要ないからと言う意味ではないはずだ・・・」
「もしそうなら・・・契約そのものを解消すれば良かった話だ」
「何か別の理由があるってこと・・・?」
「いなくなる前に何かいつもと違う事はなかったか?どんな些細なことでもいいから思い出せ」
「えっ・・・いきなり思い出せって言われても・・・」
「そういえば・・・少し前にあっちのお墓の前にいたような・・・」
「朝作ったあの墓で・・・?」
「確かに気にはなるな・・・行ってみるか?」
「あぁ、このまま何も分からずサヨナラなんて嫌だしな・・・」
「うん、行こう!」(というか脚どかしてよ・・・ヴァン!)
そうしてやってきた墓の前にはあるものが残されていた・・・。
「これって・・・桜・・・」
「だが・・・桜以外には変化なしか・・・」
「チェリー、ミオを見たのはいなくなる少し前なんだよな・・・」
「うん」
「って事は・・・俺に用事があるっていなくなった時・・・ここに来てたって事だよな・・・」
「私たちに声をかけてきた時には既に心を決めていたのかもしれないな・・・」
「・・・?」
「この桜・・・何か少し光ってる・・・」(そもそもこの辺に桜の木なんて・・・)
「あぁ、それはミオが造った桜だよ・・・」
「何かに供える時にミオが必ず造るんだ」
「これ・・・触っても大丈夫かな・・・」
「大丈夫だと思うけど」
ゆっくりと手を伸ばしナイトが桜を手に取った時だった。
「何かの気配がする・・・私達がさっきまでいた方から・・・こっちに来てる!」
「構えろ、来るぞ」
「あぁ、ここで死ぬ訳にはいかない」
構えたナイト達の前に飛び上がった黒い影が落下してきた・・・。
「・・・!!」
その着地の衝撃は地面に亀裂が入るほどだった・・・。
「グルルゥ・・・」
第5話 不穏な足音 中編(2)
「こりゃまた立派に育った獣人さんで・・・」(筋肉すご・・・)
「だけど・・・あの筋肉・・・ちょっと羨ましい・・・」
「何を言っている・・・人間のお前にあそこまでの筋肉はいらんだろ・・・あそこまで行ったら終わりだぞ・・・毛深いしな・・・」
「いや・・・別に毛深さは真似したくないけど」
そうコソコソと話ている3人・・・。
「アァ?何で初対面の連中にあそこまで行ったら終わりとか言われなきゃならねーんだ?」(そもそも鳥も毛深いだろ・・・)
「ん?傷ついたのか?それは悪かったな」(・・・あの肩の傷は)
と心のまったくこもっていない謝罪をしているヴァン・・・。
「・・・」(この鳥・・・)
「俺は今・・・、ものすごく機嫌が悪いんだよ・・・」
「ほう・・・、何故だ?」
「何故だって・・・ヴァンがあんな事言ったからじゃ・・・」
そう言ったチェリーを見た獣人は何故か激昂している。
「お前を見ると無性に腹が立つ・・・」
「へ?」
「原因はお前だったのか・・・」
「何で?私・・・何もしてないし!ていうか理不尽すぎるよ!」
「匂いが似過ぎてて腹が立って仕方がない!」
「似てるって・・・何に?」
「俺の邪魔をしやがった紫の髪の小娘にだ!」
「え・・・それってもしかして・・・ミオ?」
「・・・どの辺で会ったんだ?」
「お前ら・・・あの小娘の知り合いか?・・・あの小娘の・・・」
そう言った獣人の爪がメキメキっと音を立て伸びていく・・・。
「でも、邪魔されたって一体何を・・・」
獣人がナイト達の前に現れる少し前・・・。
木を飛び移りながらレイテルに向かっていたミオ・・・。
「・・・!」(やっぱり・・・この近く魔族達がいる・・・)
しかし、その場所で目に飛び込んで来たのは・・・何かに襲われ瀕死に陥った人間だった・・・。
「しっかりして・・・すぐに近くの治療できる場所に連れていくから・・・」(この紋章は・・・確かレイテルの・・・)
「俺は・・・もうダメだ・・・目が霞んであんたの顔も分からん・・・」
「だから・・・他の奴を・・・助かりそうな奴を助けて・・・やってくれ・・・頼む・・・」
「・・・わかった」(この傷は・・・今の私じゃ治せない・・・)
「あ・・・りが・・・」
そう言い安心したように息を引き取った。それを見届け思わず天を仰ぐミオ・・・。
「他の人を助けて・・・?無茶を言うのね・・・」
「貴方が最後の1人・・・他の人はもうとっくに・・・」
「ごめんなさい・・・私はもう行く・・・目の前の危険ぐらいは無くしておかないと・・・」(近くにいるはず・・・次の犠牲者が出る前に・・・)
そう言ってその場を立ち去ろうとしたミオだったが・・・そこへ3体の魔族が姿を現した。
「・・・!?」(探さなくてもよかった)
「何か美味そうなガキが増えてるじゃねぇか」
「・・・」
「この顔どっかで見たことあるような・・・」
「・・・」
「何だ?恐くて声も出ないのか?」
「・・・違う・・・」
「まぁ、悪く思うな痛いのなんて一瞬・・・」
そう言った魔族は次の瞬間には消滅していた・・・。
「そう、痛いのは一瞬だけ・・・」
「私は別に貴方達を恐れてた訳じゃない」
「コイツ・・・兄貴を一瞬で斬りやがっただと?」
「ただ、話すことが無かっただけ・・・」
「思い出した!コイツ・・・拠点に1人で乗り込んで来たっていうガキだ」
「ちょっと待て・・・その拠点って確か・・・」
「再起不能になったって話だが」
「こんなガキが1人で拠点を壊滅させただと・・・何でそんな奴がこんなところに!」
「だがこのガキ、手負のはずだ・・・今まで嗅いだことのないほど美味そうな血の匂いがしてる・・・」
「その傷を狙えば・・・」
素早く振り下ろされた鋭い爪、それを何とか刀で受け止めるミオ・・・。
ギリギリと硬いものが擦れる音があたりに響いている・・・。
「へぇ、なかなか頑張るじゃねぇか・・・だが・・・」
「力じゃ俺の方が上だ!」
そう言いさらに力をかける魔族の圧力に刀がミシミシと音を立てている・・・。
「・・・ヒビが!?」
「ついでに良い知らせだ・・・相手しなきゃならないのは俺だけじゃねーんだよ」
「おいっそっち側の脇腹を狙え!コイツは俺が抑える!」
そのまま後ろの木に押し付けられたミオ、その後方から不気味な影が視界に見え隠れしている・・・。
「・・・」(!・・・傷が開いた・・・)
「任せろ!」
後方から容赦なく振り下ろされた爪が近くの木ごと薙ぎ払う・・・。
鮮血に染まる木々・・・夥しい量の出血だ。
だがその血を流しているのは魔族のものだった・・・。
「何で俺の爪がお前に刺さってんだよ!」
「うるせぇ・・・それは俺が聞きてぇわ・・・」
そうこときれた魔族の姿は人間に姿を変えていく。
「・・・変異種・・・」(それにしても・・・)
爪が振り下ろされる直前・・・敵の腹部を膝で蹴り何とか拘束を逃れたミオは爪を振り下ろそうとしていた魔族の足元へ滑り込むように回避した、それを再び捉えようと手を伸ばしたことで1体が攻撃の軌道上に入ってしまったことが同士討ち原因だった。
「・・・狙ってはなかったんだけど・・・」(何か・・・酷いことになってる・・・)
「・・・」(今まで普通に斬り捨ててた私が思うのなんだけど・・・あれは両方辛い・・・)
ミオは何かを振り払うように頭を左右に振る・・・。
「申し訳ないけど・・・」(敵に同情してる場合じゃない、同情なんてしてたらまた何かを亡くしてしまう・・・)
「キサマ、よくも・・・!」
激昂した魔族が振り下ろした爪によりパキンっと音を立て忍刀が折れた!だがそのままの状態で背後に回り込んだミオ。
「貴方を倒すだけなら・・・この長さで十分!」
急所の一撃で倒したミオだったが・・・返り血を浴びた手を見たミオは突然その場に崩れ落ちてしまった・・・。
よく見ると崩れ落ちたミオの手は微かに震えている・・・。
「・・・リア・・・ごめんなさい・・・」
少し脅えたように何かに謝っているようだ・・・。
しかし、ハッとしたようにしたミオはいきなり巨大な手裏剣を打った!
「グルォォ」
そこあったのは肩に手裏剣が刺さり動けなくなっている獣人の姿だった・・・。
その後にナイト達の前に現れたのがその獣人である。
「あの小娘・・・魔族の連中を倒したと思ったらいきなり座り込んで・・・様子がおかしくなったと思ったら・・・こっちに変な武器投げてきやがるわ・・・今思い出しても意味が分からん!」
感情に任せて爪を振り下ろす獣人、それを避けながらチェリーは言う。
「・・・ミオの様子がおかしく・・・?・・・まずいかも」
「何か心当たりがあるのか?」
チェリーは悲しそうに頷く・・・。
「だけど、もう少し詳しく聞きたい」
「まぁ、そういうことだから・・・話てもらえるとありがたい」
っとヴァンは笑顔で言ってみた・・・。
第5話 不穏な足音 後編(1)
「どいつもこいつも・・・煩せぇ奴らだな!」
そう言うと獣人は今までより素早く鉄の様に硬い爪をチェリーに振り下ろした・・・。
「!」(避けきれない!)
そう思いチェリーが防御の態勢をとった直後に横から何かがチェリーを連れ去った。
「ヴァン!」
「お前の体であの爪を受けるのは負荷が大きすぎる・・・」
ヴァンはチェリーを掴んだまま上空で周囲の風を集め獣人に向けて風の刃を放つ・・・。
それをギリギリのところでかわした獣人だったが・・・。
「何だアレ・・・避けられなかったら上下に体が別れを告げるとこだぞ・・・」(本当に俺の話聞きたいと思ってるのか・・・アイツ・・・)
風の刃により切り裂かれたように残された地面の後に思わずそう呟く。
「あの鳥が使った技・・・確かに強力だが・・・その技で舞い上がった砂埃でアイツから俺の姿は見えないはず・・・」
確かに砂埃があたりに立ち込めている・・・。
「で、どうするんだ?」
「こちらから先に鳥の影を見つければ・・・?」
「・・・俺は誰と話てる・・・?」
「あ・・・やっと気づいてくれたな・・・1つ言うとしたら・・・ただの砂埃ならもっと早く晴れてる」(どっちかと言うと砂嵐に近い・・・)
その声に振り返った瞬間、砂嵐から弾き出された獣人・・・。
「何の邪魔になったかは知らないけど・・・たとえミオが何もしなくても失敗してた可能性もあるんじゃないか?」
「黙れ小僧!お前に何が分かる!?」
そう怒り狂う獣人の爪を剣で受けるナイト。
「別に何も解らないけど・・・まぁ正直興味無いしな」
「!」
「・・・そこ興味持ってあげよう・・・嘘でも良いから・・・」
「俺はあんたが知ってる情報に興味はあるだけで」
「どう考えていようと関係ない・・・話さえ聞かせて貰えれば不必要に戦う気もない」
「ふざけるな!人間なんかに2度も・・・」
「しかもお前らそもそも話聞きたい態度じゃねーよなぁ・・・さっきから・・・」
「だが、確かに素直に話す気もねぇ」
「俺に話を聞きたいなら話さざるおえない状況にすることだな!」
そう大声を上げナイトの剣を掴み抑え込んだ獣人はもう一方の爪で勢いよく斬り上げた。
「力ずくでって・・・多分相当痛いけど本当に良いのか?」
そう言い獣人の爪を受け止めたのは先ほどまで何も持っていなかったはずの手に握られた剣だった・・・。
「二刀流・・・!?」
その様子を上空から見ていたチェリー。
「いつの間にかナイト両方の手で剣使えるようになったんだね・・・」
「あぁ、アイツ・・・こっそり1人で修行してたからな・・・」(ずっと前から剣の鍛錬自体もしていた・・・)
「知らなかった・・・」
「フッ・・・お前らしいな・・・」
「バカにしないでよ!・・・でも・・・何でナイトはどうしてそこまで頑張ってるんだろう・・・」
「・・・分からないのか?・・・ますますお前らしいな・・・」
「何か・・・ムカツク!」
その頃・・・地上で組み合っているナイト・・・。
「一応、もう1回聞くけど・・・本当に良いんだな」
「アァ?お前、本当にやる気あるのか?」
「・・・仕方ない・・・か」
「悪いけど手加減する技術・・・まだ無いんだよな・・・」
「取り敢えず死なないでくれよな」
そう言った直後に獣人を蹴りつけるナイト、少し動きながらも踏み止まる獣人だったが。
「速い!?」(本当にさっきと同じ奴か!?)
「双刃旋風斬」
風をを纏った2本の剣で素早く斬りつけるナイト、それをとっさに爪で受けた獣人だったがその強く固い爪をも纏った風が容赦無く切断する・・・交差させた剣から放たれた二刃の風の風圧により後方の木に打ち付けられた獣人の首に剣を突きつけるナイト。
「爪ももう使えない・・・それでもまだ戦う気はあるのか?」
「チッ・・・一日に2度もガキに負かされるとはな・・・」(普通、人間が獣人に喧嘩うらねぇだろ・・・)
そう言うと獣人は少し苦しそうにしながらも話を始めた・・・。
「丁度・・・お前達が話してた小娘も今のお前と同じように刀を突きつけてきた・・・」
そこへヴァンとチェリーも降りたった・・・獣人も話を続ける・・・。
肩に手裏剣が刺さり動けなくなっている獣人に近付いてきたミオ。
「!・・・獣人?」(どうしてこんなところに・・・)
「お前!俺にいきなり攻撃してくるたぁ、良い度胸じゃねぇか!」
「・・・最近この辺りで魔獣が人を襲っているとも聞いていたけど・・・貴方が襲ってるの?」(魔族と見分けがつかない人間が勘違いしてるんだと思っていた・・・)
再び具現化した忍刀を突きつけ尋ねるミオ。
「チッ」(この小娘・・・魔族をあっという間に倒しやがった・・・身動きも取れねぇ・・・)
「答えて・・・」
「アァ!?、人間が俺から住む場所を奪った・・・だから取り戻しに来た、それの何が悪い!?」
「人を襲っても何の解決にもならない・・・次の火種が生まれるだけ」
「人間寄りのお前に何が分かる!?見た目だけで俺たちウェアウルフの一族を悪だと決めつけ、魔獣と呼び攻撃してきた人間を許せとでも言うのか!?」
「人間ほど欲深き者はいない・・・現に人間は自らの欲望のために同じ人間すらも襲い争い続けている・・・」
「・・・」
「お前の噂は聞いていた・・・人間に疎まれ嫌われているにもかかわらず人間に肩入れをしている変わった奴がいると・・・」
「だが・・・人間を見てどう思う?一番近くで見て一番人間の醜さを知っているのは他でもないお前では無いのか?」
「・・・確かに・・・どうしようもないくらい愚かしい人間もいる・・・欲望のために他者のことを全く考えない人間・・・でもそんな人間ばかりじゃない・・・」
「信じられないくらい人の事ばかり心配する人間もいる・・・」
「そんな他人の事ばかり考えてる奴は天然記念物並に珍しい人間だろ!そんな人間そうそういない!」
「大半はどうしようもない奴ばかりだ・・・」
「・・・貴方が人を襲う理由は分かった・・・人を憎んでいることも・・・だけど1つだけ教えて欲しい・・・」
「最近、色々な場所で人を襲う獣が増えている理由に心当たりない?」
「最近?急に増えた?今までの人間のツケが回ってきたんだろ?」
「そう・・・知らないのね・・・」
そう言うとミオは獣人に突きつけた刀を引っ込め・・・クルッと背を向けた。
「肩・・・ごめんなさい・・・痛かったでしょ・・・」
「アァ?お前・・・俺を殺すんじゃないのか?」
「・・・何故?」
第5話 不穏な足音 後編(2)
「俺はお前が守ろうとしてる人間を襲ってるんだぞ!?」
その声に背を向けたままミオは答えた。
「だって・・・アレ嘘でしょ?」
「ハァ?・・・なに言ってんだお前・・・」
「貴方は人殺しの目をしてない・・・」
「確かに人間を憎んでる・・・それは本当だと思う・・・だけど襲ったり殺したりするところまでは行ってない・・・」
「貴方は心の痛みを知っているから・・・」
「でも・・・もし貴方が誰かを殺すような事があれば・・・その時は私が貴方を斬る・・・」
そう言うとミオはその場を立ち去った・・・。
その話を聞いていたチェリー。
「うーん、肩のことはミオが悪かったかな・・・でも他の所・・・何かあったかな・・・」
「私の顔見て怒り狂うようなこと無いと思うけど・・・」
「十分・・・怒ってもおかしく無いと思うぞ・・・」(お前も感覚マヒしてるぞ・・・肩にアレ刺さったらめちゃくちゃ痛い・・・)
「肩以外何も無いだと!?あの小娘!「殺すまでは行ってない」って言ったんだぞ!?」
「???」
「その言葉が悪かったの!?」
「あいつは、俺が人間1人殺すこともできない意気地なしって言いやがったんだ!」
「どうやったらそんな風に聞こえるんだよ・・・」(・・・人間どこで恨みかうか分からないな・・・)
「この人・・・大丈夫かな・・・」
「犬の被害妄想だ・・・よっぽど辛いことがあったんだろう・・・この事は無かったことにしよう・・・触れないようにしてやろう・・・チェリー」
「お前・・・馬鹿にしてるだろ・・・」
そう言われたヴァンはそっぽを向いて呟いている。
「バレたようだぞ・・・チェリー」
「当然でしょ・・・」
「・・・大体のことは分かったけど・・・」
「ミオは一体何を謝っていたんだろう・・・」
「ア?・・・確か名前みたいだったが・・・」
「ん・・・ふぇ・・・ふぇ・・・」
「・・・ふぇ?」
「思い出した!」
「・・・!!」
「・・・!びっくりした・・・」
「で・・・何だったんのだ?」
「確か・・・フェダリアって言ってたな・・・」
「やっぱり・・・」(フェダリア・・・)
「フェダリア?」(って誰・・・)
思わずチラッとチェリーを見る2人・・・。
「間違い無いんだよな・・・」
「俺は耳はいいからそこは間違いねぇ・・・」
「さすが犬だな」
「焼き鳥にしてやりたい・・・」
2人に見られたチェリーは一瞬体を竦めた、どうやら話していいのか迷っているようだ・・・。
「知ってる・・・みたいだな」
「まぁ・・・元々見当はついていたようだからな」
「・・・」(ミオは話したがらないと思うけど・・・)
「できれば・・・話して欲しい」
「心配せずともお前が話したことは言わない・・・」
「ヴァンの言葉が一番信じられない気がする・・・」
「・・・・・・」
「ナイトは・・・まだミオと一緒に行動したいと思うの?」(ミオ・・・口下手だし)
「何で急にそんなこと聞くんだ?」
不思議そうに尋ねるナイト。
「だってあんな形で説明もせずいなくなっちゃったんだよ?」
「もし・・・ミオと行動を共にしなくてもいいって少しで思うなら私は話さない方がいいと思うから・・・」(ミオが何で1人でいなくなったかも分かった気がする・・・)
ナイトは少し時間を置いてからチェリーの目を見ながら言った。
「俺は今でも一緒に旅がしたい・・・と言うよりできれば力になりたい・・・だから」
「ミオと一緒にいれば確実にナイトにも危険が及ぶ・・・それでも一緒に?下手をすれば命を落とすことになるのに?」
「何か放って置けないんだよ・・・どこか死に急いでる気がして・・・」
「確かに・・・ミオは死に急いでる・・・分かっていても私では止めることもできないくらいに」
そんな会話をしている最中、首に剣を突き付けられている獣人の声が響いた。
「おい!小僧!手に力入りすぎだ!俺の首が斬れる!」
その声にハッとしたナイト。
「あ・・・悪い・・・つい」
「たく・・・うっかり殺されるとこじゃねーか」
「お前・・・本当にあの小娘の事ばかり気にしてるな・・・そんなに好きなのかぁ?」
そう言われたナイトは驚いたように・・・。
「好き??!・・・うーん・・・どうなんだろうな・・・ただ放って置けないだけなんだけど・・・」
「・・・そういうの好きって言わないのか・・・?」
しかしそれ以上に驚いていたのはチェリーだった・・・。
「え!?ナイト・・・ミオの事・・・好きだったの!?」
「・・・」(・・・気づいてなかったのか・・・?)
「お前・・・本当にあの小娘と契約してるのか・・・」
「まだ・・・気づいていなかったのか・・・流石だな・・・」
「うるさい!きっと、きっとミオも恋愛とか疎いから気付いてないもん・・・私だけじゃないもん・・・」
「お前・・・その拗ね方おかしいぞ・・・」
「と・・・取り敢えずその話は気にしなくていいから・・・」
「そろそろ何があったのか教えて欲しいんだけど・・・」(何かめちゃくちゃ脱線したし・・・)
「・・・」
チェリーは少し悩んだがゆっくりした口調で話し始めた・・・。
「あれは・・・確か一年ぐらい前かな・・・・・・」